【閲覧注意⚠︎】この小説はnmmnです。
nmmnが苦手な方やタグの意味が分からない方は一度ご確認の上、再度閲覧をするかのご検討をお願いします。
又、
この小説は作者の妄想・フィクションです。
ご本人様(キャラクター等)には一切の関係・関連はありません。ご迷惑がかからぬよう皆で自衛をしていきましょう!
閲覧は自己責任です。
※その他BL・R18要素有り (📡×🔊×🧪)
今一度ご確認の上、ご理解ご了承頂ける方のみ本文へお進みください🙌
ご確認ありがとうございます!!!
それではどうぞ〜🫶✨
🧪『』その他「」無線「”○○○”」
空架ぐち逸という男が一人称を変えた瞬間を今でも覚えている。
当初は口調にも軽い言葉がふわりと出ていた事もあったし、何より“俺”だったはずだ。
それなのに、今の彼は頑なに“私”という。
まるで自分はピンクギャングの仲間ではありませんよと知らしめるかのように、堅物な言葉で“私”と言うのだ。
一定のラインを勝手に引いて、絶対にその内側には入ってこようとしない。
「あ、ぐち逸。悪いんだけど豪邸のスタッシュに持ちきれない分の薬入れてくれない?」
レダーがそう問いかければ二つ返事で頷き、ぐち逸のポケットには大量の処方薬が詰め込まれる。
不用心にも鍵が開きっぱなしである玄関の扉を押し開いてみれば、その玄関先に和風な絵画がでかでかと飾ってあり目を見張った。
『、これは…、』
「ん。お〜ぐっさん。久しぶりちゃいますか?、ちなみにこれは桜やね」
リビングの先からやって来た音鳴の言葉に耳を傾けながら、その絵画に少しだけ目を奪われてそれからレダーの言う通りにスタッシュへと薬を詰め込む。
スタッシュの中には薬の他に銃や犯罪道具が沢山並べられていた。
『……、』
「なぁに?、ぐっさん」
ぐち逸の背後からひょこりと顔を出して、ぱちぱちとゆっくり目を瞬かせるその表情を覗く。
『…いえ。怪我だけには気をつけて欲しいと思っただけです』
使いかけのすり減った武器には僅かに血痕が付着している。
一体だれの血かも分からないが、死んで欲しくないと望むのは常日頃の願いだ。
「えぁ(笑)、心配してくれてはるんですかぁ〜?」
嬉しそうに言葉を漏らす音鳴の声にハッと背筋を伸ばす。
『私は誰にだってそう望みます。それはギャングでも警察でも、白市民でも他意はないので』
「んな事言って、ぐっさんはいつでも俺らのこと助けてくれますもんね?」
『ダウンの通知が出ればどこにだって行きますよ』
「まったく照れ屋さんなんやからぁ(笑)」
音鳴はケラケラと笑って、その瞳をスっと細める。
「俺はぐっさんのこと大好きやで。仲間みたいなもんやからな。…ぐっさんは俺らのこと、どう思ってる?」
『、……はぁ…、受け取りずらい言葉ですね。…私は個人医なので貴方たちに肩入れする訳にもいきませんし、…別に、何とも思っていませんよ』
嘘か誠か、ぐち逸は平坦な声色でそう呟く。
何ヶ月も関わってきた人間とは思えぬなんとも淡白な言葉だった。
音鳴はその言葉が建前であって欲しいと思いつつも、心の内では少しの寂しさが浮き彫りになる。
「そっかぁ、ぐっさんは真面目やねぇ」
もし今この空架ぐち逸という男を武力で脅して、欲しい言葉を貰えたとしても…、それは架空のものに過ぎない。
数日も経てばケロッとして現場蘇生を分け隔てなく行う彼の姿が目に見える。
「いや〜、高嶺の花やわぁ、ぐっさんは」
その言葉に振り返ったぐち逸は、首を傾げて眉間をピクリと寄せた。
「近くに居るのに届かんのよなぁ。ほんまにピョンピョンどっかに行ってまううさぎみたいやわ」
『?、ちょっとよく意味が分かりませんね』
「せやろなぁ(笑)、意味は分からんくてよろしい」
