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129
りた ~伝説のちくわ~
6,728
拝啓、主様。当リクエストをして下さったこと、覚えていらっしゃいますでしょうか。
私は一時も忘れたことはございません…。
あまりにも遅くなってしまい誠に申し訳ございませんでしたーー!!!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
言い訳のしようもございません、えぇ。もう本当に顔向けできません_| ̄|○
大した長さでも内容でも無いのにここまで待たせてしまって本当にすいません💦
まだ謝り足りないですが、仕方がないので注意書きをば。
注意
R18
日本語❌❌❌❌
史実には関係ありません
政治的な意図はありません
以上が大丈夫な方はどうぞ!
NO side
視界の端から端までを、眩ゆい白が支配していた。少しでも動くたび、肌を真っ赤に焼く冷たさに包まる。
__この子供と遊ぶこと、もう何時間か。それでも飽きは感じない。白いポンポンのついたオレンジ色の帽子を被って、羊毛でモコモコな服と茶色いブーツを身につけた男の子。元気に溢れたその子を愛おしいと思うのは、行き場のない父性を与えられる喜びからだろう。
「見てみて、ゆきっこがたくさん!ふわふわぁ… 」
「そうだねぇ、でもあんまり触ると冷たいよ」
「へいき!ゆきっこはお友だちなの」
「そうかい。さぁ、お父さん達はお話でもしてるから、ゆきっこ…? たちと遊んでおいで」
元気の良い返事。気持ちの良い子供の声。何度この声を聞いたことか。少しの甲高さが、懐かしの記憶を追憶させる。
ヒューと、耳に差し込む笛鳴りに似つかわしい北風が、強く身を攫おうとする。慌てて大地を踏み締めると、足元はすっかり雪の底に沈んでしまった。強風は数刻もしないうちには走り去ること。無邪気な子供のようでもある。
そう、自然の巡りに耽ってみたのも良いが、そろそろ限界か。鼻の中をむず痒さが暴れて、喉にも響く大きなくしゃみが一つ、二つ。小さなその子に『すぐ戻る』と伝えると、ロシア帝国は寒さに身震いをして、紅茶を嗜む彼の元へと歩み出した。
すっかり白さに包まれてしまった荘厳な薔薇園。贅沢を詰め込んだようなのに、よく見れば草木と石碑だけで構成された庭は重厚で上品だと感じさせる。
「僕にも一杯 頂けないかな」
「まずはその雪を払うことから始めるのを勧めよう」
「おや、失敬」
毛先の美しい毛皮に包まれながら、そこの隙間に縫って入り込んだ雪の塊を手ではたく。黒く厚手の手袋は、所々に白色が浮かんでは、時折摩擦に白は溶けて、水滴を残して消えていた。
ある程度の雪を落としながら、ロシア帝国は英帝国との雑談を試みる。
「そういえば、あの子の言う『ゆきっこ』とは何かな? 」
「ゆきのこどもの略称でゆきっこ、だそうだ」
「子供の発想はやっぱり面白いね。他の子もそんな感じかい?」
「さぁ、…まぁ あの子だけだろう」
「 ……。__さてと、そろそろ払えたか」
木製アンティークチェアの背もたれ部分に手をかけて、雪を退かした大地の上を引きずる。良い感じにスペースができれば、その分、自分の身体を捩じ込んでようやく英帝国と向き合うことができた。
「子供はいいね。見ているだけで元気が出る」
「そうか、それは良かったな」
偉そうな割に、下女を使わずに茶を入れる男を見る。白い手袋に持たれた白地のティーポット。鮮やかな黄色と咲く花を思わせる濃い桃、薄紫。綺麗な柄だと感心しながら、ロシア帝国は視線だけをチョイっと下に向けた。コポポ…、透ける茶の、美味しそうな色と匂いにばかり見つめて、段々と溜まってゆく紅茶に得も言われぬ侘しさを感じていた。
「関心がないな… 君の子だろう? 」
「御仁は関心がありすぎる。いつか取られそうで怖いな」
「そうやって誤魔化すかい。あゝ、いいとも」
苛立ちを吐き捨てるロシア帝国は、まだ湯気だったばかりの茶を流し込む。乱雑に持ち上げられたティーカップは、至極当然ソーサーとぶつかり合い。彼が再び叩き戻す時にも割れんばかりの音が響くのであった。しかし、彼はいちいち他人の茶器など気にもしないだろう。
ひと睨み英帝国に利かせると、またも埋もれつつある自身の足跡をもう一度辿り始めた。
