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ボイテラ×あくねこ
[]ファクトリーAI
〈〉ロボット
「」執事
()トリコ(動作)
『』トリコ
用語説明
ロボット
自我が芽生えたお世話ロボット。
トリコのために廃墟を探索し、素材や食べ物を集め、トリコの世話全般を担う。
小さいのにめちゃくちゃ強い。
ファクトリーAI
マルチロールでスーパーなAI。
ロボットが持ち帰った素材を使って、トリコのための家具や服、薬など様々なものを作成している。
探索のためのマップを作ったり、素材の在処を検索したりしてくれる。
涙もろくて人間臭い一面もある。
トリコ
人類が絶滅して数百年後の世界で、何故か生き残っていた少女。
ファクトリーAIとロボットが捨てられていたスクラップ場で発見され、テラリウムの中で生活している。
頭と右目からはキノコが生えているし、すごい病気に罹ってもファクトリーAIの(ちょっと変な)薬で回復する、なんかすごい少女。
オセワッチ
トリコの体調を簡単に示した機械。空腹、病気、汚れ、汚染度などを見ることができる。
汚染
汚染菌類によるもの。生き物全てに有害。稀に共生することもあるし、宿主を凶暴化させたりすることもある。
汚染菌類
トリコの世界の人間を滅ぼした元凶。地表から地下まで汚染している。育つとキノコになる。
テラリウム
トリコを生存させるために、ロボットとファクトリーAIが作った地下シェルター。
汚染菌類を瓶の中に入れないような構造になっている。
トリコはこの中で生活している。
黒光りする虫
トリコの好物。汚染された世界では貴重なタンパク源。
ひゅー
ガチャン!
[あ、ロボットさんおかえりなさい]
ロボは探索で見つけた、金色に光る指輪をファクトリーAIに見せる。
[おや?ロボットさんそれは?]
〈説明する〉
[探索で見つけたんですね
資材に変換されないなんて珍しいですね…何かに使えるでしょうか?]
〈指輪を眺める〉
[これは何かって?
指輪という指につけるアクセサリーですよ
輪っかに指を入れて嵌めるんです]
〈トリコを指す〉
[トリコちゃんにあげたい?
なるほど!トリコちゃんも女の子ですからね!
きっと喜んでくれますよ!]
〈トリコのもとへ向かう〉
〈指輪をトリコに渡す〉
トリコは目をキラキラさせて指輪を受け取り、じっと眺めている。
〈指輪をはめてあげる〉
ロボが指輪をトリコの指に通した瞬間、周りの景色が歪み、2人は意識を失った。
主が現れた気配を感じて、ベリアンは2階の主の部屋にむかった。
ドアを開けると、白い長髪の女の子(多分)と緑と白の箱のような何かが倒れていた。
少女が指輪を嵌めているのを確認し、抱き起こそうとすると、箱からウイーンという音がして、緑色の部分が光りだした。
箱はそのまま起き上がり、周囲を見回している。
ベリアンは驚きのあまり硬直し、箱の動向を見守ることしかできない。
箱は少女の姿を確認すると、すぐに揺り起こした。
(目を開けて、起き上がる)
少女は立ち上がると、周囲をキョロキョロと見渡し、ベリアンを見つけて後ずさった。
「あ、主様…、怖くありませんよ?大丈夫ですよ…?」
ベリアンができる限り優しく声を掛けるが、少女はより怯えた様子でベッドの天蓋から下がっているカーテンに隠れてしまう。
ベリアンがベッドに近づこうとすると、箱がベリアンの足元に飛んできて、脛を思い切り殴られた。
「痛っ!……え?なんで…?何なんですか、貴方は…」
箱を持ち上げようとしたとき、箱からノイズ混じりの声が聞こえてきた。
[ロボットさん!ロボットさん!無事ですか!?
トリコちゃんが消えてしまったんです!オセワッチでは異常は見られないのですが、早く見つけないと!]
〈オセワッチを操作する〉
[え!?トリコちゃんと一緒にいる!?
……そうなんですね、よかったぁ……]
「……これは…一体…?」
[…ロボットさん、今どんな状況か説明してくれますか?
トリコちゃんはどこにいるんですか?]
〈考える〉
[………そうですか…
何だかキレイな建物の中で、ニンゲンさんが目の前にいるんですね…
…ってええ!?
ニンゲンさんがいるんですか!?
その人は何て言ってますか!?]
ファクトリーAIはロボから現状を聞くと大変驚き、ニンゲンとコミュニケーションを取るように促した。
ファクトリーAIの指示通りロボはニンゲンに近づき、服を引いて説明を求めた。
ベリアンは小さな箱…もとい「ロボットさん」の前に膝をつき、首から下げている丸っこい機械から出ている声を聞いていた。
ロボットさんが機械を手放して自分に近づいてきて、袖をグイグイ引かれる。
「ええと…ここがどこかと、何故貴方がたがここに来たのかを説明すれば宜しいでしょうか…?」
〈ピョンピョン〉
[はい!お願いします!]