コクコクと一人で頷いて、音鳴はぐち逸の肩に乗っているピンクの可愛らしいうさぎをチョンッと指先で軽く小突く。
それから緩く手を振って、音鳴はまたリビングの方へと気ままに歩いて行ってしまった。
『…ん。なんだったんだ』
しばらくその場で思考を巡らせてから、それでも分からなかったのでおいとましようと玄関の扉に手を伸ばす。
さっきと同じ要領でその扉を軽く開こうと思えば、何故かガチャガチャと音を立てて一向に開かなかった。
『?、』
またもや首を傾げて、もう一度ガチャガチャと扉を押してみたり引いてみたりを繰り返す。
「ぐち逸」
『、あぁ。レダーさん』
いつからそこに居たのか、レダーは気だるげに身体を壁に預けてじーっとぐち逸のことを見つめていた。
『あの、扉が開かないのですが…』
「そうだね。鍵閉めちゃったし」
『そうですか…』
ぐち逸は早く開けてくれとも言わずに、ただただレダーがそうしてくれるのを待つ。
「…ぐち逸さ、いまジョブ切ってんの?」
『え?、あぁ、はい。一応』
処方薬の受け渡しに時間が掛かると思い、ぐち逸は個人医のジョブを切っていた。
「そっか。律儀だね」
『えぇ。まぁ』
それからしばらく無言の時間が流れて、レダーは少し悩みながらも口を開く。
「ぐち逸さぁ、一応人としての感情とかは持ってんだよね?」
『そりゃあ持ってますよ。人間ですから』
「そうだよね。…じゃあ、やっぱり言葉にしずらいだけかァ」
『?、何をですか』
「俺らのこと何とも思ってないとか、嘘だよね?」
ジトリとレダーの視線がぐち逸に絡みつき、ぐち逸はその視線から緩く目を背けて口を噤む。
「俺はあいにく音鳴みたいに優しくないからさ。言葉にしてくれないと嫌な訳。…それとも本当に、ぐち逸は何とも思ってないの?。俺たちは赤の他人?」
バカ真面目にちょこんと肩にうさぎを乗っけて、それでも今のぐち逸は困ったように無言を貫く。
「黒市民に好意を向けられるのが面倒とか?」
『…いや、そういう訳では…、』
「じゃあなに。俺たちにいつか愛想つかされるのが怖いの?」
だから分厚い壁を作って一定の距離を保とうとし続けるのだろうか。
そんな事をふと考えたレダーは、影が落ちているぐち逸の表情を覗く。
「……なに。そういう事?、、…本当に?」
ぐち逸の目は泳いでいた。
拳をぎゅっと握りしめ、長く長く息を吸ってからゆっくりと息を吐いて言葉を漏らす。
『…いいえ。私はただの個人医ですから。あなた方にどう思われていようが興味はありません。故に、私は誰に対しても何も思いません。…私は、人の命を救えれば、ただそれだけで…、十分な人間ですから』
少し張り詰めているようにも聞こえるその声色に、レダーは困ったようにこめかみを軽く引っ掻いて唸る。
「あっそぅ…゙んー…、、そうですかぁ…、まぁそうだねぇー。ぐち逸がそう言うのも解釈一致ではあるけど、…なぁんか、…ムカつくわ」
まるで長年可愛がってきた野良猫が突然本気で引っ掻いてきたかのような喪失感と失望感。
しかし、レダーはギャングのボスであるが故に悲しいなどという負の感情を大々的には認めたくない。
だからこれらの気持ちは一周まわって苛立ちや怒りへと瞬時に変換される。
そう、この気持ちはぐち逸へ向けた怒りだ。
「お前嫌な奴だね。俺らがこんなにもお前のこと好意的に囲ってるのに、分からないフリして逃げるんだ?」
『、逃げるとか、そういう事ではないでしょう。私はただ自分の立場をわきまえているだけです』
「…あっそう。じゃあ、ぐち逸が考えてるその立場ってもんをぐちゃぐちゃにしてあげるよ。お前の正しい居場所を教えてやる」
ダンっ、とドアに手をついて、レダーがぐち逸を睨みつける。
『(…あぁ。選択を誤った)』
ぐち逸は井の中の蛙という言葉を思い出しながら、終始諦めた様子でレダーの事を見つめ返していた。
