新しいお話。
大森 元貴
世界的に有名なシンガーソングライター
「もっくん」というあだ名で呼ばれている
名前も知らない金髪のファンに恋している
若井 滉斗
もっくんの古参オタク
もっくんの全てのライブに参加している
もっくんに貢ぐためバイトを掛け持ちしている
もし他の方が似たような作品を上げていたら
申し訳ないです。
#mtp
#センシティブ
#nmmn
ご本人様の迷惑にならないようお願いします。
mtk side
僕が登場した瞬間、
歓声が沸き起こる。
僕は、シンガーソングライターとして、
今、世界中で人気になっている。
僕がここまでやってきたのには、
初恋の人が関係している。
あ、いた。
アリーナ席の二列目。
後ろの人が見えるように、
控えめにペンライトを振りつつ、
僕のライブを楽しんでくれている。
僕が初ライブをしたのは、
人が数える程度しかいない
イベントのライブ。
売れないアイドル達のファンしかおらず、
そのアイドルが退場して僕が現れた瞬間、
ほとんどの人が一斉にスマホをいじり始めた。
僕が泣きそうになっていると、
一人だけ大きな拍手で迎えてくれた。
それが彼だった。
その拍手に釣られて、 複数人も手を叩く。
ギターを握りしめて、
人前で初めて演奏をした。
その間も彼は、
歌詞もわからない僕の歌を
精一杯楽しんでくれた。
それが全ての始まりだった。
その後も何度か
そのステージで演奏をしたが、
彼はいつも来てくれていた。
その人の推しがここで
ライブをしており、ついでに僕の演奏を
聞いてくれていただけかもしれないが、
それでも僕はたまらなく嬉しかった。
ライブ終わりに、
何度か彼に声をかけようかと思ったが、
優しい彼に僕は不釣り合いだろうと思い、
一度も話したことはなかった。
その後、大手事務所に
たまたまスカウトされ、
僕は有名になれる チャンスを掴んだ。
その有名になる目的は、
多くの人に自分の曲を
聴いてもらいたいからではなく、
彼の隣に並べるような人間に
なりたかったからだった。
僕が演奏するステージは
だんだんと大きくなっていったが、
いつも彼は来てくれていた。
ファンクラブに入ってくれて いるのだろう、
毎回アリーナ席を確保してくれていて
嬉しかった。
だから、 毎回彼を見つけると、
目を合わせて微笑んだり、
手を振ったりした。
その度に彼は 反応を返してくれるのだが、
その周りの、 自分にしてくれたのだと
勘違いした奴らが、
大きく手を振ってくる。
正直言って、 鬱陶しい。
僕は、彼のために
有名になりたいだけで、
その他のファンは、 心底どうでもよかった。
そんな事を繰り返しているうちに、
いつしか海外で
ライブをするようになっていた。
もう、いいのかな?
彼の隣に並んでも。
いつものように ライブを終わらせて、
スタッフの隙を見て、 会場を抜け出す。
外は僕のファンで 混雑していた。
あの人は……?
人混みの間を進むと、
見慣れた金髪の人が。
いた……!
今、彼と同じ空気を吸っているという
嬉しさだけで心が満たされた。
近づくと、
思っていたよりも背が高くて、
不覚にもときめいてしまった。
なんて声をかけよう……
「あっ、あの!」
彼の服を掴んで呼びかけた。
「はい?」
爽やかな声。
「え、えと、 気持ち悪くなってしまって……
水とか、買ってきて くれませんか……?」
「えっ、大丈夫ですか……?
人混みですもんね、じゃあ、」
きゅっと手を握られる。
「っ!?!?」
「あっちにベンチがあるはずなので、
そこまで行きましょう」
ぐいぐいと引っ張られ、
人が少ない場所のベンチに
座らされた。
「わ、顔真っ赤ですよ……
熱あるんじゃ……?」
「だっ、大丈夫です!」
「本当ですか?
じゃあ、水買ってきますね」
マスクを更に上げ、
帽子も目深に被る。
……手、おっきかったな……
心臓の音がうるさい。
しばらくして、
彼が戻ってきた。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
彼に見えないように
マスクを外し、
緊張でカラカラの喉を潤した。
「体調はどうですか?」
「えっと、少しマシには なりました……」
「ほんとですか?よかった」
「ほんとに、すみません……」
「いえいえ」
どうしよう……
ここからどうしよう……
「あっ、あ、あの」
「はい」
「もしよかったらお礼がしたいので、
れっ、連絡先交換しても
いいですか……!?」
「えぇっ、いやいや 悪いですよ。
俺、水を買ってきただけだし、」
「おっ、お願いします……!」
「……わかりました」
「ほんとですか!?よかった…!」
ポケットからスマホを取り出す。
彼が反応した。
「あれっ……」
「……?」
「もしかしてそれ、もっくんと同じ
スマホカバーですか?」
「えっ、あっ、はい、そうです」
そうだった、スマホのこと
忘れてた……!
途端に彼が笑顔になる。
「へぇ!いいですね!
実は俺も、SNSで見て、
色違いの買ったんですよ!」
彼が笑顔で青いスマホを取り出した。
「えっ……」
「やっぱり、推しと私物は
揃えたいですよね!」
……………………
……お揃い……
「……あれ、また顔
赤いですよ……?」
「っ!なんでもないです!
あっ、これ僕のQRコードです!」
「あ、はい」
ピコンと音が鳴る。
「試しに送ってみますね」
彼から僕のスタンプが
送られてくる。
「あ……」
「あ、スタンプですか?
このもっくん可愛いですよね!」
「あ……はぃ……」
すごい……
「結構、本格的に
ファンなんですね……」
「はい!
……あ、もしかして
引いちゃいました……?」
「えっ!いやいやそんな!
むしろ……」
うれしい……
「……?」
「なぁっ!なんでもないです!
また後で送りますね!!」
「あっ、体は大丈夫なんですか?
もし良ければ、駅まで送りますよ」
「大、丈夫です!はい!では!」
「あっ」
これ以上彼と一緒にいると、
頭がおかしくなってしまいそうだった。
会場に戻ると、
スタッフから心配の声が
飛び交ったが、
どれも耳に入らなかった。
ダッシュでトイレの個室に入り、
スマホを取り出した。
……連絡先……
交換、しちゃった……
スマホを抱きしめて、
幸せを噛み締める。
ふと、彼のプロフィール画面を
開いた。
アイコンの下には、
「滉斗」と書いてあった。
いやー、
こういうのいいですよね。
自分はめっちゃ好きです。
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コメント
2件
えぇやばい... この話好きすぎる!! どんな展開になるんだろう、? ワクワクしてます♪