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#創作BL
灯依
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ruruha
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「お待たせ、リズ。どうかな?」
少女はフィッティングルームから恥ずかしそうに顔を覗かせた。服のデザインは自分が二年間毎日着ていたものとほぼ同じなので新鮮味はないはずなのに、身に付けている人物が変わるだけで全くの別物に見えるのだから不思議だ。制服がまるで最上級のドレスのようにキラキラと輝いているじゃないか。なんて素晴らしいのだろう。私の主は今日も世界一美しい。
「とってもお似合いです!! この制服をここまで着こなせる方はいないのではないでしょうか。服も喜んでます」
「相変わらずリズは大袈裟なんだから。でも嬉しい。ありがとう」
主はにっこりと微笑み、その場でくるりとターンをした。制服のスカートと共に銀色の長い髪が舞い上がる。そこから漂う甘い香りが鼻を掠めた瞬間、私の胸の鼓動が激しくなる。
お側でお仕えしてもう何年にもなるが、この天使を彷彿とさせる微笑みには毎度のこと心を揺さぶられてしまう。特に最近の主は美しさにますます磨きがかかっており、平常心を保つのも一苦労だ。まだあどけなさはあるものの、着々と大人の女性へと成長していらっしゃる。その過程を特等席とも呼べる場所で見守ることができる自分はなんて幸せなのだろう。
「クレハ様、軽く腕を上げてみて貰えますか。動かしづらいところや、気になるところがありましたら仰って下さいね」
「大丈夫です。着心地もとっても良いです。ありがとうございました。セルマさん」
「クレハ様の学生服をお仕立てできるなんて……本当に光栄ですわ。今後もどうぞよろしくお願い致します」
「はい。こちらこそ」
セルマさんもとても満足そうだ。彼女はジェムラート公爵家専属の裁縫師で、これまで幾度も主の服を仕立てている。そんな彼女からしても制服というものは特別な衣装のようだ。成長の証、未来への期待……主を幼い頃から知っているセルマさんにも感慨深いものがあるのだろうな。
「はぁ……」
「どうなさったんですか、クレハ様。急に大きな溜息なんて吐いて……」
制服も無事に完成し、入学への準備は順調に進んでいる。ついさっきまで主も楽しそうにしていたというのに、一体何があったのか。
「もしかして制服に何か不備が? セルマさんを呼び戻して貰いましょうか」
「違うよ。制服に不満はありません。学園に入学するのも楽しみになってきたよ。でも、だからこそ余計にリズと一緒に通えないのが残念だなって……」
「ああ……」
主が来月から入学する予定の『王立クラルス学園』豊かな感性と幅広い学識を持ち、心身共に健康的な紳士淑女の育成を目指す……王都随一の教育機関だ。貴族の子供であるなら特別な理由がない限りは必ず通うことになると言われている。
年齢条件は13歳以上16歳以下となっており、二年制である。生徒は貴族の子女が多いが、平民の子供でも推薦と試験に合格することで通うことができる。
私は旦那様の推薦で、13歳になってすぐにこの学園に通うことになった。クレハ様にお仕えする侍女として恥ずかしくないよう、知識と教養を身に付けるためである。ジェムラート家の援助もあったことで、在学中に大きな問題が起きることもなく、私は無事に学園の全課程を修了することができたのだった。今年入学なさるクレハ様から見て、私は先輩ということになる。
「ニ年待ってくれれば一緒に通えたのにな……」
クレハ様は14歳になってから学園に通うことが決められていた。勉強が得意ではなく、更に人見知りでもある主は入学にあまり乗り気になれなかったのだ。私と一緒ならそんな心配をすることは無かったのにと、結構最近までぐずっていた。
敬愛する主にこのように頼りにされるのは光栄であり嬉しく感じる。クレハ様と共に学園に通うことに魅力を感じなかったわけではない。私とてかなり悩んだのだ。そして、最終的に出した結論の末……今に至る。
「クレハ様……最初は誰だって不安になるものです。すぐに慣れますから大丈夫ですよ。それに、ご学友としてはお側にいられませんが、お付きの使用人として同行いたしますので安心して下さいませ」
私がクレハ様よりも先に学園を卒業した理由がこれだった。主のような高位貴族は、学園内に身の回りの世話をする使用人の随伴が認められている。
側にいるだけなら同じ生徒としてでも良かったかもしれないが、私はクレハ様のことだけに集中したかった。授業や学園の行事と並行してそれが出来るのかと考えると自信がなかったのだ。
先に入学すれば学園の様子も分かるし、お手伝いできることも増えるだろう。私は主が安全に学園生活を送れるよう、全力でサポートできる立場を選んだのだ。
「もう何度も説明して貰ったものね。リズが私のためを思ってしてくれているのは分かってる。それでもやっぱりね。まだちょっと不安だから、グチりたくなっただけ……」
「クレハ様なら新しいお友達もすぐにできますよ」
「だといいけどなぁ……」
ずいぶん改善はされたものの……主の自己評価の低さは健在である。このように身内や親しい者の前では、つい本音を漏らしてしまわれるのだ。
「そうだ、リズ。制服も出来たことだし、せっかくだからちょっとお出掛けしようよ」
「えっ? 今からですか? しかも制服で……」
横目で時計を確認すると、時刻は15時を過ぎたところだった。外出するには少し遅い時間帯だ。あまり遠くに行かれるのは賛成できないが……
「お出掛けといってもすぐそこだよ。『とまり木』まで。ルーイ様にも制服姿見せたいんだ」
「オルカ通りですね。それくらいでしたら……」
目的地を聞いて安心した。『とまり木』なら屋敷から徒歩で5分程度で着く。それに、今はお店は休業中なので来客たちの目に留まることもないだろう。
「やったー! そうと決まれば早く行こう。しゅっぱーつ!!」
さっきまでの不安な様子が嘘のように、クレハ様の顔は晴れやかになっていた。主は強くなられた。私の前で多少弱音を吐くのがなんだというのだ。そこをしっかり支えてあげるのも臣下であり、友人である私の役割だ。