「ふん。まともキドリめ」
白い地平線の先にポツンと佇む小さな影が、頭のポンポンを揺らしながらこちらを向いた。
「あれ、お話はもういいの? 」
「嗚呼…、すぐに済んださ。それより、僕と雪だるまでも作って遊ぼうか。ゆきっこも大きくなったら楽しいだろう」
「__! うん!」
懐かしい夢を見た。さえずる小鳥と、透けたカーテンの漏らす光が照らす、舞う埃の輝き。いつしか当たり前になってしまった現代の騒がしさに耳を傾けながら、今日もまた、ロシア帝国はクローゼットを開くのであった。
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アメリカside
ボクがあの人に初めて出会ったのは、打算的な父の、ほんの少しの計らいからだった。
心身と降り積もる何処かの庭園。凍てついた赤い薔薇が、寂寞としていたのを今でも覚えている。細かな彫り込みのされた白い柱に巻き付く枯草も、あの侘しさに勝る感情は抱かせなかった。
そんな庭園のど真ん中。6本の白い柱に囲われた、規律よく敷かれた煉瓦の上。金属製で重厚感のあるテーブルと椅子を並べたそのまた左端で、ついにボクはあの人との対面を果たした。
父の長い足にしがみついて、ようやく見上げることの出来たその人の第一印象は、熊。すっごいもふもふで、ふわふわしてのびのびとしていそうな感じがしたから。けど、その人の視線は父に向いていて、ちょっぴり冷たくて怖かったのを今でも覚えている。
やっとこさ顔を見せたボクを見かねたのだろう。瞬きもせぬ間にすっかり優しくて穏やかな顔をしてから、ボクの顔を覗き込むようにしゃがんでくれた。急に顔が近づいたから、思わずびっくりして何度も雪の地面を踏み直してから、口を開いたの。
「…は、…はじめ、まッ、して 」
裏返る声、ちょっと恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じる。父のズボンをもっと強く握りしめながら、その人の顔が半分くらい見えなくなるまで後ろに隠れた。
そんなボクの有様に、その人は、上品って言うかなんて言うか。こう、お日様みたいにふわっとした笑い方をしたんだ。胸の奥を暖かく照らす太陽。
それで、ボクは気がついたんだ。
あの人は『トクベツ』なんだって…。
「初めまして、僕」
__その日から、何度もあの人。…ロシア帝国サンと遊ぶことになった。 雪を投げあったり、かまくらを作ったり、偶には雪にねっころがるだけなんてのも。
父は、ロシア帝国サンのことが好きじゃないみたい。家ではよく悪態をついていて。そんな父の姿を引き出してしまうあの人のことを、僕はもっともっと『トクベツ』に思った。
けれど、それが恋だと気がついた時。正しく言えば、想いが恋の形になった時があったんだ。
往時いつの日か、いつも通り遊んでいただけ。何かが違うとしたら、その時に遊んでいた雪合戦が白熱して。ボクも、ロシア帝国サンもかなり興奮していたんだ。珍しくボクも口が悪くなったし、ロシア帝国サンは、多分、母国語だったから何を言っているのかは全く分からなかったんだけど。何かを言っていて、ボクに降りかかる雪の量が増えてね。これは、敵陣に突撃する他ない。なーんて、戦いにちょっと興味を持った子供の、ちょっとした知恵をもってして、雪の防波堤の裏で雪玉を包むロシア帝国サンに抱きつきに行ったんだ、そしたら__。
「て、てーこく…..サン…?」
気がついたらボクは仰向けになって、目の前で息を荒くするロシア帝国サンに組み敷かれてた。そう、すごい、獣みたいで…。いつでも喰われてしまいそうな危険な香りが鼻を掠めた。脈が知らない速さで全身を駆け巡って、脳みそに心臓があるみたいな感覚が指先を強張らせる。あの感覚を今でも体感できるよ。
昂りに震えるロシア帝国サンの手が、キツくボクの手首を地面に縫い付けた。詰まったように、唾は喉を通らない。背筋に伝う雪の温度は冷たくて。滝のように溢れる冷や汗が全身に悪寒を奔らせる。
初めは押し倒された恐怖なんだって思ってた。怒らせたかなって、ギュッっとつむった両目の、片目だけおずおずと開いて顔を見てみたんだ。ゆらりと揺れるって黄金の瞳の奥に、ボクの心身全部捕まってしまいそうな。危ういものが見え隠れしていた。
