テラーノベル
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体育祭が終わると、学校はいつもの静けさを取り戻した。
放課後。
セトは今日も部室の一番奥の席へ座る。
パソコンの電源を入れ、静かにキーボードへ指を置く。
カタ、カタ、カタ……。
聞き慣れた音が部屋に響く。
その数分後。
勢いよく部室の扉が開いた。
「セト!」
ヴァルだった。
いつもと変わらない笑顔で部屋へ入ってくる。
「今日な!」
「ちょっと面白いもん作った!」
セトは画面から目を離さない。
「……そうなんですか。」
「反応薄っ!」
ヴァルは笑いながらノートパソコンを机へ置いた。
「見ろ見ろ。」
画面には、小さなドット絵のキャラクターが映っている。
「昨日から作ってたゲーム!」
「まだ途中だけど!」
セトはゆっくり椅子を回し、画面を見る。
「……アクションゲームですか。」
「そう!」
「遊んでみ。」
「……はい。」
マウスを受け取り、ゲームを始める。
キャラクターが歩く。
ジャンプする。
障害物を避ける。
「操作どう?」
「……やりやすいです。」
「でしょ?」
ヴァルはどこか誇らしげだった。
セトはそのまま進めていく。
一面。
二面。
順調だった。
そして三面。
敵が飛び出してくる。
ジャンプで避けようとした、その瞬間。
敵が突然、横ではなく真上へ飛んだ。
「……。」
勢いよく天井へ。
そのまま画面の外へ消えていく。
二人とも固まった。
「……。」
ヴァルがゆっくり画面を見る。
「……なんで?」
次の瞬間。
画面外から敵が落ちてきた。
しかも逆さまのまま。
「……。」
セトは口元を押さえる。
肩が小さく震えた。
「……ふ。」
静かな笑い声。
ヴァルは勢いよく立ち上がる。
「今笑った!!」
「……。」
くりね(♡)
#···などなど!!
びーえる中毒民
34
#ある意味ホラー
「笑ってません。」
「いや笑ったって!」
「……。」
「気のせいです。」
「気のせいじゃない!」
ヴァルは机へ身を乗り出す。
「もう一回笑って!」
「……無理です。」
「なんで!」
「笑おうと思って笑うものじゃないので。」
「正論!」
セトは画面を見つめる。
しかし数秒後。
今度は主人公が地面をすり抜け、そのまま落下し続けた。
画面には、
GAME OVER
の文字。
その下で、主人公だけがまだ落ち続けている。
「…………。」
沈黙。
そして。
「……ふっ。」
今度は少しだけ大きな笑い声。
ヴァルは指を差した。
「ほらぁ!」
「笑ったじゃん!」
セトは少しだけ俯き、口元を隠す。
「……。」
「敵も主人公も落ちるゲーム初めて見た。」
「それ褒めてない!」
ヴァルもつられて笑い出す。
二人の笑い声が、静かな部室へ広がっていく。
しばらく笑ったあと。
セトは画面を見つめたまま、小さく呟いた。
「……でも。」
「面白いです。」
ヴァルは一瞬だけ動きを止めた。
「え?」
「……バグは多いですけど。」
「ちゃんとゲームになってます。」
「だから。」
少しだけ間が空く。
「完成したら。」
「また遊びたいです。」
ヴァルは何も言えなかった。
そんなことを言われるとは思っていなかったからだ。
少し照れくさそうに頭を掻く。
「……任せろ。」
「今度は敵飛ばさない。」
セトは小さく頷く。
「……少し寂しいですね。」
「え?」
「飛ばないと。」
一瞬だけ静かになる。
そして。
「それバグ楽しみにしてるじゃん!」
ヴァルが笑う。
セトも少しだけ笑う。
「……そうかもしれません。」
その日、ヴァルは一つ気付いた。
セトは無口だ。
感情もあまり表に出さない。
でも。
笑わない人じゃない。
“安心して笑える相手が、今までいなかっただけなんだ。”
夕日が部室を優しく照らす。
オレンジ色の光の中で、二人はもう一度ゲームを起動した。
今度は敵が飛ばないように。
……そう思っていたのに。
開始五分後。
主人公だけが、また空へ飛んでいった。
「……。」
「……。」
目を合わせる。
次の瞬間。
二人は声を上げて笑った。
部室にはキーボードの音ではなく、穏やかな笑い声が長く響いていた。
それは、セトがヴァルの前で心から笑えた、初めての放課後だった。
コメント
1件
あーもう、これ最高だわ…! セトが初めて心から笑えたシーン、こっちまでじーんときたよ。バグで敵も主人公も飛んでくの、確かに面白すぎる。「飛ばないと寂しい」って言える関係性、めっちゃ尊い。夕日の描写も相まって、静かであたたかい空気が伝わってきた。続きが気になるのはもちろん、この二人の絆がこれからどう育っていくのか、すごく楽しみ!