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翌日、学校。
俺は頑張って行ってみることにした。
教室の空気はいつもより静かだった。
けれど、その静けさには妙な重さがあった。
目黒は席に座ってノートを開いていたが、字がまったく頭に入らなかった。
——康二くんと離れてる。
その事実だけで喉が乾く。
チャイムが鳴る。
先生が教室に入ってきた瞬間、視線が集まった。
「目黒、ちょっといいか」
その呼びかけに、クラス中が微かにざわついた。
「最近、お前のことでいくつか報告があってな」
先生は淡々と言う。
心臓が跳ねた。
呼吸が浅くなる。
「落書きや、持ち物の破損……それだけやない。お前の様子が“悪すぎる”って声があった。保健室の先生や他の教師からもだ」
目黒の視界がぐらりと揺れた。
背中に冷たい汗がにじむ。
——やばい。
——バレる。
——康二くんに迷惑がかかる。
先生の声が遠くなる。
「何か困ってることがあるなら、俺たちにも話していいんだぞ」
目黒は唇を噛んだ。
視界の端で、クラスメイトたちがヒソヒソと囁いている気がする。
“あいつ、やっぱりなんかあるんだよな”
“メンタルやばいって噂…”
耳が勝手に拾ってしまう。
先生が続ける。
「向井とよく一緒にいるようだが、あいつとも話してみる。——少し距離を置いたほうがいいかもしれん」
世界が、ひび割れた。
距離を——置く?
唯一の安心を?
唯一の場所を?
頭の中が一気に真っ白になった。
「……い、や……」
喉の奥から声にならない声が漏れる。
「目黒?」
先生が近づく。
「いや……やだ……離れたくない……」
崩れるような震え声だった。
ざわっと教室が揺れる。
みんなの視線が痛いほど刺さる。
その瞬間、教室の後ろのドアが勢いよく開いた。
「——待って」
向井康二が立っていた。
息が荒い。ここへ急いできたのがわかる。
「先生。目黒に何言うてんの」
声は低く、抑えた怒りが滲んでいた。
「向井、お前には——」
「こいつ、俺がおらなあかんねん」
康二ははっきりと言った。
教室が凍る。
目黒の喉が鳴る。
呼吸が戻る。
世界が色を取り戻す。
先生の眉が寄る。
「だからと言って、依存関係は良くない」
「良くないんは、こいつに手出してる周りや。先生ちゃう」
康二は一歩前へ出た。
その背中が、目黒には“唯一の壁”に見えた。
涙がこぼれそうになる。
「こいつから離せって言うなら、俺は——」
康二は教室に響く声で言い切った。
「目黒連れて学校辞めるで」
教室がざわついた。
先生の顔色が変わる。
目黒の心臓は、逆に静かになっていた。
——この人は、俺を捨てない。
——この人だけいればいい。
世界が狭くなっていくのに、怖くない。
康二が振り返って目黒を見た。
その目は、迷いもためらいもなかった。
「行くで、目黒」
手を差し伸べられた瞬間、
目黒の手は勝手に動いた。
触れた指先だけが、生きてるみたいに熱かった。
世界が壊れていく音は、
なぜか優しい音に聞こえた。
またアイコン変えます
ころころ変えてすみません💦
把握お願いします🙏