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ぬぁぁぁ…好きだこれ……感動……好きすぎて語彙力粉砕しました……
命物語読んでいて思ったんですけど、やっぱりこのシーン……"此処好き"のシーンです……🥺 ここでは名前を伏せときますが、彼から初めてその顔をされる主人公の気持ちが凄く此方にも来るので(伝わって…)読んでいて泣きそうになります。 (ってか泣きました😭) 幸せになってくれ……。 続き楽しみにしてますね!!!
あれから、半年後。
僕はいつものように部屋に籠っていた。
空にある雲の数を数える余裕があるくらい暇ではあったが、その暇が僕にとって救いだった。
『大きなショックで大きな罪』を犯してしまった僕にとっては心としてまだ楽になるやり方だった。
この頃、ご飯を食べる気力さえ失い、少し痩せているような気がしている。
扉の向こうから研究員の声がしても僕は決して研究員の言う事を聞かなかった。
思い出すだけで怖い。
あの体罰、あの視線、全てが僕の恐怖になった。
僕の『心の傷』にされた。
そんな人達の話を信じたくなくなった。
思い出そうとすると、涙がぽろりと落ちる。
同時にこんな事を思い始めた。
……それなら、此処を出たい。
そして──────『誰かに望まれたい』と。
その時、何かが壊れるような音が扉の向こうから聞こえてきた。
「し、侵入者だっ!!!」
「皆、武器を構えろー!!!」
扉の向こうから研究員の声もする。
誰か不審者でも来たのだろうか、と考えたがそうではないと、その後気付いた。
何故なら___。
「フォルトゥナも来い!相手は『仮人間』だ!!!」
研究員のひとりが此方に来て、その侵入者は『仮人間』である、と告げたからである。
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「え……これは……?」
僕は、研究員から渡されたナイフを見る。
「侵入者を殺す為のものだ。その侵入者は、少し前にこの組織を抜け出した者だ。……お前への『試練』だ。これで『ヤツを殺せ』……。」
『殺せ』という単語を聞いて僕は血が引けた。
(な……!!!なんで……なんで!?……人は殺せない……怖い!!!殺せない!!!無理、無理……っ!!!)
ナイフを見る度、僕は手が震える。
涙が出そうになる。
それを見た研究員は、脅しのように言葉を続ける。
「これが出来なければお前は『仮人間』として『失格、および失敗作』と見なし、お前を『排除』する。」
僕はそれを聞いて、瞳を丸くした。
「……その人を殺すか……自分が殺されるか……って事なん……ですね……。」
「そういう事だ。……死にたくなければ殺せ。」
研究員が向けてくる視線はとても怖かった。
僕はどうしても決められない状況に陥ってしまった。
それなら、僕が殺されても良いのでは?
それさえ頭の中に出てくるくらいだった。
だがその状況はすぐに終わってしまった。
何故なら……。
『侵入者』と呼ばれた『彼』が、すぐ近くまで来ていたからだ。
「……!?な、今までの者は……!」
研究員がそう声を出すと、彼はハイライトの小さな青と黄色のグラデーションの瞳を僕らに向ける。
彼は異様な程、美しい顔立ちをしていた。
白銀の髪に、黒いメッシュが目立つように一本ある。
白銀とは真反対に、黒っぽい服を着ていた。
そして僕らにこう告げた。
「既に倒した。残るはお前達だ。」
「ふん、調子に乗るな……。まだ残っているんだ。……それに、お前は……。」
研究員は、彼を見て瞳を細めた。
「……噂に聞いた組織を抜けた『上級の上級の仮人間』の『神の仮人間』だな。」
それを聞いて僕は驚きを隠せなかった。
(じょ、上級……!?しかも九つの階級の中でトップ!?僕、その真反対の雑魚なのに、そんな強い奴……!?)
彼は表情を変えず話す。
「そうだとしたらなんだ。……それより、俺は此処の調査の為に来た。邪魔をするなら容赦しない。」
そう言うと、彼のグラデーションだった瞳が、黄色に光り出すと、彼の周りに雷が生じる。
「……っ!?」
僕はそれだけで小さく声を出してしまう程の威力だった。
「フォルトゥナ……言ったこと忘れるなよ。テストとして見ている。」
研究員はそう告げると近くの部屋の近くまで行く。
(僕、この人と戦うの!?む、無理難題ぃぃぃいっ!!!部屋に帰りたい〜っ!!!)
彼は表情を変えずに僕を見る。
「……君から来るのか?」
「……っ!?……っ……。」
言葉が出なかった。
ただ、恐怖で震えることしか出来なかった。
僕はもらったナイフを彼の方に向けた。
「こ、殺す……っ!!!良い!!!???僕は……、僕は……っ!!!本気なんだからっ!!!君を殺すから!!!……っ、だから……っ。」
恥ずかしいことに『殺す』という度、涙が溢れて出てくる。
彼はそれを見ていた。
僕の瞳が、白く染まるように光り出すと、白い風が僕の周りから現れ、ナイフの先まで風が行き渡る。
「……っ、ぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ……っ!!!」
僕は全ての感情を押し潰すような声をあげながら、無我夢中に走り、ナイフを彼の方に突き出した。
──────楽になれるかな?
そんな感覚で走っていた。
だが──────。
「──────え……?」
「……。」
彼は、僕のその動きを素手で止めていた。
彼の瞳の色が元に戻っていた。
僕がナイフを持つ手を彼はしっかりと持っていた。
僕はふと、ボロボロに泣いた顔を彼の方に向けた。
彼は、『悲しそうな顔』で僕を見ていた。
僕の手から自然とナイフが落ちる。
その瞬間──────
彼は、僕を『受け止めてくれた』……。