テラーノベル
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#長編
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時折芽衣李。それが前世の私の名前で、私が中学三年の時に祖父が自称魔王と名乗る人外──ラフェドを連れてきた。祖父とラフェドは顔見知りだったらしく、それから2年ぐらい、一緒に暮らした。
両親が早くに亡くした私にとって、ラフェドは親戚の兄的な存在だった。それが恋に分かったのは、祖父が亡くなってからだったか。家族が居なくなって独りぼっちだった私に、家族になってやっても良い的なことを言ってくれた。
あの時は親戚の家に引き取られるのが嫌で、全く知らない人たちとか変わることも怖かったし、なにより家に来ていた精霊や神獣や幻獣を置いていきたくなかった。
だからラフェドの「それなら俺の世界に来るか? 神獣や幻獣も移り住めるぞ」と言う言葉に惹かれたのだ。結局、その願いは叶わなかったけれど。
シルヴィアとして転生して、前世では何一つ約束も夢も果たせなかった。だから悪役令嬢という役割を押しつけられても、生き残ってやると強く思ったのだ。
そして現在。
晴れて悪役令嬢の役を終えたと思ったら、次は聖女候補者になっているし、いきなり隠しボスのドラゴンと遭遇と人生何があるかわからない。
隠しボスをノックアウトした私は屋敷の外装に一目惚れして、一括購入。晴れて自分の家を持ったことで、ちょっと浮かれていたとは思う。
魔法が使えたことや、ドラゴンを気絶させられるだけの力があったと証明できたこと、ラフェドと再会したのも浮かれた要因だった。
「わあ!」
さらに屋敷の中に入って内装を見た瞬間、テンションが爆上がりしたのは仕方がないと思う。
洋館の中はお洒落で一階、二階ともかなり綺麗で整っており、リビングは吹き抜けて天井が高いし、調度品や生活に必要なお風呂や水回りも前世とあまり変わりない。そこは本当にホッとした。
「なんて、なんて素晴らしいの! 買って良かった」
「子どもか。……ほら、そこに座れ」
「はいはーい」
特にナチュラルで温かみのあるリビングは木製の楕円形のテーブルに、ベージュ色のソファは三人掛けのものが、二つと一人用のものが三つと中々に数が多い。
暖色系のラグも落ち着いていて、触り心地もいい。インテリアなどは木製の物が多く、壁には様々な本棚が見受けられた。
ラフェド──今はアルベルト様の視線が痛いので、あとでじっく見て回ることにした。アルベルト様は我が家のように、テーブルを囲んだソファに腰を下ろした。
(まさか聖女候補者になって早々に、ラフェドに会うとは思っていなかったわ。展開的にラスボスで玉座の間で再会ってシチュかと思った……)
アルベルト様からソファ一つ分空けた席に腰を下ろした。沈むようなふわふわなな座り心地に、背もたれまで身を預ける。
「…………」
ふと一瞬だけ、アルベルト様が眉を顰めたように見えたがきっと気のせいだろう。
「この空間の所有権は、本来先ほどお前が気絶させた竜王のものだ。ただ今回、領域の主人を倒したことで《試練》がクリアになり譲渡あるいは、空間領域を購入が可能になったということだ」
(なるほど。ステータス画面が出てきたからゲーム感覚で購入したけど、普通に考えたら隠しボスというかそこに住んでいた竜王を殴って、金品及び屋敷を押収するって賊よね。この国では犯罪ではなく《試練》扱いなのは正直助かったわ)
「それと聖女候補だからと言って、教会での共同生活は義務じゃない。この国に来てすぐに独り立ちや生活が出来ると思っていなかったので、寮生活での暮らしを推薦しているに過ぎない。聖女候補者として活動報告が認められれば、教会側としても私生活にはさほど口うるさく言うことはないぞ」
思ったよりも教会に関しては寛容だったことに安堵した。しかし問題はその聖女候補者としての仕事内容だ。私に務まるだろうか。
「それは良かったです。ええっと……」
「仕事内容についてだろう。それも説明するが幾つか仕事はあり、自分にあったものを選んでくれて構わない。場合によっては研修や体験型で始めることもできる。まず教会での奉仕活動、一番多いのはざつ──信仰系魔法を紡ぐ機織り、聖なる植物の育成などの労働だろうか」
「今、雑用って言いかけましたね」
「他は教会に来た依頼を請け負う。これを《試練》と《依頼》のカテゴリーに分けている」
(スルーした! ……教会に依頼? ゴーストバスター的な?)
「主に魔獣の討伐あるいは他国、街や城での問題解決に尽力することなどは《依頼》に当たる。《試練》は一定の実績、条件が揃わなければ本来受けることができない」
今回、竜王を倒すというのが教会に届いた依頼だが、実績と条件の難しさから《試練》という扱いになったのが分かった。
「最後にどの聖女候補が関わるのが《四季折々の神事》だ。それと仕事内容と能力に応じて、支払い金額は変わる」
「なるほど」
聖女候補という職種そのものは特殊だが、仕事内容はさほど難しくなさそうだ。これなら冒険者ギルドに登録して請け負う仕事と変わらないとホッとした。