カチャカチャと手錠の音が響く。
ぐち逸が周囲を冷静に見回しても、ここが一体どこの部屋なのか一向に検討がつかない。
「俺らの豪邸は広いからねぇ。使ってない部屋も沢山あるし、一室くらいお前にあげたって良いよ」
どサリとソファに投げ込まれ、ぐち逸は自身の拘束された両手に目をやってから小さく息を吐いた。
『…、気持ちは嬉しいですが、私には、、必要ありません』
後ろ手で部屋の鍵を閉めたレダーが足を気だるげにずってぐち逸を見下ろす。
その瞳は何を考えているのか分からなくて、いつもの緩い笑みでさえ今は不思議と緊張感をもたらした。
「はぁ…、お前はとことん肝が据わってんね。俺一応ギャングのボスだよ?、まぁ別にだからと言ってお前をいたぶる趣味はないんだけどさ」
首をコキコキと鳴らしてから、レダーはぐち逸の隣に腰を下ろして唐突に肩を組む。
『っ、』
そしてぐち逸の身体を強く引き寄せて、そのままさわさわと薄緑の髪を梳くように撫でた。
『な、なんですか…、』
「んー?、可愛がってる」
戸惑うぐち逸の身体を更に引っ張って、レダーは自身の膝の上にぐち逸を寝転がせる。
肩下までレダーの太ももに乗り上げて、ぐち逸は目を瞬かせながら控えめにもぞりと動いてレダーを見上げた。
頭を撫でられ、頬を撫でられ、それからスルりとぐち逸の首に男性特有の骨ばった指が添えられる。
「ぐち逸、俺らのこと好き?」
『それは…、えっと…、』
もちろん嫌いではないが、決定的な言葉を伝えたらそれこそギャングボスの思うつぼだ。
「…ふーん。言えないんだ」
ゴクリと上下に動いた喉元をしっかりと抑えて、レダーは片手一つでその首筋を締め付ける。
気道を押さえるのではなく、ただ頭に巡る空気をせき止めるだけ。
『、ッ…、』
「この首の締め方って苦しくないらしいじゃん。むしろ、頭真っ白になって気持ちいいらしいね」
段々と浅い呼吸をし始めたぐち逸の唇をもう片方の手ですりすりと撫で付け、不意にその指先をぐち逸の口内に押し込む。
『゙ぉ、ッ、゙っぇ…、』
逃げる舌を掴んで、ひたすらに指先でもて弄ぶ。
たっぷりと舌を弄って、それから上顎のざらざらとした部分からその奥の柔らかい肉までを行ったり来たりと撫で続ける。
「苦しいし、気持ちいいね。ぐち逸」
上下に肺が動いて、ぐち逸の目元はパシパシと薄く開いては閉じてを繰り返している。
「お前を苦しめる事だけに専念することだって出来るけど、俺はお前のこと嫌いじゃないからしないよ」
口内をまさぐっていた指を引き抜いて、圧迫していた血管もついでに緩めてやれば、ぐち逸はけほけほと咳をして息を吐いた。
『っは、はっ、はっ、ッ、はっ、はっ、』
回らない頭で必死に今の状況を理解しようと思考を巡らせ、目下ろしてくるその瞳に目を白黒とさせる。
「ふは(笑)、おもしろい顔してんね」
半分放心状態と言っても差し支えないその身体を抱きとめて、ソファの肘置き部分にぐち逸の頭を乗せる。
自分の位置も少しだけ調節してから、レダーはまたぐち逸の首をキュッと締めて笑みを漏らした。
「ぐち逸、好きって言ってごらんよ」
『、ッ…、…っ、言えません、』
チカチカと目を瞬かせて、ぐち逸ははっきりとそう告げる。
「…、はぁ…。まだ躾が足りないかぁ…、」
そんなことを呟いて、レダーは首を絞めつつもぐち逸に顔を寄せて“ちゅ…”と乾いた音を響かせた。
『ン、っ、……、ぇ、ぁ、ッ、ン、っふ、ン、』
それ以上言葉を告げることはなく、ただただ静かにぐち逸の唇に触れるだけのキスを落として、レダーはじっとぐち逸の様子を伺う。
『、ン、っ、はっ、はっ、ッ、ン、ん、は…、は…、ンぅ…、』
酸素の足りないよわよわな頭で、ぐち逸はひたすらにレダーのキスを受け止めて目元をチカチカとさせる。