全部、融けて、交わって、一つに、なってしまいそうな・・・
「Не строй из себя крутого, мелкий ты засранец.」
掠れた声が、腹の奥を疼かせた。
(あ……。ちゅーされちゃう__ )
荒らい吐息が頬を擽ると、顔に熱が集中する。雪原の白さが反射したロシア帝国サンの顔も、その紅潮が目に見て取れた。
太陽が真上に昇る天下に、ボクただ1人が陰に全身を覆われている。実に異質。気霜なのか湯気なのか分からぬ白い気体が二人を包む中、ロシア帝国サンの顔がボクの顔へと近づいてきて。眉間に力を込めながら唇だけを差し出す。
「…? あの 」
結果だけ言えば、ボクたちの唇が触れ合うことはなかった。その代わりに、ボクは力いっぱいの抱擁を受ける。肩のあたりにロシア帝国サンの頭があって、頭がショートしそうなぐらい動揺したっけ。
「ごめんねぇえ。怖かったよねぇ、…?! 」
大人気無く泣きじゃくるロシア帝国サンに、呆れつつも愛らしさが湧いてくる。涙でびしょびしょに濡れた肩。痛いぐらいの抱擁。胸の奥を擽るような多幸感にたまらず頬が緩んで、顔を見られていないことに安堵のため息が漏れると、怯えからのものだと勘違いしたロシア帝国サンは更に「ごめんねぇ…」なんて。しゃくり上がった声で何度も謝ってきた。腕に込められる力も強くなって、大人の強さもそこで知れた。そんなあの日は特別で、何にも変え難い喜びを味わった日だった。
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No side
20××年。時刻は午後3時。春の柔らかな日差しと涼しい風が吹くとある庭に、アフタヌーンティーの準備を満面の笑みで進める帝国がいた。美しい白が真珠のように光るドレスシャツに、肌触りの柔らかいプリーツズボンを身に着ている。上品でありながらラフさを感じさせる服装は、親しい人を家で迎える帝国の、正装のようなものだった。彼は白いテーブルクロスを机に引いて、陶磁器製のスタンドを中央に置くと長年台所の棚奥に仕舞い込まれていた懐かしのティーセットを並べる。誠に素晴らしい。
全体のバランスを見るべく少し遠巻きに自慢の庭を眺めれば、そんな言葉が頭に浮かんだ。
生えたばかりの芝は瑞々しく、見ているだけで力が湧いてくる。かつての宮殿の庭園とは似ても似つかないが、素朴な落ち着き感が帝国には合っていた。
「ふぅ……そろそろ歳かな」
ある程度の準備が出来ると、達成感と同時にドッと疲れが腰に響く。鈍い骨の軋みに『歳はとりたくないものだと』思い耽りながら、香る焼き立ての匂いにいよいよお菓子ができたと、背を叩きながら脱いだ靴を揃えた。
リビングの直ぐそばに置かれた広々としたキッチンは、昔と比べれば庭と同じように小さく見すぼらしい。しかし、器具は段違いでハイテク化しており、金をかけなくなったというよりは幅を取らないよう小型化したと言う方が正しいのである。オーブンを開けば、旨みのある焦茶色のクッキーやスコーンがいい焼け具合で目も鼻も喜ばせてくれた。
「ああ、…これは良いように焼けた。いちごジャムも用意しないと__」
ちょうど冷蔵庫の扉を開けたタイミングだった。聞き馴染みのあるチャイムが部屋を谺する。慌ててインターホンの『通話』と書かれたボタンを押せば、待ち望んでいた来客の声と姿が玄関先に居た。
『こんにちは てーこくさん。中入ってもいいか?』
「勿論だとも。今迎えに行くよ」
揺れるチューリップが落ち着く頃。帝国と来客の談笑が春の暖かさに色をまた一つ増やした。
「ちょうどお菓子が焼けたところなんだ。君の大好きなクッキーもね」
「おお!いちごジャムは?!あとブルーベリーも!」
「用意してあるとも」
かれこれ数百年の付き合いであるが、来客の__アメリカの幼さと言うのは変わりがない。少し大人びたか、それでもティーンになっただけのようで、帝国はその爛漫さが照らす1日が薄暗く寂しい日常を忘れさせてくれることについ頬を緩めてしまう。彼は200℃近い鉄板を厚手の手袋越しに掴みながら、ほら見てご覧とアメリカを手招きした。
