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とはいえ桜尽くしの日のプレゼントか…
自分で言ったはいいものの、
何をすればいいのか考えたりも準備も何もしていない。
そうこうしているうちに、
気づいたらホワイトデーの日になっていた。
僕の家には使っていない部屋が一つだけある。
狭くて物置にも使えない部屋。
を、今日はリメイクして『桜の部屋』を作ろうと思う。
とりあえず今の目標は畑葉さんが来るまでの時間で桜の部屋を作り上げること。
「出来るかなぁ…」
そんなネガティブな発言を漏らす。
が、やらなきゃ何も始まらない。
そう思った僕はまず掃除から始めることにした。
こういうのは多分、
2日前とかにするものだと思うんだけれども。
残念ながら桜の部屋を思いついたのは昨日の深夜。
深夜から始めようと思ったが、
流石に眠気には勝てなかった。
掃除機をかけたり雑巾がけをしていく。
いつもなら家中を掃除するところまでやってしまうが、今日は我慢。
案外汚くなかった。
だからか掃除は早めに終わった。
「部屋のイメージ…」
「やっぱりアレだよね…!」
そんな独り言を零しながらバイト先である家の近くのお花屋さんへ向かう。
「あれ?琉叶くんじゃない?」
「どうしたの?今日バイト日じゃないけど…」
お店に着いて早々、店長に話しかけられる。
「店長!桜の木のドライフラワーってありますか…?」
無いだろうと思いながらも、
そんなことを聞く。
「桜の木の?えっと…何に使うの?」
そんな店長の問いを聞き、
早口ながらに説明する。
「桜の部屋ね…」
「いい考えじゃない!!」
「いいわよ、手伝ってあげる」
そう言って店長は店の奥へと進んでいき、
しばらくすると大きな箱を抱えて帰ってきた。
「店長、それ何?」
「これはね〜、枝付き桜のドライフラワーだよ!!」
「残念ながら琉叶くんが欲しい木の方は無いんだけど…」
「これだったら再現出来るかなって思って…」
店長はその箱を僕に押し付けてくる。
「じゃ、頑張ってね!!」
そう言いながら送り出そうとする店長。
だが、僕はお金を払っていない。
「え、店長…!お金…」
「いいよいいよ!!今回は特別!」
「いっつもバイト頑張ってるし!!そのご褒美的な?」
そう言いながら店長は僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「店長…髪ぐしゃぐしゃ…」
僕がそんな不満の声を零すと
「気にしない気にしない〜!!」
と言ってくる。
店長はいつも僕の頭を撫でる。
優しく。
でもこうやって髪をぐしゃぐしゃにするのは変わらない。
店長と別れた後、僕はホームセンターやらスーパーやらに行って必要な物を買い揃えてきた。
そして今は掃除したあの部屋に居る。
「どうやって飾り付けしよう…」
色々買ったり貰ったりしたのはいいものの、
やはり無計画で進めるのは良くない。
買ってきたのは桜柄のカーテンと桜柄のクッション。
あと人工芝の絨毯。
と、その他諸々…
「これでいいかな…」
少し満足出来ない僕。
だけどこれ以上何か出来るのかと言われても、特に無い。
桜柄のクッションはクッションカバーだけを使うことにした。
全部で8つを繋ぎ合わせて花屑のような絨毯に。
桜柄のカーテンはハリボテの木に貼り付けて、その上に店長から貰った枝付き桜のドライフラワーや桜のドライフラワーを引っ掛ける。
そしてその上に桜のカーテンを引っ掛け、
桜のドライフラワーを。
それを繰り返す。
すると案外、桜の木に近いものとなった。
そんな時
「古佐くーん!!」
と玄関から畑葉さんの声が聞こえた。
ちょうどいい時間だ。
「桜尽くしの日ってどんなのかな〜!!」
そうルンルンとした畑葉さんが僕の案内した部屋へ向かう。
「ここ?」
「うん、そうだよ」
「こんな部屋あったっけ?」
「使ってない部屋をリメイクしたんだよ」
そう言うと『まぁいいや』と言いながら桜の部屋の扉を開ける。
「わぁ!!え、これあの丘じゃん!!」
「すごい!!再現したの?!」
「うん、どうかな…?」
「私今めっちゃテンション上がってるかも!!すごい!!」
すごい褒めてくれる…
嬉しい…
「本当は桜の花弁も散らしたかったんだ」
「風も吹かせたり」
「だけど無理だったんだよね…」
「もし、魔法が使えたら出来たのかもね…」
そう。
僕が満足出来なかったのはこれが原因だ。
桜吹雪を再現したかったが、
エアコンを風にして桜吹雪を表そうとすると後々片付けをする際に面倒くさそうだと思い、
やめた。
「桜吹雪…」
ボソリと畑葉さんが何かを呟いた気がして
「ん?何?今、なんか言った?」
と聞くも、
「ううん!!何でもない!!」
と言われてしまう。
僕の気のせいだったのだろうか。
「あ、畑葉さんはそこに座ってて!」
「僕、食べるものとか運んでくるから!!」
そう言って部屋を出る僕。
出る際に
「そこまで準備してくれたの?!」
「しかもこのピクニックシート、桜の絨毯じゃん!!」
なんて声が聞こえた。
どこかしらいつもよりテンションが高い畑葉さん。
もし僕の作った桜の部屋が原因でそうなっているのなら、誇らしい気分だ。