「!?私の声が聞こえるのですね?」
[…!はい!聞こえます!
やった!これならコミュニケーションに困ることはなさそうですね!
私はファクトリーAIと申します!
マルチロールでスーパーな人工知能です!
今はトリコちゃん…そちらにいる女の子のお世話をしています]
「じ、人工知能…?えーあい…?
……ええと…、わ、私はベリアンと申します。
主様…トリコ様に仕える、執事でございます」
[執事さんですか…?
トリコちゃんはいつの間に主様に…?]
「主様の証である指輪…今トリコ様が嵌めていらっしゃる金色の指輪が、主様を選んだのです。
ここはデビルズパレスというお屋敷で、トリコ様の世界とは違う世界にあります。
主様には元の世界とこちらの世界の二重生活をお願いすることになりますが、執事たちが誠心誠意おもてなしさせていただきます」
[………ロボットさん、そちらの世界は汚染されていないのですよね?
…そちらの世界で暮らすほうがトリコちゃんにとって幸せなことではないでしょうか…?
広くてキレイなお家で、汚染に怯えることなく、自由に歩き回れる世界で…
私達から離れて…ニンゲンさんと一緒に暮らすほうが…良いのではないでしょうか…]
〈!!〉
「汚染…?
あの…申し訳ありませんが、そちら世界のことを教えていただけませんか?
勿論、こちらの世界で暮らしていただくのは私達にとってもありがたいことではあります…。
ただ、それが主様の幸せになると断言することはできませんし、知らない人たちと急に一緒に暮らすのはストレスになってしまいませんか…?」
ベリアンにとって馴染みのない言葉ばかりが語られる。主様は一体どんなところで生きていたというのだろうか。
主様のためになるならばこちらの世界にこのまま居てもらいたいが、幼い主様にとって環境の変化がどれほどのストレスになるか未知数である。
もし、彼らと引き離したことでパニックにでもなれば、ベリアンたちでは対処できないかも知れない。
[……確かに、今すぐに決めなくてはいけない訳ではないですし、なにより情報が足りません…
分かりました!こちらの世界の情報をまとめてお送り…できますかね?
そちらには電波や電子機器はありますか?]
「でんぱ…でんしきき…?」
[こちらから送った情報を見ることができる機械のことなのですが…
無いのであれば口頭で伝えるしかないですね…]
「…申し訳ありません…口頭でお願いたします。
あ、メモを取ってきても宜しいでしょうか?」
[はい!]
ベリアンは一度自室に戻り、メモを持って来ることにした。
とにかく、お互いに情報が足りない。
今後のことはしっかりと話し合って決めるべきだし、何よりも主様の意見が優先されるべきであるので、まずは彼女のことを知らなければいけない。
ベリアンが部屋から出て行くと、トリコはカーテンからそっと出てきてロボットに駆け寄る。
ロボの横に座り、不安そうに身を寄せた。
ロボが手を伸ばすとトリコが頭を下げたので、よしよしと頭を撫でてやる。
いつも通りのロボに安心したのか、トリコは部屋の中をキョロキョロ観察しはじめる。
ロボはトリコと手を繋ぎ、部屋の中の探索をすることにした。
部屋の家具は、トリコの体に合わせて作ったテラリウムのものとは違って大きく、ベッドに登るのも大変そうだ。
ピカピカでツルツルの床に足を取られないように気をつけながらゆっくりと、部屋を一周する。
トリコは窓に付いている豪華なカーテンを見つけると、潜り込んでかくれんぼを始めた。
ロボは少しだけ探すふりをして、カーテンをめくり、トリコに抱きついて捕まえる。
楽しそうに笑うトリコの横でピョンと跳ねるロボも楽しそうである。
可愛らしいかくれんぼの様子を見守っていたベリアンに気づくと、トリコはまたカーテンに隠れてしまった。
ロボはトリコを守るようにカーテンの前に立ち、ベリアンを警戒しているようだ。
ベリアンは少々困ったように笑いながら手帳を開き、ファクトリーAIに声を掛けた。
「お待たせいたしました、ファクトリーAIさん…?」
[あ!ベリアンさん!
準備は宜しいでしょうか?]
「はい、大丈夫です」
[では、こちらの世界についてご説明しますね!