初めは役目を終えた暇つぶしにと始めたお菓子作りが、長い年月を得てあっという間に趣味となってしまった。それはただただ材料を捏ね、生地を作り、成形することが性に合っていたというよりは、それを笑顔で頬張る存在あってのことだ。帝国もそれを自覚してからは一層料理に手を込んでいる。庭の一角に植えられたティフブルーが、何よりの証拠だろう。
「よし、紅茶の準備もできたことだし庭へ行こうか」
いろんな形をした雲が流れる清爽の空を、ふんわりとした湯気がたちのぼり消えてゆく。椅子に腰を下ろして向かい合う二人は慣れ親しんだ紅茶の、ほろ苦く酸味の効いた味に浸っていた。情緒ある時の流れはなんだか早い。
服の隙間に縫って入るそよ風の涼しさに身を委ねるように、帝国は緩慢と瞼を下す。その様子を眺めるアメリカの顔は、穏やかだ。
帝国はさっきと打って変わってパッと目を開くと、頬杖をつきながら菓子の方を指さした。
その意図に気がついたアメリカは躊躇もなく目の前のクッキーの山に手を伸ばすと、いちごジャムにつけてサックリとした良い音をがなでる。
「お味はどうかな」
「んまい!」
どれだけ食べても食べ足りない、塩味と甘味と食感のベストマッチを表すには『美味い』の一言だけでは到底足りない。しかし、あいにく多くの語彙は持ち合わせていないアメリカは両手でサムズアップを作り、これでもかとアピールをするのであった。帝国はその仕草だけでも十分に満足である。紅茶を啜る音の若干の歪さが、カップに隠されて見えない彼の緩み切った口元を想像させるに硬くはないだろう。
次第に減ってゆく山盛りのクッキーと洒落たスコーン。ジャム用瓶の中身はみるみる消えてゆき、満タンだったものが小半程度も無い。アメリカはようやく食べることに満足してきたのか、帝国との会話の量も徐々にだが増えている。しょうもない日常会話から、相談事のような愚痴を溢す度に頷き、親身になって、しかし間違ったことは正そうとしてくれる。そんな彼とのおしゃべりはアメリカにとって、春の日差しのような包容力を持っていた。
しかしながら、今日のアメリカは自身のことを話すばかりではなかった。 アメリカは小さな庭の、小さな納屋の軒下に立てかけられるシャベルに目を向ける。
「今も自分で手入れしてるのか?」
「嗚呼…他に人もいないしね。それに、落ち着くんだ」
「…俺が手伝おうか 」
予想だにもしていなかった。見開かれた帝国の目が、言葉を使わずともそう語っている。それが可笑しくて、愛おしくて、アメリカはカラカラと喉奥で笑った。
「どぉ〜? 」
「あ…あ、悪くはないかもね。でも君が大変だ。ここから君の家は遠いだろう 」
「じゃあ一緒に棲もう…?俺持ち物少なくするからさ」
「だからって…今の生活に困ってるわけでもないんだろう?家だって、ここより大きい 」
「でも帝国さんは居ないよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどね…」
年寄りをここまで好いてくれるのは、人との交流の減った帝国にとっては何よりも喜ばしいことだ。けれど、
「貴重な時間をこんなおじさんと過ごすなんて勿体無いよ」
「そんなことない! 俺は…、だって帝国さんのことが、その……好きだから。無駄なんかじゃ、ない…!」
「そう、僕も大好きだよ」
大切な息子のような存在だと思っている。そんな副音声が、嫌でもアメリカの耳に忍び入ってきた。苦虫でも噛み潰したように歯を食いしばり、辺な耳鳴りが耳孔を幾度と反響する。何か言いたげに口を開くが、結局何を言っても伝わらないのだと、諦め混じりの微かな吐息を吐いてすぐに閉じてしまう。それがなんだか情け無い気がしてやまなくて、鋭い歯が下唇の皮を突き破るぐらいに強く噛み締めた。
そんなアメリカの様子に違和感をとらえつつも、帝国は原因を突き止めるまでには至らない。思考の末にたどり着いた結本はどれも現実味を帯びないようなものばかりであり、いっそそうでなけれさえあれば良いと、最悪の想定を排した。
「とにかく、こんなおじさんと棲むだなんて…駄目だよ、__」
『__幼いうちはね』200歳を優に越す奴に言うセリフではないと分かっていても、それでも帝国にとってはまだまだ子供で。きっと、好きな人なんかもできて、共に時間を過ごすようになるだろう。そんな未来ある者の時間を奪いたくは無かった。たったその、それだけの気持ちで告げた言葉にアメリカは頷くどころか、酷く痛々しい、悲しみを孕んだ顔で涙ぐんでいた。俯いていてもすぐに分かる。力んだ手がズボンを掴んで、指先が青くなっていた。潤んだ瞳からは溶け落ちるように水の粒が彼の手の甲へと降り注ぐ。
