テラーノベル
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「それなら《依頼》と《試練》が向いていると思います。いつから受けたら良いのでしょうか?」
「前向きで結構。竜王を一撃で気絶させられるのだから、戦力としては悪くない。──が、この国については、まだ知らないことばかりあるだろうし、暮らしに慣れるまでは仕事内容はこちらで審議させて貰う。それとこの屋敷に住むのなら後日、聖女候補としての制服を届けよう」
(制服! 一体どんなのかしら)
ちょっとわくわくしつつ、新しい生活に夢を馳せる。思っていたのとダイブ違うが、それでもやりたいことの大元はあまり変わっていないので、許容範囲と言えなくもない。
「ここまでで質問あるか?」
「《依頼》とは別に魔物を狩って収集したものは、教会では買い取りして貰えるのでしょうか。それとも専門の商会があるようでしたら、紹介状を頂けると有り難いのですが」
「ああ。それは俺が買い取ってもいいし……そうだな、いざという時に必要な物を買うこともあるだろうから、商会の紹介状はこちらで手配しよう」
「ありがとうございます!」
これで依頼報酬とは別に魔物を討伐した時の臨時収入が見込めそうだ。
何だかんだと面倒見のいいアルベルト様は、この国での保証や身分証の手続きについて的確なアドバイスをくれた。もはや面倒見のいい親戚のおじさんぐらいの親近感はある。
(記憶がなくとも、面倒見が良いところは変わらないのね)
ふと私に見えているステータス画面はアルベルト様には見えているのだろうか。そう思ったが、これを尋ねるのは後回しにすることにした。目の前で開いていても反応がなかったからと、手の内を早々に出すのは良くないと思ったからだ。
「あと伝えておくべきことは……人外には気をつけるように」
「はい」
「絆を結ぶとしても慎重にな、いや俺に相談しろ」
(口調と態度はとても聖職者に見えないけれど律儀だわ。それに相談できる年長者がいるというのは、頼りになる。……でも全幅の信頼を奥にはまだちょっと足りない)
何より「人外には気をつけるように」と、昔ラフェドに言われ続けてきたのだ。人間に近しい姿をしているが彼らと人間では、根本的に価値基準が異なると。
人外の殆どは、人間の生み出す感情などを味わうため人と関わろうとする。長寿であり人間の感情から派生した存在は、前世──時折芽衣李の世界にもいた。一緒に居ると落ち着くとか、雰囲気が好きとかの理由で幻獣や神獣が庭に現れることがあったのだ。
前世でラフェドから「人間の様々な感情を好み、それを求める余り破滅に追いやる。気まぐれで一国を滅ぼすような快楽主義者もいるからなぁ」と物騒な話を耳にたこができるほど聞いているのだ。
それ故、人間に擬態している人外が親しげであっても、注視して簡単に信用してはいけない。親しい隣人になって人間を破滅に追い込む。そうでない人外もいるらしいが、それでも本来の資質に引っ張られてしまうらしい。
(ラフェドが覚えていないのなら、どんなに親し気でも油断したらダメ。……人外怖い、油断大敵だもの)
「……に、してもよく外観だけで購入したな。汚部屋だったらどうする気だったんだ?」
「購入しないと入れませんでしたし、汚部屋でも雨風しのげる場所なら掃除すれば住めるでしょう」
「は? お前……公爵令嬢だったよな?」
「ええ。そうですけど?」
野宿よりはマシという返答に、アルベルト様は「どういう生き方をしたらそうなる」と若干引いていた。確かにこの世界の令嬢なら野宿と聞いただけでも卒倒していただろう。私の場合は前世でアウトドアの経験もあるので、数日間ぐらいなら野宿でも抵抗はない。
それでも安心できる拠点は大事だ。それに一軒家なら寮のような集団生活より気が楽だ。悪役令嬢時代、遠巻きにされていたので無理に友人を作るよりは気が合う人と仲良くなりたい。
「ウウウウウウウウウウ……」
「「!?」」
獣のような唸り声が部屋に響くと同時に、リビングに迫る足音に気付く。
(もう復活したの!?)
「ウウウ……人の子がいる」
それは二足歩行の人型の姿をしているものの蜥蜴のような頭に艶やかな鱗、頭には白く長い角。露草色の瞳、青紫色のたてがみ、手と足は鱗に覆われた竜族は、司祭とは異なるが袖と裾の長い白いローブを羽織っていた。
(二足歩行の竜人!?)
あの巨体から二足歩行の人型に近くなったとしても、拘束魔法が緩むことはない。だとすれば、単純に膂力によって魔法の鎖を砕いたのだろう。あのまま放置すべきじゃなかったと後悔した。
「まずいわ。こんな素敵な家の中での戦闘なんて……」
「気にすべき所はそこか、そこなのか」
アルベルト様は呆れていたが、こちらとしては今後この屋敷で生活するのだから部屋をめちゃくちゃにされるのは非常に困るのだ。
沈黙のち露草色の瞳と目が合った。
「人の子……主人様、僕と絆……結んで、僕の家族になってほしいの!!」
「いいわよ」
「即答かよ!?」
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