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#探偵
橘靖竜
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ロボットの王
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「ようこそ、第十三候補。」
部屋中に響く、同じ声。
神崎は扉へ駆け寄り、ノブを回す。
ガチャッ。
開かない。
鍵が掛かっていた。
参加者たちは一歩、また一歩と神崎へ近づいてくる。
誰一人として表情を変えない。
「落ち着いてください!」
神崎は警察手帳を取り出した。
「警視庁です! この集会は何をしている!」
その瞬間だった。
案内人の男が軽く手を叩く。
パンッ。
参加者たちの動きが止まる。
「皆さん、席へ戻りましょう。」
それだけで全員が何事もなかったかのように席へ戻っていく。
神崎は警戒したまま男を睨む。
「あなたは何者だ。」
男は微笑みを崩さない。
「私は案内人に過ぎません。」
「名前は?」
「……この場所では、皆から”先生”と呼ばれています。」
「教団か?」
「違います。」
男は首を横に振る。
「私たちは、人を救う会です。」
「救う?」
「ええ。」
男は窓の外を見つめる。
「この国では、毎年多くの人が絶望しています。」
「家族を失った人。」
「夢を失った人。」
「生きる意味を失った人。」
「私たちは、その人たちへ”希望”を教えているだけです。」
神崎は吐き捨てるように言う。
「その結果が連続自殺か。」
男の笑顔が、ほんの一瞬だけ消えた。
「……証拠はありますか?」
神崎は言葉を失う。
現時点では、何もない。
「あなた方が被害者と接触していた証拠は?」
「ありません。」
「命令した証拠は?」
「ありません。」
「私たちは相談に乗っただけです。」
すべて法律の隙間を縫うような言い回しだった。
その時。
男が机の引き出しから一冊のノートを取り出す。
「どうぞ。」
神崎がページをめくる。
そこには参加者の感想が並んでいた。
『生きる希望が持てました。』
『家族と向き合えました。』
『死ぬのをやめました。』
どれも前向きな内容ばかり。
違法性は見当たらない。
「刑事さん。」
男は静かに言った。
「あなたは、最初から私たちを犯罪者だと決めつけています。」
神崎は黙った。
「ですが、人を裁くには証拠が必要です。」
その通りだった。
現時点では逮捕も家宅捜索もできない。
神崎はノートを閉じる。
「今日はこれで失礼します。」
男は深く頭を下げた。
「またお会いしましょう。」
⸻
ビルを出た神崎は、深く息を吐いた。
嫌な空気だった。
あの男は何かを知っている。
だが、それを証明できない。
「神崎さん。」
突然、後ろから女性の声がした。
振り向くと、相談室で受付をしていた女性が立っていた。
「あの……。」
彼女は周囲を確認し、小さな紙切れを神崎へ渡す。
「先生に見つかる前に。」
「これは?」
「……逃げてください。」
そう言い残すと、女性は足早に去っていった。
神崎は紙を開く。
そこには住所が書かれている。
『廃病院 七階礼拝堂』
そして、最後に一文。
『本当の転生会は、そこにあります。』
神崎の表情が変わる。
「本当の……転生会?」
その頃。
相談室の奥。
案内人の男は監視カメラの映像を見つめていた。
部屋には、黒いローブをまとった人物が一人立っている。
顔は仮面で隠されていた。
「先生。」
「刑事は動きます。」
案内人は静かに頷く。
「ええ。」
「すべて予定通りです。」
仮面の人物が尋ねる。
「教祖様へ報告しますか。」
男はゆっくりと笑った。
「まだ必要ありません。」
「教祖様がお会いになるのは……。」
監視カメラに映る神崎の姿を見つめながら、男は呟く。
「第十三候補が、門の前へ辿り着いた時です。」
部屋の奥の扉が、ゆっくりと開く。
その先には、誰もいないはずの暗闇。
しかし、その闇の奥から、誰かが神崎の名前を呼ぶような、かすかな声が聞こえていた。
コメント
1件
さっきまで読んでたんだけど、この第4話、めちゃくちゃ不気味で引き込まれたよ。特に「すべて法律の隙間を縫うような言い回し」っていう描写がリアルで、案内人の余裕の笑みが脳裏に焼きついた。あの受付の女性がこっそりメモを渡すシーンもドキドキしたし、「本当の転生会は廃病院に」って伏線がどう繋がるのか気になって仕方ない。第十三候補って呼ばれてる神崎刑事の立場も含めて、次が待ちきれないな。