気まずい沈黙が訪れた。その原因を作り出した帝国は訳も分からず、自身の言動を振り返る。が、結局答えは見当たらなかった。いや、見ようとしなかった。
静まり返った空間。落ち着くこともできず顔を俯けた帝国は、直ぐに頭に触れた冷たさに顔を上げた。空を見上げれば、影を作る雲から粒の小さな雪がしんしんと降っている。
「……降ってきちゃったね。中に、戻ろっか」
アメリカは発話することも無く、静かに席を立つのみであった。
体重で沈み込むソファに、2人は座っていた。アメリカはコートを脱ぎ捨てると深く腰をかけて、手元を遊ばせている。帝国はアメリカを泣かせてしまったのかもしれないと、罪悪感からくる胸のざわめきに、身体を前のめりに手を組んでいた。
窓の外を見れば、3月の中盤にも関わらず雪の降る量は更に増している。後少しもすれば吹雪になるだろう。ゆっくりと地面に落ちて積もる無音の情景も、彼らの間に立ち込める静けさに比べればうるさいものだ。
そんな沈黙を破いたのは、帝国からだった。
「その…うん。正直に言うと、僕は今でも君が泣いた理由が分からないんだ」
「…知ってる」
「やっぱり、僕がやらかしてしまったのかな」
「凄く酷いことをな」
「それは__、本当に、ごめんね。ただ、君を傷つけたいとはこれっぽっちも考えてはいないんだ。それだけは分かって欲しい…。本当に、すまない」
また、重い沈黙が訪れる。所在なさげに遊ぶ帝国の手を、アメリカは一瞥した。そして、視線を前に戻す。それ自体は何か意味を持つ行動ではないが、それに使った分の時間は一種のアンガーマネジメント的なものだった。
深く息を吸って、目を伏せる。
冷静になろうと、溢れてやまない感情を押さえ込もうとして__
それでもやはり、本気だからこそ。抑えるなんて、できっこなくて。アメリカは胸の内に巣食う物に、長年溜め込んだ気持ちに流されてしまう。
「なぁ、…帝国さんにとっての俺はいつまで幼い子供のままなの?」
「アメリカ、落ち着くんだ___
「いつになったら!! 」
「いつになったら、俺はアンタのイイヒトになれるんだよ…っ」
「そ…れは、」
舌端火を吐くアメリカの言葉に気圧されて、帝国は歯切れの悪い短い問いを絞り出すことしかできなかった。しかし、その声もアメリカに届く前に虚空な消えてしまう。
帝国の肩に強く体重が乗せられると、彼にはあっと声を上げる暇も無かった。自由落下の要領で、帝国の身体は抵抗無くソファへ打ちつけられる。突然の出来事に脳は上手く働いてはくれず、何が起こったのか理解する頃には完全にアメリカに馬乗りにされてしまっていた。声を上げようにも、何故だか声が喉奥に詰まるように、音にもならない掠れた空気が隙間から漏れ出るだけでしかない。
「………っ__」
「もう…いいよな 」
すぅっと細められたアメリカのスカイブルーの瞳の奥で、深い青色が妖しく光ったように見えた。
「アメリカ、アメリカ!落ち着け、話をしよう」
「大丈夫、話しながらできるから。舌噛むかもしんないけど」
帝国は、極度の緊張感に身体が強張り逃げ遅れてしまった。なす術もなく、アメリカの身に付けていたベルトによって腕を頭の上で縛られてしまう。きっと、無理をすれば逃げ出すことはできるだろう。それをしないのは、優しさ故の罪悪感と、アメリカをこれ以上傷つけてしまうことへの恐怖があるからだ。だからこそ、帝国は話し合いを提案するが、アメリカは聞く耳持たずで。仄かに汗ばんだ白い肌が、てらりと部屋の明かりを反射していた。
「大丈夫、だいじょうぶ。今日で…終わりにするから」
「終わりって…っ君は何を__ぅっ 」
それは、自分に言い聞かせるような、必死に自己を肯定しようとする朧げな吐露だった。よく聞いていなければ、その声が震えていたことにすら気づけなかっただろう。帝国は、危ういアメリカの幼さにどうすることもままならず、問い詰めようとしたが。シャツの胸ボタンを開けっぴろげにされた所に滑り込んだ冷ややかな手に、終ぞその言葉を言い切ることはできなかった。
