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「ふぅ…やっと出れたか」



思ったよりも脱出するのに時間がかかってしまった。

まあ崩れないように慎重に進んでいったから仕方がないけれどね。


しかし、外ってこんなに色鮮やかだったんだな。ほんの1,2時間ほどしか洞窟の中にいなかったのだが、なんだか数日ぶりのような感じがする。それだけ今回の戦いがヤバかったってことなのかな。



「ゆ、ユウト?!」



久しぶりの外の景色を堪能していると突然、誰かの声が聞こえた。声のする方向へと視線を向けるとそこには剣を構えてこちらを見ているゲングさんとギルマスの姿があった。二人ともキョトンとした表情でこちらを見ている。



「ゲングさん、ギルマス!無事でしたか~!!」


「「それはこっちのセリフだ!!!」」



二人の無事を喜ぼうとしたら二人から同時に怒鳴られてしまった。

その反応に驚いているとギルマスたちが急いで俺の方へと駆け寄ってきた。



「ユウトの方こそ大丈夫なのか?!」


「あの超越種はどうなんたんだ?!」



いや、一気に質問攻めされても困るって。

一旦落ち着きましょうよ。


俺は若干パニックになっている彼らをなだめつつ、戦いの顛末を語った。



………

……




「そ、そうか。正直なところ、信じがたいことが多すぎてすぐには呑み込めない話だが…」


「とりあえず脅威はなくなったことだけ分かって頂けたら十分だと思います。これがゴブリン・イクシードの魔石です」



俺はまだ頭の整理が出来ていないギルマスにインベントリから取り出した魔石を手渡す。洞窟内から脱出する前に埋もれていたゴブリン・イクシードの死体をわざわざ掘り起こし、インベントリに収納しておいたのだ。ちゃんと倒したという物証があればギルマスたちの安心材料になると思ったのだ。



「なるほど…これを見せられたら信じるしかないな」


「ゴブリン・イクシードの方は回収できたのですが、残念ながらマザーの方は…」



ゴブリン・イクシードの死体を掘り起こすついでにマザーの痕跡も探したのだが、やはり完全に魔力として返還されていたようで何一つ討伐証明を得ることが出来なかったのだ。



「いや、超越種の魔石があるだけで十分だ。マザーがいないという君の証言もこれで確証を得たよ」


「ユウト、感謝する!本当に、本当によくやってくれた」



そういうとギルマスは深々と俺に対して頭を下げる。

偉い人に頭を下げられるとどうしたらいいか分からなくなるから出来ればやめて欲しいのだけど…



「頭を上げてください。冒険者として依頼を達成した、ただそれだけなんですから」


「いや、君は我々作戦に参加した冒険者の命と町の者の命を救ったのだ。これを感謝しないでどうするか」


「ユウト、またお前に助けられてしまったな。文字通り、お前は俺の命の恩人だ。感謝してもしきれない。本当にありがとう…!」



ギルマスに頭を下げられてあたふたしていたのに、そこにさらに追い打ちをかけるようにゲングさんまで頭を下げた。大の大人2人に頭を下げられているこの状況、どう反応すればいいのか誰か教えてくれ!!!



「そ、そういえば他の方たちはどうしたんですか?」



俺は話を逸らすという最終手段を選択することによってこの気まずい状況を打破することにした。次回までに最適解を考えておくことにしよう。…次回がなければ一番いいけど。



「ああ、彼らには先に町へと帰ってもらっている。もし万が一、あの超越種がこの洞窟から出てくる事態になればサウスプリングの町が蹂躙されてしまうのは時間の問題だろう。だから急ぎこのことを町に伝え、町の防衛体制を整えてもらっているのだ」


「なるほど、ではなぜギルマスたちはここに残っているんですか?」


「俺はこの洞窟から奴が出てきた際に、少しでも時間を稼ごうと思ってここにいたんだがな…」


「俺もギルマスと同じだ。お前に救われた命、町の人たちのために使わなきゃお前に顔向けできないと思ってな」



二人とも、自分を犠牲にしてまで他の人たちを守ろうとしていたのか…

本当にいい人たちだな。



「そうだったんですね、お二人ともありがとうございます」


「何を言っている、私たちは結局何もしていない。今回、超越種という災厄による被害を未然に防ぐことが出来たのは全て君のおかげだ」


「本当にこのことは感謝してもしきれない」



やばい、この流れはまた気まずい雰囲気になってきた。

話題転換、話題転換!!!



「じ、じゃあ早く町に戻って皆さんに終わったことを伝えないといけないですね!!」



俺は二人を引っ張り、町へと向かって歩き出す。

早く帰らないといけないのは本当だからね。





=======================





「そういえば、先ほどの話の中で『精霊』という言葉が出てきていたが…」



ギルマスが横で歩いている俺に問いかける。そういえばその部分についてはちゃんと話していなかったな。しかし俺もセラピィのことについてはよく分かっていない部分が多いからどう説明したものか…



「ん~、精霊についてはあまりよく知らないのですよ。でもこの子に洞窟の崩落から助けてもらったんことだけは確かです」


「いや、そういうことではなく。本当に『精霊』に会ったのか?!」



ん?どういうことだ???