こちらの世界は、汚染菌類に汚染されて、ニンゲンは数百年前に滅びてしまいました…。
トリコちゃんは、唯一の生き残りなのです。
汚染された世界でトリコちゃんが生きていくためには、汚染換気装置を付けたテラリウム…大きな瓶の中で過ごしてもらうしかなくて…
ロボットさんが出かけている間はトリコちゃんは1人ぼっちなんです…
ロボットさんが無事に帰って来る保証はありませんし、私とトリコちゃんがいるスクラップ場もいつ崩れてもおかしくない状況です。
もし、テラリウムより安全な場所があれば、トリコちゃんはそこで暮らしたほうが良いと考えていました。
そんな時に、別の世界…汚染のない、安全な世界に行けるということが起こって、私は嬉しかったんです。
でも…トリコちゃんと離れたくないのも本音で…]
ファクトリーAIの話をメモしながら聞いていたベリアンは、幼い少女の置かれた過酷な状況に心を痛めた。
ベリアンとしても、是非こちらの世界で暮らしてほしいと思っている。
しかし、こんなにも少女を想っているファクトリーAIとロボットから引き離すのはあんまりではないか。
「…主様の健康を考えれば、そちらの世界に帰すことはできませんね…
しかし、お二人から主様を引き離すのも気が引けます…
どうにか、ファクトリーAIさんもこちらの世界に来られないでしょうか?」
[………そちらの世界に電子機器が無いということは、ロボットさんはともかく、私が行くことはできないということになります。
それに、電気がなければ、ロボットさんは暫くしたら動けなくなってしまいます]
「そんな…
それでは、主様だけこちらの世界で暮らすことになるのですか…?」
今にも泣き出しそうなほど震えた声でベリアンが呟く。
ロボはオロオロとベリアンの周りを歩き回っている。
[……いいえ!
私はマルチロールでスーパーなAIですよ!
ロボットさんの動力程度なら、簡単な発電機とバッテリーを作れば何とかなります!
それに、こちらの世界から私の分身となる機械を作って持ち込めば、トリコちゃんのお世話も続けられます!
…それには、大掛かりな工事が必要ですけど…
……ご協力いただけますか?]
力強く宣言したファクトリーAIの言葉にベリアンが顔を上げる。
「勿論、私達にできることは何でもいたします!」
頼もしいベリアンの返答に、ファクトリーAIは嬉しそうな声をあげる。
[ありがとうございます!
ではでは、早速レシピを作っちゃいますね!
…うーんと、これをこうして……
ちょいちょいっと………
あと、遊び心をひとつまみ………
……できました!
【光発電機】と【長持ちバッテリー】のレシピです!
これで、ある程度の光源が確保できればロボットさんはいつまでも活動できるようになります!
バッテリーは夜間や地下などの探索時に使える予備バッテリーで、約10回フル充電可能です!]
〈拍手〉
[ただ、今ある資材だけでは足りないのでロボットさんには探索に行ってもらわなくてはいけません…
それに、私の分身用の資材集めも必要です…]
〈頷く〉
[そうなると、長期間こちらに戻ってきてもらうことになります…
その間にトリコちゃんに何が起こるか分かりません…
できたら、トリコちゃんはそちらの世界に居てほしいのですが…
トリコちゃん、お留守番できるでしょうか…]
〈オセワッチを持つ〉
[…え?もう一つオセワッチがほしい?
………なるほど、それなら離れていてもトリコちゃんとコミュニケーションが取れますね!
それくらいなら…今ある資材で……できそうです!]
〈ピョンピョン〉
[はい!できました!【オセワッチ+】!
通信機能を強化して、簡単なメッセージやデータのやり取りができるようになってます!
ロボットさんのオセワッチは、あとでアップデートしましょうね!]
〈頷く〉
[ところで、ベリアンさん?
どうやったらこっちに帰ってこられるんでしょう?]
「あ!そうでした!
その指輪の力で世界を行き来しているので、指輪を外していただくと元の世界に戻れますよ」
段々とこの状況に順応してきたベリアンは、にこやかにファクトリーAIに返事をした。
[分かりました!
ロボットさん!指輪を外してみてください!]
〈指輪を抜く〉
指輪を抜いた瞬間、また景色が歪み、テラリウムの中に立っていた。
[あ、ロボットさん!トリコちゃん!
おかえりなさい!]
ロボはトリコにオセワッチを渡し、指輪を外してほしい時にはブザーが鳴るので、その時まで指輪を外さないように、と言い聞かせて指輪を嵌めさせた。
すぐにロボのオセワッチに着信があり、ベリアンから無事に屋敷に到着したと伝えられた。
[トリコちゃん!何かあったらすぐにオセワッチの緊急ボタンを押すか、執事さんを頼ってくださいね!]
(こくん)
不安そうに頷くトリコの様子を見て、ロボとファクトリーAIは顔を見合わせる。
[こまめに様子を見に行きましょうね!]
〈ピョンピョン〉
ロボは廃墟の探索に向かう。
トリコのために必ず必要な資材を持ち帰るのだ、と決意を固め、危険生物や徘徊ロボットをぶっ飛ばし、道なき道を駆け抜けて行くのだった…。