暗く湿っぽい空気が2人の間に広がる。けれど、その空気を生み出したアメリカはすっかり目の色を変えて帝国を見つめていた。
舐め回すように帝国の身体を眺め、緩慢とした動きでシャツのボタンを一つ一つ外してゆく。チラリとばかりしか見えていなかった帝国の肌が徐々に明らかにされて、決して鍛え抜かれたわけではない身体を確かめる度にアメリカはより一層、火照った顔に笑みを増やしていた。
対して、帝国はアメリカを窘めようと口を開くごとに、擽ったく肌を滑る白い指先に甘い吐息を漏らしている。まるで溺れているが如くに身を捩り、自由の無い手首を真っ赤にして、余程これまでの行為が苦痛なのだと思わせる抵抗。それだけ聞けば、アメリカもきっと行き場の無い苦悶の想いに眉根を顰め、歯列を強く噛み締めながらおずおずと帝国を解放したはずだ。けれど、けれども、だとしても。帝国は未だにアメリカの手中で踠いていた。
だって、何故なら。焦ったい快楽が身を焦がす感覚に歪む帝国の顔の、正にそこに。隠しきれない、獣らしい欲情が透けていたからだ。肩で息をしながら、吐息の溢れる口内でギラリと光る犬歯。粘度を持った唾液が、空腹に飢えた時のように唇の両端から垂れている。
「ふーッ…ふーッ……! 」
「…てーこくさん」
いつぞやの、アメリカの恋が目覚めた日。その日叶うことのなかった、『もしも』。記憶よりも体格差は縮まって、服装も、関係性も、立場も変わる中で唯一変わらない、ちゅーしちゃいそうな雰囲気。
数百年の時を隔てて、遂にアメリカの願いは叶った。
想像よりもずっと柔らかい感覚と達成感に蕩けた瞳は被食者そのもので、それを目前にする帝国は発情し切った捕食者だ。互いの柔らかさを確かめる事ばかり望んでいたアメリカは、もっと過激なモノを知らない。
隻腕を帝国の頬へ伸ばして甘いキスを堪能するアメリカの頭を、縛られた両腕を縄のように捕え、逃げられないよう抑えつけた。
驚いたアメリカはまんまとその口を開くと、すかさず帝国の舌がその口内を埋め尽くす。触手のように自在に暴れるそれは、アメリカの上顎を奥から手前にゆぅっくりとなぞっては全身粟立つような快感に身悶えするアメリカを犯していた。腰が引けて、抜け出そうと帝国の腕を剥がすように掴み引くが。胎に響くような電流が脳から足先までを奔けると、すぐに脱力してしまう。
「んぅ…っ!ふ、ふ ぅ゛…ん゛ゥ゛、ン゛…ぅうう゛っ” 」
融けて全てが混ざってしまうような錯覚を覚えるほど、甘くて蕩けるディープキスだった。ほんのり焦げたバターと、いちごの甘さが舌に染み込む。帝国は慣れたように顔色を変えず、ぐずぐずになっていくアメリカを見続けていた。キャパオーバーの快楽に生理的な涙を零し、穴という穴から液体が漏れ出ているアメリカはそうとも知らず、酸欠でふわふわした脳みそを真っ白にしている。
「…ン”…、……ゥ゛…ぅ……..」
今にも死にそうな嗚咽が聞こえるようになると、ようやく2人の唇は離れた。
「Доволен? Мелкий парш.」
帝国の胸に抱かれながら、ありとあらゆる体液を垂れ流しにするアメリカに帝国は更に劣情を抱く。まだ行動に移っていないのは、心の奥底で雀の涙程度の理性が彼を妨げているだけだ。
奥底の内臓が煮え立つような燃える欲。足りないのは油だけ。そうだろう。だってここに水は無い。アメリカの流す液体は、この空間ではオイルである。
現状の帝国はまるで酔っ払い。アメリカは酒。
帝国は止めようとする。自制もできないのに、どうしてか。でも魅力的な赤ワインは、黒光する魅惑の姿で誘い唆す。独特な香りと渋い苦味に、大人だけの特権で。
ワインを嗜み酔い呑まれて溺れるような奴の家には、大人しか居なかった。
「んへへ、てーこくサン…♡ 」
散々酔っ払いが乱したワインの外装は、酷いくらいに汚れていた。唾液に鼻水、乾いた涙の跡。でも笑う姿は艶やかで。酩酊者にはお気に召す旨味である。見惚れたのか酔いどれは動かない。__否。手首が赤くなろうとも構わずに、拘束を解こうとしているのだ。
そんな事実には気が付かないまま、酒…アメリカは、帝国の腕から抜けて2人のズボンを雑に脱がす。脱がしきれなかった帝国のズボンは膝より上にあり、ゴムのはち切れそうな下着がなんとか露わになっていた。ズラせば、勢い良く聳り立つモノがアメリカの腕を叩く。べチンッと下品な音が聞こえると、ベルトの弾け飛ぶ音が空間を劈いた。