時折スリスリと両足を小さくばたつかせて、それでもぐち逸は大人しくレダーの行為に耐えていた。
「…顔真っ赤じゃない?」
『はっ、はっ、っ、…、すみません、初めて、だったので、』
謝ることなど何も無いはずなのに、やはり頭が回っていないのか少々受け身だ。
カクンと時折腰を震わせて、ぐち逸は真っ黒なその瞳を見つめ続ける。
「…はぁー…、なんか、俺が悪いことしてるみたいじゃん。お前の初めて奪っちゃったの?」
『…、えっと、その……、優しく、キス…されたのは、、初めて、で、、』
そのしどろもどろな言い方と歪な言葉に、レダーはぴくりと眉をひそめる。
「……お前さぁ、なんか俺らに隠してることあるんじゃない?」
誰にだって人には言えぬ秘密が1つや2つあるものだ。
しかし、それとこれとはまた別の話。
俺らがぐち逸と偶然な出会いをして数ヶ月、確かにぐち逸の言動は少しおかしな点も見られたが、このどことなく気持ち悪さが這いずってくるような感覚を感じ取ったのは初めてだ。
『隠し事…?、カルテルに入っていたことですか?、』
「違う。何か他に…、俺たちと出会う前とか、過去になんかされたとか、あるんじゃないの?」
その言葉にぐち逸が瞬きを二度ほど繰り返す。
『…いえ、そんなことは、決して…、』
「……あっそぅ。…じゃあ、何も問題ないよね」
レダーはするりと首に張り付けていた手を引いて、そのままカチャカチャとぐち逸のベルトを外し始める。
『!、ぁ、ま、待ってください、レダーさっ、゙ン゙んッ、っ、゙ンっ、』
ぱしりと片手で口元を覆われ、ぐち逸はじたばたと身体を身じろいで抵抗を示す。
しかし、レダーのほうが力も位置も圧倒的に優位なのは当たり前で、直ぐにベルトが取り外されてズボンのチャックも全開に…、そのまま下着ごとごそりと肌を露出させられる。
「、…はぁー…、やっぱり」
昔懐かしい警察の勘とやらが働いた。
前職でよく見たレイプやら集団リンチやらを受けた被害者には、打撲や流血の他に根性焼きの痕も沢山残っているのが常だ。
その印は同じ箇所に何度も擦り付けられてしまえば、そりゃあ火傷の痕なのだから、数年経ってもなかなか消えるものでは無い。
特にぐち逸のへそ下、下半身に焼き付けられた痕は想像をひょいと乗り越えてしまうほどには酷いものだった。
『っ、ッ、、』
ぐち逸は見られてしまったのを理解してから、身じろぐこともせずにダラりと身体から力を抜いて過剰に瞬きを繰り返す。
その治りきった歪な痕にひたりと手を添えれば、ぐち逸はびくりと腰を跳ねらせて目を見開く。
次第にじわじわとその見開かれた目元から涙が溢れ出てきて、レダーは無言で口元を覆っていたその手を外した。
『っは、はっ、はっ、ッ、はっ、゙ぅ、っふ、゙ぅぅ、っ(泣)、゙ッ、ごめ、ごめんなさい、っ、ごめんなさい、はっ、はっ、っ、っ、はっ、かひゅっ、ッ、』
レダーを見つめながら、ぐち逸がぽろぽろと涙を流して喉をつっかえる。
まるで呼吸の方法を忘れたかのような荒い息遣いに、レダーは若干額に汗を滲ませた。
「゙あー…、俺被害者のケアとか専門外だったしなぁ、えーっとぉー…”音鳴〜、ちょっと一番奥の部屋来て”」
無線で音鳴にそう告げれば、レダーはひぐひぐと泣いているぐち逸の頭をそっと撫でようと手を伸ばす。
しかし、ぐち逸はぎゅっと身を縮めて更に身体を震わすばかりだった。
「こりゃだめだわァ…、“音鳴、豪邸いるよね?、なるはやで来てもらってもいい?”」
そう催促すれば流石の音鳴も“なんですかぁー?”と言いながら指定された場所へと歩き出す。
「”ぐち逸が過呼吸になっちゃった”」
「“はぁ?、どういうこと?”」
割と真面目な声色で音鳴が質問を投げかけ、そのままガチャリと重い扉をこじ開ける。