ギルマスの疑問点がよく分からない。

それにゲングさんも俺の返答を聞きたそうにこちらを見つめている。



「えーと、本当に会ったのかってここにいるじゃないですか?」



そういうと俺は自分の肩辺りを漂っている光の玉を指差す。

何を隠そう、俺が二人と再会した時からずっとセラピィは一緒にいるのだ。



「ここ、ってどこだ?」


「俺にも何も見えんぞ」


「えっ?!」



ギルマスもゲングさんも俺が指差した辺りをじっと見つめているが本当に何も分かっていないようである。もしかして俺にしか見えていないのか?



「本当ですよ!?今もここに…」



俺は自分の見ているものが幻覚なのかと少し疑ってしまったが、でもセラピィに命を救われたのも事実だ。それを考えると俺がおかしいわけではなさそうだ。



(ねぇ、ユウト。セラピィ…森に戻ってるね)


「えっ、うん。わかったよ」


(何かあったらいつでも呼んでね!)


「呼ぶってどう…」



セラピィは俺の返事を聞く前にどこかへと消えてしまった。

急にどうしてしまったんだろう…?



「ユウト、誰と喋ってるんだ?」


「えっ、やっぱりゲングさんたちには見えてないんですか?」



やはり二人には何も見えていないようだし、セラピィの声も聞こえていないようだ。



「ん~、おそらく君の言っていることは本当なのだろう。『精霊』は心を許した者にしか姿を現さないと聞くからな」


「心を許した者…」



なるほど、そういうことなのか。

だから俺以外にはセラピィの姿が見えていないという訳か。


でも俺も光の玉にしか見えないけど、あれは姿が見えていると言ってもいいのだろうか?



「もしかしてなんですけど…精霊ってかなりレアな存在、です?」


「ああ、全くないという訳ではないが滅多に出会ったという話は聞かないな。それにもし精霊と契約出来たなら強大な力を手にすることが出来るという話も聞くな」



おぅ…なるほど、ね。

これは絶対に人には話さない方が良いことだということが分かりました。



「あ、あの~。今の話は他言無用でお願いできますか?」


「君が精霊に助けられたという話か?」


「はい、そうで…」



いや、ちょっと待てよ。それだけレアな存在なら今回のゴブリン・イクシードの件やセラピィのことを含めて上手くまとまるかもしれない。今回の件はこのままでは確実に多くの人たちに知られてしまうだろうし、そうなれば絶対に目立ってしまう。それを回避できるかもしれない方法を思いついたかも…!!



「あの、今回のゴブリン・イクシードの件自体を精霊が助けてくれたということにしてもらえませんか?」


「ん、それはどういう?」


「僕がゴブリン・イクシードを倒したわけではなく、精霊が森を守るために倒してくれたということにしたいんです」


「おいユウト!それって…」



ゲングさんは俺の言いたいことに気づいたようだ。

それに続いてギルマスもハッとした表情を浮かべる。



そう、俺は今回の件の手柄を全て放棄しようと思っている。


正直、ただのEランク冒険者がギルドマスターすら足元にも及ばなかった超越種を倒したなんてことが知られたら面倒ごとになるに決まっている。そもそも信じてもらえなくて疑惑の目で見られるのも困る。



「二人が口裏を合わせてくれれば今回の件は精霊が解決してくれた、そういうことに出来るはずです」


「でもそれでは君の…」


「僕はお金はある程度は欲しいですが、地位とか名声とかは別に欲しいとは思ってません。逆に必要以上に目立ってしまうと僕の夢がかなえられなくなりますから」



俺は別に功績を残して有名になりたいとか、ちやほやされたいとかそういうのは特にいらない。まあそういう思いが全くないわけでもないけれど、やっぱり好きな人たちと好きなことをして穏やかな日々を過ごしていくことの方が俺は好きなのだ。



「君の夢とは、何なんだ?」


「そういえば前に言ってたな、お金をたくさん稼いでどこかでのんびりとした暮らしがしたいって。確かに今回の件が知られたらお金はたくさん入るかもしれないが、のんびりとした暮らしは出来そうにないだろうな」



ゲングさん…一緒に夕食を食べていた時に話した内容を覚えていてくれたんだ。

あんな軽く話しただけの内容だったのに。



「よしっ、分かった!今回の件は森の精霊が解決してくれた、そういうことでいいんだなユウト?」


「はいっ!ありがとうございます、ゲングさん!!」



俺たちの会話を聞き、ギルマスが軽くため息をついた。



「分かった、君がそれでいいというのであればそういうことにさせてもらうよ。ただギルドマスターとして君にはそれ相応の報酬を渡す、これだけは譲れないぞ」


「分かりました。それで大丈夫です」



やれやれとギルマスが困ったような表情を浮かべている。

まあ普通だったら冒険者は我先に功績を上げたがるのが普通だしな。



よしっ、これで懸念点もなくなったし一件落着だな。

これで気兼ねなく町に帰ってゆっくりできるな~。




それからというもの、いろんなことを聞かれたりしたがどうにかはぐらかしながら足を進める。

そして日が完全に沈む前に俺たちは皆の待つ、サウスプリングの町へと帰ってきたのだった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~願ったスキルより女神様からもらった称号がチートすぎて無双します~

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