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56 - 第56話 生きて 恋して あきらめないで

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2026年03月17日

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 だいぶ時間を置いてから、瑞奈は小康状態に入った。

 寝入ったようで、瑞奈の胸の上の掛け布団が穏やかに上下している。最後まで残っていた看護師が退室すると、瑞奈のお母さんも、咲良も、俺も、ようやく長い息をついた。

「晴翔君、疲れたでしょう。家で休んで」

 瑞奈のお母さんは、目のまわりにうっすらとした隈を張りつかせていた。

「大丈夫です。お母さんこそ」

 お母さんは軽く首を振った。「晴翔君お夕飯まだでしょう。食べにいってらっしゃい」

 昼から何も食べてないが、空腹は感じられなかった。「あまりお腹が空いていなくて」

 お母さんが小さな笑みを零した。「一緒ね。目の隈も一緒」

 瑞奈のお父さんは東京へ出張中だったため、まだ病院には着けていなかった。連絡を受けて新幹線に飛び乗ったそうで、おそらくはそろそろこちらに到着する。

「晴翔さん!」

 スマホを操作していた咲良が、画面を俺に向けた。「これ、ここ、ここです」

 いつも落ち着いている咲良が珍しく昂っている。

 俺はスマホの画面に視線を落とした。

 それは、久しぶりに見る春奈さんのブログだった。

 春奈さんは亡くなる前に何を思ったのだろう、そう考えをめぐらしながら、文面に目を走らせようと――


 P.S.瑞奈ちゃん、晴翔くん

 生きて 恋して あきらめないで


 瑞奈と俺に向けられたメッセージだった。

 呼吸を止めて画面に見入る。

 ブログの日付は、春奈さんが亡くなる三日前になっていた。

 視線入力する春奈さんの息遣いが、パソコンに向かう春奈さんの眼差しが、瑞奈と俺に向けた春奈さんの気持ちが、そこにあった。

 喋ることができない春奈さんが、話しかけてくれているみたいだ。

 ぽっと温もりが宿る。小春日和のような穏やかな空気が天から降ってくる。一瞬そんな心地がした。

 春奈さん、ありがとうございます。

 その場で黙とうをする。

 瞼を開くと、咲良と瑞奈のお母さんも俺にならうように目を瞑り、天に祈りを捧げていた。

「にゃにしてるにょ?」

 俺の顔が綻んだ。

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