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「君が複数のスキル持ちであることはすでに知っているが、面白いモノを見せてくれるのであれば少しの間だけ命を長らえさせるとしよう」

「……言われなくとも見せてやる」


余裕を見せるウルティモに対し、おれは英雄召喚を発動。


「我が声に応えし英雄、『ジークフリート』! 我が前へ顕現せよ」


英雄召喚の書はガチャをした時点でスキルに組み込まれている。だが、今まで英雄召喚をしたことは一度も無かった。それだけにどういう動きをしてくれるのか不明なところだが。


「ほぅ……? われにその英雄を使うか」


辺り一帯を見下ろすくらいの巨躯が奴の前に現れる。素早い動きは期待出来そうにないが、収穫のある動きを見せてくれそうな予感があった。


「オオォォォ……!!」


特に攻撃指示は与えていないが、ジークフリートは雄たけびを上げた。すると周辺の大気が震え出し、皮膚中に痺れのような感覚が生じ始める。


何も無い荒地の最中《さなか》にあるが地面はひどく抉《えぐ》り取られ、激しい揺れとともにその場に立っていられない状況が作り出された。


次第に空は黒く一変し、激しい落雷と豪雨が降り注がれる。ジークフリートは腰に帯びていた大剣を握ることなく、自身の怪力でウルティモを地面に叩きつけた。


「ひぃえぇぇぇぇ~!! 山のような巨人がぁぁぁ~」


何も知らないルティは慌てふためいているが、奴からは目立った動きが見えてこない。まともに喰らったにもかかわらず、ただ不敵に笑っているだけだ。ダメージを負っているように見えないが、どうするつもりなのか。


「どうした? 面白いものを出してやったぞ。このまま何もしないつもりか?」

「…………」


奴からの反応を待っていたその時だ。


魔力が手元から抜けたような感覚がしたかと思えば、顕現していたジークフリートが勝手に帰還。まるで時間切れのように、英雄はあっさりと姿を消してしまった。


「な、何――っ!?」

「やはり不完全な召喚に違いなかったようだ」

「何? どういう意味だ」

「今までもそうだったはずだが、何度も使わなければ使いこなしてきていないはずだ。君の召喚はまだ途上にあるのだよ」

「……ちっ、そういうことか」


おれが呼び出すのを試していただけか。


「互いの余興はこれくらいに留めておくとしよう。われは初めてなのだよ、君と向き合うことが。たとえなすすべがなくとも、われと戦う資格が君にはあるのだからな」

「偉そうにするな!」


どうにもやりづらい相手だ。


潜在的な強さははっきりとしていないが、魔法の類《たぐい》はおろか召喚も効かない。たとえフィーサを手にしていても、致命的なダメージを通すことは厳しかったはず。


「――それでは死んでもらうとしよう」


奴と向き合っているだけで畏怖を感じることは無い。しかし武器を一切手にしていないのに、距離を詰められたら一瞬で斬られそうな気配を感じる。


ルティを連れて来たのはいいが、奴の言う通り彼女を使ってどうにかなる感じでは無さそうだ。ウルティモとの間合いはもうじき間近に迫る勢い。


駄目で元々な攻撃をしてこなかったが、至近距離での魔法攻撃ならさすがに当たるはず。おれは無詠唱のまま奴に向けて氷属性の波状攻撃を展開する。


ウルティモの頭上から下半身にかけて、避け切れない霧状の『アイスミスト』が覆い始める。いかに超越した素早さがあっても、これであれば動きを封じることが可能だからだ。


そう思っていた直後――奴はおれの横をすり抜けるように通り過ぎていたうえ、背後に回っていた。その瞬間またしても全身に酔いのような症状が現れ、めまいに似たことが起きる。


またしても妙な技を喰らってしまった影響なのかと思っていたが、一瞬にしてめまいが回復した。おれの体は奴から感じていた違和感を”学習”したらしく、奴の動きを鮮明に映し出す。


直後、まるで時が止まったような動きが見えた。恐らくウルティモの強さは空間の歪みによるもの。それが分かった以上、どうってことのない強さと知る。


「ふ、めまいが起きるのは無理もないことだ。われは『時空魔法』を使う者」


やはりそうだった。それならこっちも奴の予想を裏切っておくとする。奴はすっかり油断しておれが動けないと思っているはずだ。


「時空? そんなの、どうすることも出来ないじゃないか!! く、くそっ……」

「いかに君が強かろうともわれにダメージを生じさせることはもちろん、動きを捉えることは到底不可能だったというわけだ。残念だったな」

「……さっさととどめを刺せ」

「そうしようか」


おれの狙いを知らない彼女たちは、


「あ、危ないっ!」

――という、彼女たちの声を上げる。


そんな中、奴は動けないおれに対し手刀を振り下ろしていた。だがおれは動きと同時に奴の背後に周り、関節全てに氷属性で”麻痺”を忍ばせた。


「――どうした? その手刀で何かするつもりだったんじゃないのか? ウルティモ」

「バ、バカな……何故動いている!? ぐ、ぐぅぅっ、う、動けぬ……」

「終わりだ。氷漬けのままで自分の油断を悔いることだな!」

「う、うぅぅっ……――そ、んな……」


間抜けな姿を晒しながら、ウルティモは氷塊の中で活動を停止する。

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