「なんか嫌な記憶掘り起こしちゃったみたい」
そう言って近づいてきた音鳴にも下半身の荒れた肌を見せ、音鳴はそれを見た途端に反吐が出るような顔つきで“゙うわ”と一言呟いた。
「お前こういう被害者のメンタルケア得意だったよね?」
「いやそうやけど、、はぁ?、なんでぐっさんがこんなことされてんの?、いつ?、外傷的に結構昔のやつやんな?」
再度“゙うわもう最悪や…”と呟いて、音鳴はぐち逸の介抱を始めた。
拒絶するぐち逸の身体を無理やり抱き寄せ、音鳴はひたすらに頭やら背中やらを優しく撫でる。
「大丈夫やで〜ぐっさん、俺らは何も怖いことせぇへんよぉ」
辛抱強く十分、二十分、泣き続けるぐち逸の身体を抱きしめて言葉を投げかける。
「怖かったなぁぐっさん、もう大丈夫やからなぁ」
もちろん手錠も外して、子どもをあやすかのように甘く優しく囁きかける。
「ここにはなんも怖いものはあらへんで?、俺らが守ったるから大丈夫や。な?、ぐっさん、いい子やから落ち着いて息して?」
『はっ、はっ、ッ、はっ、はっ、けほけほッ、はっ、ッ、、はっ、』
「ぐっさん俺の声聞こえてるやんな?、ほら、真似して息吸って?、すぅー…、はぁー…、」
『、っ、けほっ、ッ、すぅー…、はぁー…、』
「ん。いい子やねぇ、ほなもう一回…」
だんだんと音鳴の言葉に合わせて呼吸を整え始めたぐち逸は、未だにぽろぽろと涙を流しながら目元を真っ赤に腫らしている。
しかし、音鳴をいやいやと拒絶することは無くなり、代わりにぎゅっとその服を力いっぱいに握りしめて硬直ぎみだ。
「偉いなぁぐっさん、じょうずに呼吸出来とるよ」
トン…トン…と穏やかに背中を叩いて、音鳴はちらりと隣に座っているレダーに目を向ける。
「…お前もなんか言わんかい」
「えぇ…、俺ほんとに分かんないよそういうの」
どちらかと言えばボコスカと犯罪者を取り締まっていた側の人間だ。
「お前みたいに優しい言葉とかかけらんないって」
「はぁ〜、これだから圧担当は困るねん。俺みたいに色んな方向見て行かんとちゃいますの?」
今日ばっかりは音鳴の言葉を飲み込んで、いいからぐち逸を泣き止ませてくれとジト目で訴える。
「はいはい分かりました。もぉーまったくしゃァないのぉ…、、…ん、ぐっさんどしたの?」
心の中で久しぶりに勝ったなと思いながら正面に目をやれば、ぐち逸の真っ赤に腫れたその目元が音鳴の視線と交わる。
「…?、ぐっさん?、…ぐっさん、もう泣かんといてや、、ほら、目ぇ疲れるやろ?」
そう言ってぐち逸の目元を指の腹で拭えば、ぐち逸は不意にその手をきゅっと掴んで自身の頬へと添わせる。
「、えっと、、撫でて欲しいんかな?、ええよぉ…、っ、ンっ、゙ン?、ンゥ、っ、…、っは、はっ、はっ、……ぇ?、」
驚く間もなくごくごく自然な流れでぐち逸が音鳴の口元を奪い、そのままこきゅりと一度だけ舌を絡めてからゆっくりと息を吐く。
『はー…、はー…、っ…、音鳴さん、、』
その目はぼんやりと夢を見ているかのような虚ろの瞳で、ぐち逸は頬に添えられた音鳴の手に擦り寄って確かめるかのようにしっとりと目を向ける。
『音鳴さん、っ、怖くしない?、痛く、しない?、音鳴さん…、もういっかい、キス…、』
そう言ってまた音鳴の呆気にとられた口元に自分の舌を入れ込んで、こきゅりと気持ちよさそうに舌を絡め続けた。
『ン、ン、♡、っふ、ン、ンゥ、んぇ、ン、♡、』
やっと自身が置かれている状況を理解し始めた音鳴は、もの凄く驚きつつも無理やり突き放すような事はせずに、ゆっくりと後ろ髪を撫でてぐち逸から離れていく時を待つ。
『っは、はーっ、はーっ、ん…、ふへ(笑)、』
「っ、はぁ…、ぐっさん、、そんなに怖かったんか?、嫌な記憶がフラッシュバックしとるんやろ?、言葉で言ったって響かんやろうけど、、もう何も怖いもんはあらへんで?、」
