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若井のばか…

気付けよ。



〝さすがにそろそろ貴方に恋する

わたしに気づいて欲しいのです

あなたに気づいて欲しいのです〟



こんなに分かりやすいメッセージないと思うのに、友達歴が長いのが悪いのだろうか。

気不味くなるとすぐふざけてしまうぼく達の悪い癖だ。

若井が変なスタンプを送り付けてくるから、ぼくも負けじと変なスタンプを付けて返していく。

そして、変なスタンプのレパートリーが切れた頃、最後にもう一度憎まれ口を送り付けぼくはスマホを置いた。






それから数時間、制作の為パソコンに向かうけど、モヤモヤし過ぎて、何も思い浮かばないし、やる気すら起きない。

気分を変えようと、シャワーを浴びたりご飯を食べたりしてみたけど、全然スッキリしないし、満たされない。


もう一度だけ、若井に『ばーか』と送り付けてみようか…

いや、それじゃ何も変わらないなんて事、この数年で痛い程学んでいるじゃないか。


今年こそは…そう思いながら1歩踏み出すのをぼくは何年先延ばしにするんだ…




ぼくは、『ばーか』と打った文字を消して、別の文字を打ち込んだ。

既読が付くのを見るのが怖くて、直ぐにスマホの画面を消す。

心臓がドキドキしてる。

ぼくのメッセージを見て欲しくないけど見て欲しい…



なんとか絞り出した、このなけなしの勇気はそんなに長く続かないんだからな!と心の中で悪態をつきながら、ぼくは時計の針と睨めっこを始めた。


あの秒針が一回りしたらメッセージを消そう…


あと、30秒……10秒…5秒…


終わり!



勇気が尽きたぼくは、スマホを持ち、メッセージアプリを開こうとしたその瞬間、着信が入り、 画面には若井の文字。

動揺したぼくは手が滑り、間違えて緑のボタンをタップしてしてしまった。

ガタガタと音を立てて床に落ちたスマホから若井の声が聞こえてくる。



「もしもし。…?、もしもーし?元貴?」


心臓が破裂しそうなくらいドキドキしている。


電話してきたって事は、ぼくのメッセージを見たって事だよね…?


なにを話したらいいか分からないけど、いつまでも若井からの電話を無視する訳にもいかないので、ぼくは、 緊張して震える手でスマホを拾いあげて耳にあてた。



「あれ?…いや、繋がってるよな?元貴ー?おーい! 」

「…なに?」


とりあえず、なるべくなんでもないように、普段通りの声を取り繕って返事をしてみる。



「わっ、あ…びっくりした。あ、あのさ、今、家?」

「…うん、そうだけど。」

「よかった!今、向かってるから!じゃ!」


良いのか悪いのか、会話という会話はなく、 短くてほぼ一方的な会話で切られた若井からの電話。

画面が暗くなったスマホを見つめる。


今から家に来る?若井が?


ぼくはソファーから立ち上がり、自分で考えうる中で1番悪い展開と1番良い展開を頭の中でグルグルさせながら、自分自身も部屋の中をグルグルと歩き回る。

さっきまでゲージの中のベッドで寝ていた愛犬が遊んでくれているのと勘違いして部屋の中を歩き回るぼくの足にじゃれついてきてるが、今はそれに構っている場合ではない。




何分経ったか分からないけど、歩き回ってても仕方がないと思い直し、再びソファーに座り、膝の上に乗ってる愛犬を撫でながら心を落ち着かせるふりをしていると、ついに家のチャイムが鳴った。

ソファーから立ち上がり、恐る恐るモニターを覗くと、モニター越しでも分かるくらい息を切らした若井が立っていた。

ぼくは無言でオートロックを解除し、今度は玄関前の廊下をうろうろと歩き回る。


少しすると、再びチャイムが鳴り、ぼくは息を呑んだ。




「汗、やばぁー。」


心臓が口から出そうになりながら、恐る恐る玄関のドアを開けると、モニター越しでは分からなかったが、息を切らした上に汗だくの若井が立っていた。


第一声がそれかよ!と心の中で自分で自分にツッコミを入れるが、長年友達としてやってきたせいで、この口から出る言葉はどうしても可愛くない事ばかり。

しかし、若井はそんなぼくの言葉を見事にスルーし、右手に持ってたスマホをぼくの目の前にずいっと出し、画面を見せてきた。

そこには、さっきぼくが若井に送ったメッセージが映し出されていた。



「っ、はぁ、はぁ、…これ!」

「あ、や…え、あの…」


予想はしていたけど、待っていた間に結局、答えを用意出来なかったぼくは言葉に詰まった。



「これって…そういう意味であってる?! 」


真っ直ぐぼくの目を見てそう聞く若井に、誤魔化す事なんて出来なくて、ぼくは黙って縦に首を振った。

若井の顔も真っ赤だけど、きっとぼくの顔も若井に負けじと真っ赤だろう。

もう、それが答えのようなものだけど、やっぱりちゃんと言葉で聞きたいから。



「若井は?」


ぼくは、さっきなけなしの勇気を出して送ったメッセージを口にした…




「…おれもっ、元貴に恋、してるっ。」

「ははっ、顔真っ赤やん。」

「も、元貴だって!」

「汗だくだし。」

「それはっ、走ってきたから…!」


こんな時ぐらい可愛い事言えばいいのに、出てくる言葉はやっぱり可愛くない事ばかり。



「まあ、とりあえず入んなよ。」

「え、あ…う、うん。」


あれ?おれの告白は?みたいな顔をしている若井を家に招き入れる。

とまどいながらも、中に入り、靴を脱いでる若井の後ろ姿を見ながら、ぼくはもう一度、なけなし勇気を振り絞った。



「若井、大好きだよ。」











-fin-

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コメント

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あーもう、いつもほんと 大好きです!

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