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――2ヶ月ほど前のことだ。
ある日の楽屋に、佐久間が手に白い包帯をぐるぐると痛々しく巻いて現れた。
「え、佐久間くんその手どうしたの!?」
「何やってんだよ、大丈夫か?」
メンバーたちが一斉に心配して声をかけると、佐久間はいつものようにあっけらかんと笑ってみせた。
「あはは! ごめんごめん、ちょっと家でコップ割っちゃってさ! ドジ踏んじゃった〜」
「まったく、気をつけろよなー」
渡辺が呆れたように息を吐き、他のメンバーも「もう、落ち着きないんだから~」とからかいつつ、心配の言葉をかけていく。
しかし阿部は、コップを割っただけにしては傷の範囲が広いことに違和感を抱いていた。
さらに、その数週間後のこと。
佐久間から「俺、彼女と一緒に住むことにした」という突然の報告を受ける。
すでに彼女ができたという報告は受けていたものの、これには楽屋中がドッと沸き立った。
「ええっ!? マジで!?」
「じゃあ今度家行かせて! 彼女さん紹介してよー!」
ラウールを筆頭にメンバーたちが食いつき、佐久間を揉みくちゃにするように取り囲む。
そのお祭り騒ぎの輪から少し離れた場所で、阿部は笑顔を浮かべながらも、頭の中で冷静に思考を巡らせていた。
(アイドルという立場上、同棲となるとリスクもすごく高い。佐久間もそれは痛いほど分かってるはずなのに、なんでこんなに急なんだろう。……それに、やっぱりこの前の手の傷……)
その日の仕事終わり、偶然二人きりになったタイミングを見計らい、阿部は佐久間に静かに問いかけた。
手の傷のこと、そしてリスクを冒してまで同棲を決めた理由について。
佐久間は一瞬目を見開くと、困ったように眉を下げて苦笑した。
「……ははっ、やっぱり阿部ちゃんに誤魔化しは通じないなぁ」
そう吐露した佐久間の口から語られたのは、あまりにショッキングな事実だった。
彼女が二度も危険な目にあったこと。
そして彼女を救うために、佐久間が自らの手で窓ガラスを叩き割ったということ――。
思いもよらぬ真相に、阿部は絶句した。
「リスクがあるのは重々承知してる。でも……俺は、どうしても彼女を守りたいんだ。俺らの仕事に迷惑かけるような真似してごめん。不安にさせてごめんね、阿部ちゃん」
申し訳なさそうに頭を下げる佐久間に、阿部はゆっくりと首を振った。
「……すごいね、佐久間は」
「え?」
「守りたいもののために、そこまでなりふり構わず動ける佐久間はすごいよ。かっこいい」
💙青椒肉絲🧡
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阿部は真っ直ぐに佐久間の目を見つめ、静かに、けれど力強く言葉を続けた。
「でも、お願いだから無茶だけはしないでね。佐久間にとって彼女さんが大事なのと同じで、俺らも佐久間のことが大事なんだから」
「……ありがとう。俺も、みんなのことが大事だよ。でも、内容が内容だからさ。みんなに迷惑かけないようにするから、この話、黙っといてくれる?阿部ちゃん」
申し訳なさそうに言う佐久間。
阿部はちょっと困ったような顔をしつつ、笑う。
「もちろん。俺からは何も言わないよ。でも、佐久間の味方は増やしといた方がいいんじゃないかな。リーダーの照と…ふっか、あと舘さんには伝えておいてもいいかもね。特にふっかと舘さんは、俺と同じでなんか察してたっぽいし」
「えぇー、まじかぁ。まぁ勘のいいヤツらだもんな…。照にも…そうだよな。わかった、あいつらに話すよ」
「うん。……俺らにも、仲間の大切を守らせてよ。迷惑なんて思わずにさ」
「……うん。ありがとう。」
佐久間は、少し恥ずかしそうに笑った。
あの日、大切な仲間の覚悟と、彼女が背負った深い傷の存在を知った。
(佐久間は、何よりも大切な彼女を、俺らを信用して預けてくれたんだ)
サングラスの奥の目を冷たく光らせた阿部は、掴まれていた春菜の腕をそっと男の手から引き離すと、彼女を庇うようにすっと一歩前に出た。
コメント
1件
うわあ、このエピソード重いな……。冒頭で佐久間の手の怪我を「コップ割った」でごまかすところ、すごく彼らしいというか。でも阿部は違和感をちゃんと覚えてたんだね。そして同棲報告の裏にあったのが、彼女を守るために窓ガラスを叩き割った事実――「リスクを承知で守りたい」って佐久間の覚悟がひしひし伝わってきた。阿部の「俺らにも守らせてよ」って言葉が胸に沁みる。グループの結束が、設定の積み重ねでしっかり効いてるなって思った。