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2 - 第1話:雪山にて

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2025年04月25日

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第1話:雪山にて

目を覚ましたとき、あたりは静かだった。

雪が落ちる音さえ、遠くに感じた。


「……ここ、どこ?」


小屋の中。木の壁は冷たく、窓の外は雪が積もっていた。

私――**マシロ カナ(15)**は、毛布を握りしめながら、両親と弟の姿を探した。


「カナ、起きたのか」


父の**マシロ タカユキ(40)は、背が高くて眼鏡をかけた堅物。無表情で寒そうにコートを羽織っていた。

母のマシロ ユミ(38)は、疲れた目をして弟の体を抱いていた。

弟のソウタ(7)**はまだ眠っていて、頬は真っ赤だった。


テレビだけが、壁に食い込むように埋まっていて、そこにだけ光が差していた。


「この家族、選定完了」

機械のような声が響き、小屋の外の風が突然止んだ。





外に出た。

小屋のドアを開けた瞬間、その像が、目に飛び込んできた。


山の谷間。

吹雪の中に、巨大なライオンの石像が座していた。


雪に半ば埋もれ、岩肌はヒビだらけ。

目だけが、氷のように青く光っていた。

無表情のまま、まるで世界を睨みつけるように。


「ようこそ」


声が、像から聞こえた……気がした。

でも風もないのに、空気が震えていた。


「命か能力を差し出せ」

「さすれば、お前たちに“生きるためのもの”を与えよう」


父が息を呑む音がした。

母がソウタを抱きしめる手に力を込めた。

私は……ただ、そのライオン像から目を逸らせなかった。


像の奥で、ライオンの顔をしたドローンが数機、音もなく空を巡っていた。

こっちを見ている。見ていないふりをして、全部見ている。





夜。テレビが、突然動いた。


「今日の犠牲者は、まだいない」

「明日から始まる。祈りを忘れるな。見下せば、命はない」


父は黙ったまま、コートのフードを深くかぶっていた。

母はソウタにミルクを作ろうとして、カップを落とした。

私はカップを拾いながら、母の手が震えているのを見た。


「……なんで私たちが選ばれたの?」


答えはなかった。


ただ、あの壊れかけの無機質なライオンが、明日もまた命令を繰り返すだけ。





家族の間には、言葉にならない絆がある。

それは今、冷たい小屋の中で、じっと暖かさを探している。


そして私は、ソウタの小さな手を握りながら、心のどこかでこう思っていた。


(“能力”って、なんだろう……?)



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