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『この苦しみの病名は』前編
ある日の朝
暖かな日差しが差し込み、目をうっすらと開ける。
2度目のおはようだ。
今日はゴールデンウィーク初日。
久々の連休だというのに、なかなか遊ぶ気にはなれない。
暖かな日差しのせいか、起きる気にもなれない。
布団の中で起きるか起きないかの判断に迷っていたとき、
三回の丁寧なノックが聞こえた。
「ゾムさんー?もう8時過ぎてるっすよ…いい加減、3度寝とか言わずに起きてください」
同じ寮に住むショッピから声がかかる。
「う〜っす」
やはり起きる気にはなれず、曖昧に返事をした。
…なんてやる気の起きない日なのだろうか。
今日は食欲もないし、活力もない。
ここ最近、そんな気分の毎日が続いていた。
だが、そうもしていられない。
家事をショッピに任せっきりにするわけにもいかないし、今日も明日もバイトが入っている。
そう簡単に、休養を取るわけにはいかないのだ。
「ちょっとはやる気出さないとやな…!」
自分に喝を入れ、朝飯をすませ、家事を手伝い、昼飯も食わずに早めにバイト先に向かった。
ショッピはその行動を、不思議そうに見ていることしか、できなかった。
何かあったか、と聞いても、ゾムはお茶を濁した。
▷バイト先のカフェにて
「…?」
…………………
「€|:^+@〆:………」
…………………
「…?……ム〜?ゾムさーーん?」
…………………
「っ……?んーと…なんスカ?」
ハッと我に返ると、目の前には心配そうな顔つきのバイトリーダー、チーノが手を振っていた。
「お前、今日どーした?ぼーっとするの、これで三回目やで…?体調悪いか?」
(…そうだったっけ…)
「俺は多分…大丈夫っす。五月病…とかじゃないすかね!」
「あーね〜。わかるわぁ…。こう…何か知らんけど身体がダルいんよな」
ま、程々にしとけよ、と優しく言って、チーノはオーダーを取りに行った。
(今日…皿割ってしもたんよな……ちょっと気ぃ抜き過ぎかな…)
(でも、…これも五月病の一種…なんやろな)
『五月病』…なんとも言えない気怠さを一文字で表せる。
なんて便利な言葉なんだろう。
「ゾム〜!そっち、オーダー!」
「あっ…はーい了解〜」
明るい声で返事をして、駆け足でオーダーを取りに行く。
身体が重いことなど、気にも留めずに。
▷チーノ視点
…ゾムの足取りは、どこか重たく感じた。
いつも此処では一番テキパキと行動しているゾムが、なぜ今日、こんなにも不調なのか。
何度声をかけても返事をしてくれなかったり、
裏でぽけっとして突っ立っていたり、
今日なんて皿を1枚割ってしまっていた。
仕事でミスなんて、滅多にないのに。
俺や客と話すときは、いつも笑顔なのに。
今日のあいつの笑顔は、引きつって見えた。
(…あれは…本当に五月病なんかな、? )
(今日帰ったら調べてみるか…)
買い出し帰り
ゾムside
ゴールデンウィーク初日から、数日が経った。
すぐ回復するだろうと思っていた気怠さは、未だに残り続けていた。
段々とネガティブな思考をするようになったことくらい、自分でも分かっていた。
近頃の自分は、他人に迷惑をかけてばかりである。
バイト先ではミスをする。
朝は起きられない。
やる気が出ない。
終いには何も楽しいと感じなくなってきた。
自分は笑顔を作れているのだろうか?
知らぬうちにショッピやチーノに嫌われてはいないか?
自分は、今価値のある人間なのか?
考えすぎなのはわかっている。
思い込みだと、妄想に過ぎないと、知っている。
だが、2週間以上もこの状態が続くと、気分も落ち込んでくるものだ。
仕方ないのだろう。
季節の変わり目、五月病、疲労の蓄積…
それだけだ。
規則正しい生活を送っていれば、直に良くなる。
…2日寝ていない人間が言っても、説得力は皆無だが。
この繊細な気持ちも、落ち込んだ気分も、重い身体も、
時間が経てばきっと治る。そう、風邪と同じように…
ドンッ
「危な…って…あれ、ゾムさん…?」
誰かとぶつかった拍子によろけた体を支えてくれたのは、エーミールだった。
エミさんはひとつ下の後輩で、同じ寮に住んでいる。
「顔色悪いですけど…なんかあったんですか?」
「え?そー見えるかw?別に何もないけど…」
鋭いな、と内心冷や汗をかきつつ、平静を装った。
はずなのに、
「いつものゾムさんは私にぶつかった程度でよろけたりなんてしません。ちゃんと休んどるんか…?」
なんで分かるんだこいつ。
いつもヘラヘラしてるくせに。こんな時に限ってガチトーンで心配してきて…
痛い。
心配の言葉が痛い。
「大丈夫。大丈夫やから!…俺、腹減ったから行くわ!また大学で会おーな…!」
「あ、ちょっと!?」
勢いに任せてエミさんに別れを告げ、重い体を無理やり走らせた。悪いことをした。腹減ったなんて嘘までついて。
でも…
誰かに迷惑をかけるのは、もう御免だ。
▷
ゴールデンウィークが明けた。
それでも気怠さは取れなかった。
逆に悪化して、頭痛や立ちくらみも酷くなった、
それから毎日のように心配の言葉をかけられた。
「クマ酷くね!?学生はよく寝るんやぞ?」
眠くならないんだよ。寝た方が良いのも分かってるのに、寝付けない。
寝ろって言われても、悲しくなるだけ。
眠気に襲われるわけでもない。
それと、
お前も学生やシャオロン。
「お前顔色悪いで〜?食べとるか?」
俺が食うのが好きなのは、お前が一番よくわかっとるはずやろ?トントン。勿論、三食食っとるよ。
でも、もう食いたくない。
好きなもの食っても、食欲がないから吐いてしまう始末。
そんなの…食った判定に入らへんか…w
…なぁ、
俺は…なんで生きとるんやっけ…
誰か、
教え、…て…
?
?
?