テラーノベル
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「……へ、陛下、どうしてこちらに?」
お姉様は目を見開き、声を震わせて尋ねた。それと同時に私が慌てて跪くと、陛下は「楽にしろ」とおっしゃったので顔を上げた。
陛下は檻に近づきながら話し始める。
「もうすぐお前を外に出してやろうと思っている」
「あ、ありがとうございます」
「その後のことだが、お前には帰る家がないだろう」
「……そ、それは」
除籍まではされていないけれど、お姉様は家から追い出されている。
間違っていないので、お姉様は言葉を詰まらせた。
「お前を第二王子の婚約者に戻そうと思う」
「……はい?」
お姉様はわかっていないようだけど、今回の件で国王陛下が介入してきた理由がわかった。
お姉様がレイロとの子供を作ったことは、いくら相手が第二王子とはいえ、王家に対する不敬だ。
一般常識からも外れている。
陛下は王家が馬鹿にされたと感じていたんだわ。
この機会に、お姉様の罰として第二王子との婚約を選んだのね。
しかも、前回のように制約もないから、第二王子が望めば、お姉様はすぐにでも結婚しなければならない。
お姉様にとってはあれだけ結婚したくないと思っていた相手と、また婚約させられるのだから、それはもうショックなのでしょうね。
「い、嫌です!」
「これは決定事項だ」
「嫌っ! 嫌よ! アイミー! お願い! 今回の戦いであなたは褒賞をもらえるんでしょう!? その時は私を」
「もう、お姉様のことは知りません」
冷たく答えると、陛下が私に話しかけてくる。
「お前には褒美を与えるつもりだが、エイミーとテイスンとの婚約や結婚についての願いは除外する」
「承知いたしました」
「そんな! お待ちください、陛下! 私はテイスン殿下と結婚なんてしたくありません! 私は亡き夫のものなんです! アイミー! お願い、絶対に嫌よ! どうにかして助けてくれるわよね!?」
お姉様の中ではレイロと結婚していることになっているらしい。
最近の彼女の考えは理解できないことばかりだわ。
「お姉様、レイロはあなたの夫なんですか?」
「ええ。そうよ。彼との間に子供がいるじゃないの!」
「なら、私はお姉様に夫を寝取られた妹です。申し訳ございませんが、私はそんなお姉様に優しくできるような人間ではございません」
「そ、そんな、アイミー!」
お姉様は私に向かって右手を伸ばしてきた。
一睨みして踵を返すと、陛下が話しかけてくる。
「アイミー、話があるので付いてこい」
「承知いたしました」
「待って、アイミー! せめて、せめてミレイを私に預けてちょうだい! お願い!」
お姉様の叫びは無視して、私は陛下と共に檻が置かれている部屋から出た。
*****
それから十日後、お姉様は檻の中から出してもらえたと同時に、第二王子の屋敷に連れて行かれた。
第二王子を拒んだお姉様は、魔力を吸い上げる魔導具を数時間おきに使われ、逃げられないように足枷を付けられているそうだ。
国王陛下が代替わりした時には、お姉様は第二王子と共に、今の家から放り出されることになる。その際、正妃や他の側妃については、彼女たちに希望を聞き、望みどおりにしてあげるとのことだった。
レイロを亡くし、ミレイにも会えず、第二王子との婚約が決まったお姉様は「殺してくれ」と毎日泣いているらしい。
そんな彼女を他の側妃たちはせせら笑っているようだし、結婚すれば余計に辛くなるでしょうね。
******
今回の件で魔物は負けを察知したのか撤退し、ルーンル王国には平和が訪れた。
エルは騎兵隊に残り、第3騎兵隊の隊長を続けていて、仲間たちも変わりはない。
今日は第3騎兵隊の飲み会に、エルと先に待ち合わせて行くことになった。
時間があるので公園のベンチに座ると、エルが話し始める。
「兄さんの手紙を読んだんだ」
「なんて書いてあったの?」
「色々と書いてあったけど、俺のことは世界で一番大事に思っているけど、恋愛感情とは違うって。そういう関係になりたいとは思わないってさ。こっちだってお断りだっての」
「そうよね」
私が笑うと、エルはなぜか照れくさそうにしながら、話題を変える。
「前に新しい何かに状態異常を回避したりする魔法を付与するって言ってただろ?」
「……言ってたけど、どうしたの?」
「あのさ、魔導具に頼るんじゃなくて、俺が守りたい」
「……え?」
「アイミーの傍にいたい。んで、ずっと守りたい」
「……ずっと?」
晴空 めると 🌙
222
エルの目を見つめて聞き返すと、見る見るうちに、エルの頬が赤くなっていく。
「……ずっと」
「……そうね。でも、あなたには無理なんじゃないかしら」
「どうして、そう思う」
エルの話の途中で、彼の唇のすぐ近くにキスをした。
「……え?」
「……これも避けれないのに、私を守れるとは思えないわ」
「えっ? えっ、えっ?」
エルはキスされた箇所を押さえて真っ赤になっている。
「気持ちは有り難いけど、そんな調子じゃ無理ね。悪いけど出直してきて?」
笑いながら立ち上がって歩き出す。
エルは顔を真っ赤にして固まってしまい、その場から動かない。
「あ、アイミー様! エルファス隊長!」
店に向かう途中なのか、フェインたちが笑顔で駆けよってきたのでお願いする。
「エルが大変だから世話をしてあげて」
「え? 世話?」
不思議そうにしている仲間たちにエルを任せて、彼らと一緒にやってきたフェインに話しかける。
「先に行きましょう」
「……一体、何があったんです?」
「秘密」
「わあ! 隊長! 顔が真っ赤じゃないですか! しかも動かない!」
「隊長! しっかり! 返事してください! アイミー様、一体、何をしたんですか!?」
仲間たちの困った声が背後から聞こえ、私は声を上げて笑った。
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