「え。それちぎったのか?」
「君のおかげでね」
「イイ雰囲気だったじゃん!?」
「…ねぇ、アメリカ」
「なにさ」
ブスッとした声色で返事をするアメリカは、どこか悲しげに目を伏せる。
「…分かってるよ、ガキに本気になんてなれないよな。それに、こんなことする奴…。ちゃんと、消えるから___ 」
「僕はずっと、君に酷いことをしてたみたいだ」
食い気味に話しを始める帝国の、何を言い出すかと思えば自分に対する怒りや軽蔑はそこに含まれてはいなくて。なんなら、己の過ちを悔いるような物言いに、アメリカは次に用意していた言葉をうっと喉に詰まらせた。
「僕も…君に、黙っていたことがあってね」
自由になった帝国の腕は、今度は優しくアメリカを包み込んで、赤子をあやすように頭を撫でる。
「雪合戦の日のこと、君は覚えてるかな?もう随分と前のことだけど」
勿論、アメリカは覚えていた。鮮明に情景を思い起こし、雪の冷たさと凍てつく風の香りまで、全てを脳内で再現できるぐらいには。
なんたって、その日がアメリカに恋を教えたのだから。原因は、その自覚が無いようだが。
「ありていに言うよ。あの日から僕は…君以外で…….抜けなく、なったんだ」
アメリカを撫でる手が止まる。ちょっとした後ろめたさが今更襲ってきたかのように振る舞う男を、無垢なアメリカは鋭く睨みつけた。
「…は゛?なに、… 今さら俺をバカにしようってのか…?それともずっと、分かってて__ッ”内心俺のこと、ずっと傷つけたいと思ってたのかッ?!」
「ちがうッ…!違うんだっ!…僕は、君にとって頼れる大人だった筈なのに….子供に欲情するなんて。それに、君の気持ちに薄々と気づいていながらも…」
唾を飲み込む音が部屋に鳴る。
「君が勘違いに気が付かないまま僕と付き合って、掴めたはずの普通の幸せを君が享受できないことが何よりも恐ろしかった 」
「……今は?」
「でも君の恋も、僕の恋も。勘違いなんかじゃなかったんだなって…都合が良いよね」
かつて、帝国に対する想いを秘め続けてきた苦悶の日々を、帝国も味わっていたのだと。相手との関係に酷く悩んでいたのだと知って。アメリカはなんだか、全部が馬鹿らしくなった。
「あっははは…!ほんと、都合よすぎ」
「返す言葉もございません… 」
見るからに萎れた帝国の姿を前にして、アメリカは惚れた弱さを自覚する。
ずっと頼れる大人であろうと振る舞う帝国が、鼻を啜って、今にもぐずりそうな声で喋って。 なんだか胸の奥が締め付けられている感覚なのに、不思議にも昂揚感を抱いてしまう。
とく、とく、と脈打つ心臓の拍数が徐々に増していき、じんわりと染み込むような温かいものが、全身を包んでしまうようだった。
「帝国さん」
「__うん」
「帝国さん。帝国さん」
「うん」
アメリカは、全てが夢ではない事を確かめようと、何度も、何度も。事実を咀嚼するように。歯が浮いてしまうぐらい、愛しい名前を繰り返す。その度に帰ってくる返事に、アメリカの
脳は酔って、茹って、綻んで。『てーこくさん』と、4回目のコールをしたが忽ち、2人の唇は重なった。
啄むようなバードキスを、満足するまで味わい続け。互いに見つめ合い、時折瞼を伏せて、感慨に浸る___
早くも堪えたのは帝国からだった。断続的な接吻は変わらず、アメリカのオーバーサイズな半袖Tシャツを引っ張り、アメリカの頬から鎖骨、鎖骨から手の甲へと移ってゆく。じぃっと、情欲に塗れる浅葱色から視線を逸らさずに。
みるみる真っ赤に熟れるアメリカの頬。増える呼吸音。減る静寂。 帝国の口角が怪しげに吊り上がる。
「上も脱いじゃおっか。ほら、バンザーイ 」
「ん…」
大人しく両手を掲げ、服を脱がされる姿はアメリカが最も忌んでいた幼い自分そのもので。それでも、そんな己の姿でさえも劣情を湛えた顔をしてくる帝国を見れば、もはや屁でもない。
肌を優しく擦りながら抜けてゆく服の感覚に身を震わせながら、アメリカは数百年の時を埋める自信を掴み始めていた。
「綺麗な肌だ…。 ふふ、ちょっと食べ過ぎなんじゃないかい?」
「…ぅあ…っすけべ」
歳の割には手入れのされた指先が、迷う事なくアメリカの腹部に伸ばされる。摘めてしまう程に弛んだ腹の脂肪は弾力があり柔らかい。
