「恵ちゃん、力抜いて」
どこか嬉しそうな涼さんは、そのあとヌルッと陰唇をなぞってきた。
その瞬間、自分が〝感じて濡らしている〟事実を知った私は、また目を見開いて唇を引き結び、ギュッと全身に力を込めた。
「大丈夫、痛くないよ。はい、息を吸って」
私は涼さんに言われるがまま、深呼吸を繰り返す。
その間、彼はすぐに指を入れず、慣らすように陰唇やその周辺を撫で続けていた。
次第にチュプチュプと濡れた音がし、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
涼さんに触れられるたび、愛蜜の量が増して彼の指の滑りが良くなり、自分の体が悦んでいるのを知る。
こんなに恥ずかしいのに、体は勝手に快楽を得て「もっと気持ち良くなりたい」と望んでいるのだ。
心と体の差が激しく、私はまるで自分の体に裏切られたような気持ちになって、真っ赤になったまま、いやらしい水音を聞いて息を荒げる。
「少し指を入れてみるね。痛かったり嫌だったら言って」
涼さんはまた律儀に断りを入れ、蜜孔に浅く指を入れてきた。
「ん……っ」
体内に異物が入る感覚に私は身を竦め、ギュッと体に力を込める。
「痛い?」
けれど入れられた所はごく浅い場所で、指の第一関節が埋まっているかどうかというぐらいだ。
私は呼吸を整えながら首を左右に振り、それを見た涼さんは「少しずつ慣らしていくね」と声を掛け、陰唇に触れては少し指を入れ、また周囲を触って……と繰り返していく。
彼が手を動かすたびにクチュクチュと濡れた音が立ち、確認しなくても秘所がたっぷり潤っているのが分かる。
今のままでも気持ちいいけれど、達く事はできない。
もどかしい、ゆるゆるとした心地よさを与えられ続けて焦れったくなった私は、思わず涼さんの手首を掴んで訴えた。
「……もうちょっと……、して。……大丈夫だから」
「分かった」
物凄く恥ずかしいし、もしも涼さんが揶揄すれば、カッとなって「やめる!」と言ってしまいそうなぐらい、ギリギリな精神状態だ。
彼はそれを分かっているのか、決してからかわなかった。
私もまた、昨日からの付き合いだけれど、性的な事を私から「してほしい」と言っても、彼なら不快な事を言わないと信じていた。
「痛んだらすぐ言って」
「ん」
涼さんは私の唇にチュッとキスをしたあと、蜜孔に慎重に指を埋めてきた。
「ぁっ……、~~~~……っ、ん……っ」
ジン……と染みるような痛みを感じたけれど、我慢できないぐらい痛い訳じゃない。
思っていたより痛まないのは、涼さんがこれ以上ないぐらい時間をかけて、たっぷり濡らしてくれているからだろう。
「大丈夫?」
そう尋ねてきた涼さんをチラッと見ると、この上なく真剣な表情をして心配してくれていた。
こういう時だからこそ、彼の眼差し、表情を見て理解できる。
――この人、信頼していい人だ。
私は処女で、男性付き合いの初心者だ。
けれど人が他人を真剣に心配する時の顔つき、目は分かっている。
家族すら「大丈夫だろ」と言うなか、朱里だけは私の身の上に起こる事を逐一心配してくれていた。
彼女はあの大きな目でまっすぐ私を見て、心の底を見透かすように見つめてくる。
涼さんもまた、朱里と似た目をしていた。
私が気を遣って「大丈夫」と言わないか、強がらないか、本心を探るように目の奥を見つめる、透明感のある目をしている。
「っ~~~~、……ぅ、……う……っ」
真剣な眼差しで見つめられると、「大切にされている」と感じて泣きたくなってしまう。
私は周囲から女扱いされない、引き立て役なのに。
心の奥にしまっておいた〝女〟の部分を痴漢に蹂躙され、「もう〝女〟でいなくてもいい」と、女の幸せなんて求めないようにしていたのに――。
涼さんは、傷付いた私を両手でそっとすくい、慈愛の籠もった眼差しで見つめ、優しく触れ、大切にしてくれる。
「私にはそんなふうにしてもらう価値はないの」と反抗しようとしても、とても真面目な顔で「君には価値がある」と言って、私の心の奥底にある本心に手を延ばそうとしてくる。
――好きだ。
――この人が好きだ。
直感で「この人ほど自分を大切に扱ってくれる人はいない」と理解した私は、未知の感情に振り回され、溢れる感情を整理しきれずに涙を零してしまった。
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