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魑魅魍魎
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魑魅魍魎
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5話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
『レトさーん!お待たせ!』
ガラッと教室の扉が開く。
部活終わりのキヨが、いつもの笑顔で入ってきた。
少し乱れた髪。
汗で濡れた制服。
走ってきたのか、まだ少し息が上がっている。
『よし!帰ろうぜ!』
いつも通りの口調。
いつも通りの笑顔。
その姿を見ただけで、レトルトの胸はドキドキと高鳴った。
「うん!」
レトルトは鞄を持って立ち上がる。
そして二人並んで、夕焼けの廊下を歩き始めた。
――自分の気持ちを伝えなきゃ。
そう決めたはずなのに いざ隣に並ぶと緊張で頭が真っ白になる。
(どのタイミングで言おう…)
なんて聞けばいい。
もし、困らせたら?
もし、笑われたら?
もし、今の関係が壊れたら?
そんなことばかり浮かんで、心臓が落ち着かない。
レトルトはそっと口を開いた。
「キヨくん、あのさ……」
すると. ほぼ同じタイミングでキヨも喋り出した。
『いやー、今日もマネージャーのおかげでいい練習できたわ!』
「…………」
レトルトの言葉が止まる。
キヨは全く気付かず、そのまま楽しそうに続けた。
『パス練付き合ってくれてさー。 ほんと気ぃ利くし、可愛いわあいつ』
胸の奥が、またじわっと痛くなる。
さっきまで少しだけ持てていた勇気が、音を立てて崩れていく。
レトルトは俯いたまま、小さく笑った。
「ははは……そっか」
その声は、自分でも驚くくらい弱かった。
そして一一一。
レトルトの口から出た言葉は、さっきまで頭の中で何度も考えていたものとはまるで真逆だった。
「……はは」
乾いた笑いが漏れる。
「もうさ、そんな可愛い可愛い言うなら、付き合ったらいいやん」
自分でも驚くくらい、軽い口調だった。
まるで冗談みたいに….。
でも本当は、今にも泣きそうだった。
胸が痛くて。
苦しくて。
もう限界だった。
(――あぁ、もうダメだ。)
(――もう、隣にいられない。)
するとキヨは、ぱちりと目を見開いた。
『……え?』
驚いた顔でレトルトを見る。
『レトさん?』
その反応に、レトルトはまた無理やり笑った。
キヨは慌てたように口を開く。
『いやいや、そんなんじゃねぇって! 俺、別にあいつと付き合いたいとかじゃ――』
必死に弁解しようとする声。
でも、レトルトは止まれなかった。
「いつも可愛いって言って、放っとけないって言って……」
声が少し震える。
「そんな言っといて、違うは無理あるって」
夕焼けの帰り道。
二人の間に、いつもの楽しい空気はもうなかった。
キヨは困ったように眉を寄せる。
『だから違うって……!』
でもレトルトは、もうその言葉を信じる余裕がなかった。
ずっと怖かった。
キヨが誰かを好きになることが。
自分じゃない誰かを特別な目で見ることが。
それが現実になった気がして 胸の奥がぐちゃぐちゃだった。
レトルトは唇を噛みながら、視線を逸らした。
「……俺、応援するよ!」
そう言った声は、泣きそうなくらい弱かった。
気付けば、もうレトルトの家の前だった。
いつもなら、くだらない話をしながら歩く帰り道。
夕焼けが滲んで見える。
レトルトは俯いたまま、小さく息を吐いた。
「……じゃあね、キヨくん」
それだけ言って、家の扉に手をかける。
キヨは反射的に口を開きかけたが、 言葉が出なかった。
ガチャ。
静かに扉が閉まる音が 冷たく響いた。
――いつもなら、
“また明日ね”って
レトルトは絶対そう言ってくれるのに。
今日は、なかった。
まるで、 もう明日から別々になることを予感させるみたいに。
キヨはその場に立ち尽くした。
何も言えず、閉じられた扉をただ見つめた。
胸の奥が煩くざわついて 嫌な感じがした。
夕暮れの住宅街に 一人残されたキヨは、呆然とその場から動けなかった。
次の日。
教室に入った瞬間、キヨはレトルトの姿を見つけ迷わず駆け寄った。
窓際の席の いつもの場所。
――いつも通りに。 自然に。
そう、自分に言い聞かせながら。
『おっはよー、レトさん!』
なるべく明るく声をかける。
するとレトルトは振り向いて、いつものように笑った。
「おはよう、キヨくん!今日もうるさいなぁ」
普通だった。
昨日の空気なんて、まるでなかったみたいに 笑ってる。
その反応に、キヨは少しだけ肩の力を抜いた。
(……昨日の、俺の勘違いだったのかな。 ただレトさん機嫌悪かっただけか?)