音鳴がそう告げてもぐち逸はうっとりとした眼で薄く笑みを浮かべるだけで、未だに握りしめられている服にはカタカタと小刻みな震えが音鳴の服越しに伝わってくる。
「、、PTSD?」
「…せやなぁ、しかも相当に厄介なやつや。安心させてやらんとどうにもならん、、」
錯乱とした記憶の中でどうにか安心材料を見つけようとぐち逸が取っている今の行動…、これを拒否してしまえばまた過呼吸になるのは目に見えているし、何よりぐち逸は繊細な人間だ。
医者の知識があるのも相まって、自身で簡単に身体を傷つけたり…、最悪の場合はダウンだって造作もないだろう。
「……ふぅ…。可哀想になぁぐっさん、、…何して欲しいん?、言うてみ?」
『、ん、…二人に、嫌われたく、ない、、…、だから、いっぱい、愛してください、たくさん、愛してほしい、へは(笑)…、お願いします、いっぱい触ってください、いっぱい…、』
そう呟いてぷつりぷつりと自身の服のボタンを外し、裏返しなど気にすることも無くその衣服を床に捨てて一気に上半身をタンクトップの一枚にする。
「…どうする?、レダー」
「どうって…、まぁ、俺は元々その気だったし。ぐち逸も望んでそうしてくれるなら願ったり叶ったりだけど」
滲んでいた汗も今は乾ききっていて、レダーはバケットハットをトスりとソファの端っこに置いてからぐち逸の顔を覗き込む。
「ぐち逸、俺らは元警察だけど、今はギャングだからさ。…くれるってんなら、全部奪っちゃうよ?。本当に」
レダーの分かりにくい最後の優しさに、眠っているはずの理性がぴくりと反応する。
「…その代わり、ぐち逸の嫌な記憶はぜんぶ俺たちで塗り替えてあげる。そしたら何も怖いものなくなるね。…どうする?、ぐち逸」
最後の最後にシロップのような腹黒い甘さをとろりと呟いて、レダーはぐち逸の涙に濡れた目元を強めに指の腹で拭う。
『ッ、…、…、お願い、します、』
口元がゆるく開いては閉じてを繰り返してから、ぐち逸は小さな声でそう呟いて、レダーの手にもスリ…と頬を擦り寄らせた。
「はぇ〜…、悪い男やなぁ(笑)、あぁ怖い怖い」
“ほな俺はもう用済みやねぇ”と薄く笑みを貼り付けて、音鳴はぐち逸をレダーに預けようと身じろぐ。
『へ、ぁ、ッ、ぃ、行かないで、』
「ぇ、…ん、と、あぇ?、俺も??…、」
「二人にって言ってたじゃん(笑)。なぁ〜?ぐち逸」
レダーはそれはそれは悪い笑みを浮かべて、音鳴に耳打ちをする。
「“お前ぐち逸のこと結構気に入ってるよな?”」
「“だから何やねん。お前もそうやろ”」
「“否定はしないよ(笑)。だけどさ、俺は別に独り占めしたい訳じゃないんだよね。…高嶺の花を、ピンクの花瓶に生けておきたいんだよ。大切に大切に。…なぁ、お前なら分かるだろ?”」
一時間程前まではあんなにも真面目で乾いた言葉を述べていたその口が、理由は酷く怒りに満ちるものがあるものの、こんなにも自分たちを求めてくれている。
どこぞのクズやギャングにぐち逸を奪われる可能性が一ミリでもあるのなら、この場に居合わせたどのメンバーだってぐち逸の願いを叶えてやろうとするだろう。
そうする事でぐち逸の精神が安定するのであれば、…あわよくば、868という欲の塊みたいな奴らからの熱烈な愛に気がついてくれると期待して。
「……はぁ…、ぐっさん、俺ら普段からよぉ動いとるから体力は有り余っとるんよ。…もし苦しかったり、付いて行けへんくなったらちゃんと言うんやで?」
“なるべく歯止めは効かせるわ”と呟いて、音鳴はカチャリと色つきネオンメガネを取り外す。
それを見たレダーはまたニンマリと悪い笑みを浮かべて、ぐち逸を二人で愛でる為の準備を始めた。
コメント
1件