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-—–イリス視点 ——–
「危なかった……。危うく理性を失うところでした」
わたしは魔王城から飛び立つと、ホッと一息つきました。
あの状況で最後までやっていたら、どうなっていたか分かりません。
いくら魔眼で暗示をかけられていたとはいえ、自分の行動が信じられないのです。
「それにしても、まさかあんなことをしてしまうなんて……。わたしは淫乱になってしまったのでしょうか?」
自分の魔眼でフレアさんやシンカさんを催眠状態にしたのはわたしですが、ディノス陛下があれほどお二人をお求めになるとは想定外でした。
つい、わたしは物陰からそれを盗み見てしまいました。
その上、気がついたときには自ら慰めており、あまつさえそれをディノス陛下に見られてしまうとは……。
顔から火が出るかと思いました。
そして、わたしの痴態を見たディノス陛下は、わたしに魔眼を使用されました。
わたしが催眠を掛けられる側にのは想定外です。
てっきり、ディノス陛下はわたしにご興味がないとばかり……。
「うう……」
その後は、催眠の効力があったとはいえ、かなり乱れてしまいました。
思い出すと恥ずかしくて死んでしまいそうになります。
でも、不思議と後悔はないんですよね。
むしろ、心の奥底では望んでいたような気がするんです。
「……って、なにを考えているのですか、イリス・ノイシェル!」
頬に熱を感じながら、わたしは自分の思考を振り払いました。
今はそんなことを考えている場合ではありません。
早くディノス陛下から遠ざからないと……。
今の陛下は、フレアさんとシンカさんを抱かれた熱で興奮されているご様子……。
勢いでわたしまで求められてきましたが、冷静になればわたしなど相手にされるはずもありません。
そもそも、わたしは竜種です。
魔族とは生きる世界が違います。
歴代最強の魔王であるディノス陛下の寵愛を受けるのは、同じ魔族であるフレアさんか、あるいは人族の勇者であるシンカさんが相応しいでしょう。
「……とにかく、このまま遠くへ逃げましょう」
そう考えたわたしは、なるべく人里から離れた山奥へと向かいました。
……懐かしい。
ここは、わたしが数百年前に住んでいた故郷です。
最後の同族であるお婆ちゃんが息を引き取った場所でもあります。
この辺りには強力な魔物が多く生息しており、普通の人間が立ち入ることはまずあり得ません。
きっと、ここなら落ち着いて今後の身の振り方を考えることができることでしょう。
わたしはそう考え、しばらくここに佇んでいたのですが……。
ふと、近くに人の気配を感じました。
「やはりここにいたか、イリスよ」
わたしの愛しい人から、そのような言葉が掛けられたのでした。
—ディノス視点—
余はイリスが飛び去った方向に探知を行った。
しかし、古代種であるイリスの移動速度は破格だ。
余の探知魔法でも、捉えきれなかった。
「……くっ」
最強の魔王として、不甲斐ない。
側近であるイリスの異変は、断じて見逃すことはできない。
余が対応策を練っていると……。
「ふん。お困りのようね」
寝室から赤髪の少女が出てきた。
「イリスさんが出ていってしまったようだね。心配だな」
同じく、青髪の少女が出てくる。
「フレアにシンカよ。目が覚めたか」
なかなかに早い復活である。
さんざんによがらせてやったのだが。
さすが、高位魔族であるフレアと勇者であるシンカだ。
体力と回復能力は桁外れのようだな。
「さすがのディノス……いえ、魔王様も、古代種であるイリスさんにはたじたじなのね」
「あの子からディノス君への感情はとても大きそうだからねえ。魔王様と側近というだけの関係に収まらないだろう」
フレアとシンカがそう言う。
余とイリスの関係を彼女たちなりに推察しているようだ。
……いや待て。
聞き捨てならぬことを言っていた。
「……お前たち、余が魔王であることにいつから気付いていた?」
余は身分を隠して真実の愛を見つけるために学園に入学した。
イリスの魔眼の力を借りたとはいえ、半ば程度はフレアとシンカとの愛を確立できたと思っていたのだが……。
「違和感はずいぶん前から抱いていたわ。一人称が”余”の変人なんて、そうそういるものじゃないし。でも、確信したのはついさっきね」
「僕も。あんなに魔力が濃いものを中に出されたら、そりゃ気づくよ。僕もよくは知らないけど、こんなの絶対魔王様ぐらいじゃないと出せないし」
フレアとシンカがそう言う。
「それほど濃かったか?」
「知らないけど、そうだと思うわ。絶対に妊娠しているわね……」
「うん。ディノス君のあれは強すぎて、妊娠確実になっちゃう……」
「むう……」
確かに、避妊せずに最後までやってしまったからな……。
だが、それでもまさか見抜かれるとは思わなかったぞ。
「それで? どうするんだい、ディノス君。イリスは行ってしまうみたいだけど、追いかけるのかい?」
シンカが尋ねる。
「そうしたいのは山々だが、彼女の気配を見失ってしまったのだ」
「……ふーん。それじゃあ、もう手詰まりってことね」
「そうなるな」
フレアの言葉を肯定する。
「なら、僕たちの出番ってわけだね。ねえ? フレア」
「そうね。私たちの力を見せてあげましょう。シンカ」
2人がそう言って、魔力を開放する。
何かを始めるつもりか。
彼女たちの力を見せてもらうことにしよう。