彼の指は、いやらしくもアメリカの腹を触り続けた。へその穴に指先を突っ込んで、汚いと嘆くアメリカの声を暇な手で塞ぐ。無理やりさは感じられないからこそ、抵抗しきれないアメリカは悔しさと擽ったさに奥歯を噛み締め、時折抑えきれなかった喘ぎが漏れてしまう。
「はぁ…アメリカっ……君さえ良ければ、イイだろうか」
「んあっ…ぁ… ふ、ッ…… 」
巨悪な帝国のモノが、アメリカの孔の表面に擦り付けられた。亀頭の突起が縁をひっかけて、めくれた内側が外気に触れる。その異様な感覚にアメリカは『ンぎッ゛』と、汚濁した声を上げ、腰に添えられた帝国の手を爪が食い込むぐらいに握りしめた。背を丸め、震え。そうする事でしか逃せない快感に、全身を蝕まれるような状況の中。これ以上の快楽と、帝国とようやく一つになれる事実は正にアメリカにとって垂涎ものだった。
重力に従って涎が帝国の胸板に滴る。腰を捕える帝国の隻腕を自身の火照った頬へともっていくと、彼は寂しさにも似た顔をして、こう言った。
__イイよ
「あめりか」
「お腹の奥がさ、は ァ゛…ずっと空っぽみたいで…っ。準備してあるから、頑張ったから…」
__だから、挿れて。
言っている途中で恥ずかしくなったのか、徐々に弱く消え入りそうな声音が、辿々しくもお強請りをした。『可愛い。』帝国は頬だけでなく、瞼の奥がぐっと熱くなっていく気がした。つぐんだ口元が緩む。言いたい事が右へ左へと浮かんでは次の言葉に流される。はくはくと、声も出さずに口を動かしていた。
アメリカの孔を犯したくて今か今かと先走りを垂らす陰茎を、無遠慮にぶち込んですぐにでも腰を振ったくりたい。そんな気持ちに支配されながらも相手は初めてである。自制を効かせ、目の前の食事に飛び掛かりたい本能を抑えつける。
「じッ゛__じゃあ、ぃ゛…挿れるよ……っ゛?」
「はやくきて、…あっ、ぁあ〜 ッ、…きたっ、きたぁ…! ふ、ぅウう…… ♡」
上擦った声で確認を取りながら、遂に待ち望んだ挿入を達成した。
嗚呼、アメリカの体温を直で感じられる。ヒダだらけの恥肉がぎゅうぎゅうとキツくモノを締め付け、蕩けてしまいそうな快感が下半身を伝ってくる。帝国はぼうっとする脳で傷つけないよう慎重に、根本までゆぅっくりとアメリカのアナルに食ませようと優しく腰を押し込んでいった。
その後押しをするように、アメリカは『はやく、はやく』と腰を揺すって完全な挿入を急かす。おかげで半ば、帝国はもう出してしまっていた。粘りけの濃い精子が膣と陰茎に絡みついて、誤魔化すように陰茎を擦り付けるよう動くと、良い所を潰したのか大袈裟に跳ねるアメリカに大量の唾を飲み込んだ。
そうして全てが入り切った頃、圧倒的な満腹感にアメリカは背骨の辺りが熱籠って、反射的に身体を仰け反らせ、足先を丸める 。
2人して、大きな一息を吐いた。風呂上がりのような気の緩み。これまでの悦を思い返して浸る。
それを同時にやったもんだから、『気が合うね』なんてアメリカが言うと。じめっとした部屋に2人分の笑い声が響き渡った。
「てーこくさん、キス…しよ? 」
「うん__おいで」
手を広げ、影を落とすアメリカをそっと抱きしめ。もう一度、深いキスを味わう。
その日は何度も。雪が止もうとも、日が没しようとも。 絶頂の最中にあろうとも、2人は熱いキスを交わした。
end.
コメント
8件
夏休み明け初日から最高のお話をありがとう!!!疲れと憂鬱が全て吹っ飛びました!! アメリカ🇺🇸さんの露帝さんに対する大人になれなさと背伸びしたい気持ちの交差が健気であって、可愛くて、直球に言うと好き!💘💘! 反対に露帝さんはその気がありつつも頑張って堪えているのがより、アメリカさんを大切にしているって感じで凄く好き💖💖 ふたりともずっと幸せであってほしいですね。
あ”ああああああああああああ!!見“るの遅れた“!!!!露帝アメあ"りがとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
どうしようもなく好きです……歳の差が良すぎて、ほんまに…幼きアメさんが可愛すぎて、露帝さんは成熟しててかっこよくて、もう何といえばいいのか…そのまま幸せになっていただきたいものですお二人には…っコメント失礼しましたっ!