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マスクの法則

20 - 第18話:レオの仮面

2025年05月22日

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第18話:レオの仮面

黄昏時の高層ビルの屋上。

都市の喧騒が遠く霞む中、夕日が差し込む空の下――ユイナは、そこにいた。


向かいの縁に立っていたのは、レオ。


少年らしい輪郭に、短い茶髪。

黒のパーカーに白のフード、ラフなジーンズ姿。

感情の波を読む《共鳴型マスク》の使い手だった。


彼のマスクは目元を隠すシンプルな半面型。

そのマスクが、風に揺れていた。


「なぁ、ユイナ。今の君って、誰の“願い”を叶えたいの?」


不意にそう聞かれて、ユイナは言葉に詰まった。


「私は……私自身の……でも、アメトの分も背負ってるし、ヴァロの……」


「そうやって、いろんな顔を背負ってると、さ」


レオはマスクに指をかけた。


「――本当の“自分の願い”が、埋もれるんだよ」


そして、ゆっくりとマスクを外した。


ユイナは、目を見開いた。


レオの素顔は、優しくて、でもどこか――泣きそうだった。


「僕は今日で、“仮面を降りる”。」


風が吹き、彼の手から仮面がふわりと空中に浮かぶ。

仮面の裏側には、《感情感知装置》が、静かに破損していた。


「この仮面を使ってるとね。

“他人の感情”ばっかり見えて、自分が何を思ってるか、わからなくなる」


レオは数歩、ユイナに近づいた。


「君が“願いを叶えたい”って思うなら――

“誰かのため”とか“世界のため”とかじゃなくて、

ちゃんと“自分の言葉”で言いなよ。仮面の中じゃなくて、“君の声”で」


その言葉は、やさしくて、切実だった。


そのとき、警告音が鳴る。


《レッドピースの反応:近距離接近中》


ビルの裏から黒い霧が立ち上がる。

裏回収者の一団が接近してくるのを、レオは見ても動じない。


「そいつらは僕が引き受ける。……ユイナは進んで」


「待って、それじゃ……!」


「いいんだ。僕は、“自分のため”にここに残るから」


そしてレオは、仮面なしで戦場に飛び込んだ。


身軽な身体で敵の懐に飛び込み、素手で相手のマスクの装着角を外す。

仮面を失ったぶん、彼の動きは“読み合い”に特化していた。


“感じ取る”のではなく、“信じる”ことで動く――仮面を超えた戦い。


ユイナはしばらくその光景を見ていたが、やがて背を向けた。


夕日が、彼女のマントと髪を染めていた。


(……私の、願いは……)


誰かの代わりじゃない。

世界の正義でもない。

じゃあ、何を願いたい?


胸の奥で、その問いがはっきりと息をしはじめていた。

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