テラーノベル
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世界が、ひどく鮮明に映る。
あの意識を混濁させる飢餓感が、今は薄らいでいた。
手っ取り早く鍵を見つけ、モウの支配者である彼女の元へ急ぐ。
この時間軸において、私の物語は終盤を迎えている。
今から引き返すことは不可能に近い。
過去に戻るには一度死ぬか、レディを倒して脱出するか。
それでも、ペイルシティに行けるかどうかはわからない。
混濁した記憶では、『どんな状況で』『どこまで戻れるのか』を見つけることができなかった。
それを調べるためにも、一度戻ってみる必要がある。
「……ねぇ。」
動かす足を止めないまま、僅かに後ろを振り返る。
「いつまでついてくるの?」
そこには、先ほどのノーム。
あの後から、まだハグもしていないのに勝手についてくるのだ。
最初は気にせずに進んでいたのだが、一向に離れる気配がない。
大抵のノームはついてこられずに逸れてしまうのに、なぜか食らいついてくる。
「これ以上ついてきたら食べるよ。」
軽く脅しをかけると、ズイッと目の前に肉の塊を差し出される。
等身大のソーセージを受け取った瞬間、全身の毛が逆立った。
「……これは、ダメッ」
モウの惨状を目にしてきたため、この肉の材料が何かは大体予想がつく。
レディを食べた身では今更だが、気分がいいものではない。
ソーセージを押し返し、鳥肌が立った腕を擦る。
「人とわかっているものより、ノームの方がマシ。」
そう呟くと、ノームの視線がソーセージに吸い込まれる。
数秒の沈黙。
ノームは急にソーセージを投げ捨てた。
コイツ、喋らないのに動きがうるさい。
ソーセージを前に悍ましいものを見る目で後ずさるノーム。
その姿は、こっちの言葉を理解しているんじゃないかと思わせる。
「まぁ、どっちでもいいか。」
いつのまにか歩みを止めていたことに気づき、再び前を向く。
レディの部屋はもうすぐだ。
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自分の顔ほどの大きさの南京錠に鍵を差し込む。
これで何度目だろう?
南京錠はすぐに外れ、鈍い音を立てて床に転がる。
この扉の奥にレディがいる。
無意識に、自分の薄い腹を抑えた。
その奥に眠る、底知れない空腹感を感じ取る。
ノームを食べなかった今の私は万全とは言えない。
先程から感じる妙な倦怠感が『私はレディに負ける』という漠然とした未来を捉えさせた。
ふと、隣から視線を感じる。
扉の前で固まった私をノームが見上げていた。
扉を潜れば、コイツも殺されてしまう。
……まだ、ハグをしていなかったことを思い出し、そっと抱き寄せる。
「これ以上はついてこないで。……いい?」
せっかく私から逃げられたんだ。
もっと命を大切にした方がいい。
温もりとは程遠い、ひんやりとした体温を静かに地面に下ろす。
重厚な扉に体重をかける。
その奥にはすっかり見慣れた闇が広がっている。
「バイバイ。」
ノームに背を向け、扉を閉めた。
#続くかは知らん☆
ただの僕
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初
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コメント
1件
第2話、読み終わりました。ノームにソーセージを差し出された場面、あれで「この肉の材料が何か分かってる」って察するところが、この世界の残酷さを一瞬で伝えてきてグッときました。ノームが投げ捨てたのも、言葉を理解してるように見えるのも気になる。鍵を開けてレディの部屋へ向かう決意の重さと、ノームにハグをして別れを告げる優しさのギャップがすごく効いてると思います。続き、気になります。