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9 - センス〈Pink〉

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2022年11月06日

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知的障がいの彼 × 妻 × 愛犬


Side彼女


今日も今日とて朝から犬と戯れている彼を見て、どこか安心している自分がいる。ペットと過ごしているときは機嫌がいいからだ。

「大我ー、ご飯、食べるよ」

ゆっくり伝わりやすいように話す。

振り返ったものの、すぐにまた愛犬のあずきに顔を向ける。

「ほら、朝ご飯」と手を取ると、素直に立ち上がった。

今日の朝食には、大我のほうだけ昨日買ったプチトマトを一つ多く入れている。それに気づいたらしい大我の笑みは、赤い宝石にも負けないくらい輝いている。

「いただきます、だよ」

「…いただきます」

そう、と笑う。

重い知的障がいを持っている彼にとって、記憶することや高度な会話は難しい。でも少しだけ、何かしらの変化が見られるようになったのは大きな進歩だ。

最近は、いただきますと言っただけで合掌もできるようになった。

何が美味しい? と訊いたら、特定の料理を指させるようになった。

ほかの人にとっては当たり前でも、ちょっとずつ出来ることが増えていったらいいなと思う。

今朝もしっかりと完食し、ごちそうさまをしてから次の試練。

「お皿、シンクに持って行ってね」

お皿を見つめたままきょとんとする。仕方ない、とまずはお皿を持たせる。

「キッチンの、シンク」

指で方向を示すと、とことこと歩いていく。少し逡巡したのち、きちんと流しの中に入れられた。

「よく出来ました」

私より高いところにある彼の頭を撫でると、ふわりとした微笑みが返ってきた。


あずきにドッグフードをあげ、朝の支度が片付いたところで彼を仕事場に送る。その後は私の仕事だ。

「大我、お仕事行くよ」

お仕事というワードを聞くと、リビングのリュックサックを背負う。これも最近出来るようになったことだ。

そういえば、と思い出す。彼のリュックサックを買ったのはいつだったか。もう数年前な気がする。

「大我、そのリュック、そろそろ変えようか」

と言うと、露骨に顔をしかめた。

「ごめんごめん、嫌か」

それは彼が大好きなトマト柄なのだ。けっこう派手だからやめたら、と言っても聞かなかった。きっと私には理解できない独自の世界があるのだろう。

玄関に行くと、足元に駆け寄ってきたあずきの茶色い毛並みをわしゃわしゃする。あずきは「ワン!」とこたえた。

コミュニケーションは何も言葉だけじゃないな、と思う瞬間だ。

「行ってきますは?」

と問うと、「…行ってきます」

振り返ってあずきに言った。

「よし、行こう」


続く

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