そんな風に考えホッと胸を撫で下ろした。
移動教室へ向かう廊下。
「キヨさーーん!!」
後ろから元気な声が響く。
振り返る間もなく 勢いよくマネージャーがキヨに飛びついた。
『うわっ!? ちょ、お前!やめろって!』
キヨは慌てて身体を支える。
反射的にレトルトを見ると、 レトルトは少し離れた場所でその様子を見ていた。
そして、 にこっと笑う。
『朝からラブラブやなぁ』
軽い口調。
「熱すぎて見てられんわ〜」
その笑顔に キヨの胸がずきりと痛んだ。
『違うって、レトさん!』
キヨは咄嗟に声を上げた。
でも、その言葉に被せるように、
「レトルトさんもそう見えますか?」
マネージャーが嬉しそうに笑った。
「キヨさん、本当にかっこよくて大好きなんですー!」
きらきらした笑顔。
真っ直ぐな好意。
隠そうともしない“好き”。
その言葉を聞いた瞬間、レトルトの胸が静かに痛んだ。
(――あぁ。 こんな風に素直に“好き”って言われたら…. そりゃ、好きになるよな。)
(自分みたいに隠して、誤魔化して、冗談にして そんな面倒くさいやつより、 絶対こういう子の方がいい。)
レトルトは無理やり口角を上げた。
「……そうやな。 お似合いやな」
その声は、自分でも驚くくらい軽かった。
「邪魔者は退散しよ〜」
そう言って背を向け 逃げる様に歩き出した。
『ちょ、レトさん!待って!』
後ろからキヨの声が聞こえる。
その声はレトルトの耳にちゃんと届いていた。
でも…. レトルトは聞こえないふりをした。
振り返ったら、 きっと泣いてしまう。
そして、レトルトは廊下を一人で歩き出した。
しばらくすると、後ろからバタバタと走る音が近付いてくる。
『おい!レトさん! なんで先に行くんだよ!』
キヨは息を切らしながら、レトルトの腕を掴んだ。
少し乱れた呼吸。
必死な顔。
その表情を見るだけで、嬉しくなってしまう自分が嫌だった。
レトルトは無理やり笑う。
「え? だってラブラブなところ、邪魔しちゃ悪いやん?」
軽く言ったつもりだったが、 自分でも分かるくらい声が刺々しい。
キヨはすぐに眉を寄せる。
『だから、そんなんじゃないって昨日も言っただろ?』
焦ったみたいに否定する。
でもレトルトは、そんな言葉を素直に信じられなかった。
「そう?」
わざとからかうみたいに笑う。
「俺には、抱きつかれて嬉しそうに見えたけどなぁ」
その瞬間、 キヨの表情が曇った。
『なんなんだよ、昨日から!!違うって言ってんじゃん!』
珍しく強い声。
でも、レトルトの胸の中にはもう黒い感情が溜まりきっていた。
嫉妬して。
苦しくて。
勝手に傷付いて。
そんな自分に嫌気が差していた。
だから一一 レトルトは、わざと冷たく言った。
「……ま、俺には関係ないから、 巻き込まんとって〜」
空気が、一瞬で冷える。
キヨは何か言い返そうとしたが 言葉が見つからず口を閉じた。
昼休み。
いつものようにキヨはレトルトの席へ向かった。
『レトさーん、購買行こーぜ!』
いつものレトルトなら、
「はやく行かな無くなる!」
と慌てて立ち上がるのに 今日は違った。
レトルトはにこっと笑う。
「可愛いマネージャーと行ってきなよ」
軽い口調だったが、それは 明らかに拒絶だった。
キヨは言葉を失う。
『え……レトさん』
何か言おうとした頃には、レトルトはもう別の友達の方へ歩いて行ってしまっていた。
屋上の扉を開けるとガッチマンと牛沢が先に弁当を広げて食べていた。
「お!キヨ〜!こっちこっち!」
ガッチマンが手を振り、 牛沢も軽く視線を向けた。
すぐ、2人はあることに気付く。
「あれ?」
ガッチマンが辺りを見回した。
「レトさんは?」
その問いに キヨは少しだけ俯き、 そして小さな声で答えた。
『……来ない』
一言だけ。
いつもなら屋上に来た瞬間から騒がしいのに
今日は違った。
キヨはベンチに座ったまま、購買のパンにもほとんど手を付けずぼんやり空を見ている。
明らかにおかしい。
ガッチマンはそっと牛沢の方へ身を寄せた。
「なぁ」
小声で囁く。
「レトさんって気持ち伝えるって言ってたよな? キヨのあのしょげ方なんだ?」
もし、告白したとして振られたなら
レトルトが落ち込むはずだ。
なのに実際は逆。
牛沢も小さく眉を寄せた。
「さぁ?」
珍しく歯切れが悪い。
「俺も分かんねぇ」
それどころか 牛沢も少し焦っていた。
レトルトには確かに、ちゃんと話せと言った。
あんなに前向きだったのに….。
なのに、 今日になったら二人とも別行動。
レトルトは来ないし、 キヨは落ち込んでるし。
(一体何が起きたんだ?)
ガッチマンと牛沢は頭を抱えた。
「もしかしてさ…. 告白どころか大事故起こした感じ?」
「あり得るな」
牛沢は即答した。
二人の脳裏に浮かぶのは、あの拗らせコンビ。
片方はネガティブ。
片方は鈍感。
最悪の組み合わせだった。
ガッチマンはため息をついた。
「なんで明らかに両想いなのに、こうなるんだろうな……」
「知らねぇよ」
牛沢は呆れたように言う。
そんな2人の心配をよそに、キヨは気持ちここにあらずな様子で空を見上げていた。
そして放課後。
教室に入ると、いつもなら窓辺に座って自分を待っているはずのレトルトの姿がない。
『レトさん……帰ったのか』
ぽつりと呟く。
いつも2人で歩く帰り道を キヨは一人で歩いていた。
隣にレトルトがいないだけで世界が一変したように静かだった。
その寂しさに、キヨ唇を噛み締めた。
『俺、嫌われたのか……?』
夕焼けの道を見つめながら、キヨはぽつりと呟いた。
続く
コメント
3件
もうほんと、最高です😭😭 レトさんいつ泣くかなぁって待ち遠しい(?) すみません癖なもので(( 恐ろしく更新が早くて驚いております。 次回も楽しみです!!🫣
うわぁ…胸がぎゅってなった…😢 レトルトの「応援するよ」って言葉、めっちゃ強がってて泣ける。本当は泣きそうなくらいなのに、笑顔で隠すところが切なすぎる。 キヨが鈍感すぎて、もどかしいけど、それもまたこの2人の関係性なんだろうな。 次、どうなるんだろう…もう読むの止められないよ🥀