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36 ◇寵愛を受けていたのにいつの間にか愛されないようになるなんて
部屋に入ると滉星は起きてはいるけど、寝ている状態だった。
『まだ、傷口が痛いだろうなぁ~』
「滉星くん、傷の具合はどう?」
「やぁ、一昨日の晩、ご両親と来てくれたんだって?
寒い中、申し訳なかったね。とうとうこんなことになっちゃって
お袋には泣かれちゃったよ」
「うん……。一報聞いた時、私、心臓止まるかと思った」
「心配してもらえたんだ、俺」
「刺されたなんて聞いたら、そりゃあビックリするよ。
んとに、ドラマじゃないっつうの。でも無事で良かった、ほんとに
良かった」
「こんなこというと不謹慎だけど……自分には気持ちがないのに、
相手だけが必死に自分を求めてくるってどう考えても不思議な感覚で
最後は怖かったな」
「私はふたりの男性の間で心が揺れたっていうような経験が
ないからアレなんだけど、単純なことなのかもしれないよ。
誰だって好かれないより好かれたいじゃない?
で、その対象が自分の好きな人なら余計好かれたい気持ちが
増幅すると思うのね。
彼女は奥さんに勝った、自分のほうが奥さんより好かれてるって
思ってたのに、そうじゃなかったって言われて気持ちの行き場を
失くしてしまったんじゃないのかな」