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7月30日。
夏休みまで、あと少し。
教室の中は、いつもより少しだけ浮かれていた。
「明日、夏祭り行く人ー?」
誰かがそう言った瞬間、教室のあちこちから声が上がる。
「行く行く!」
「花火見たい!」
「今年、屋台多いらしいよ」
そんな会話を聞きながら、俺は窓の外を見る。
明日。
7月31日。
夏祭りの日。
毎年楽しみにしている行事。
今年も、いつもと同じように過ぎていく。
……そう思っていた。
🩷「柔太朗」
隣から声がする。
振り向くと、勇斗が俺の顔を覗き込んでいた。
🤍「何」
🩷「いや、なんか遠く見てたから」
🤍「考え事」
🩷「珍しい」
🤍「そう?」
🩷「うん。柔太朗って、いつも俺のこと見てるから」
🤍「……何それ」
思わず笑う。
勇斗は少し慌てたように手を振った。
🩷「いや、変な意味じゃなくて!」
🤍「分かってる」
勇斗は安心したように笑った。
こういうところが、勇斗らしい。
明るくて、素直で。
少しだけ不器用。
🩷「でもさ」
🤍「ん?」
🩷「明日楽しみだな」
そう言った勇斗の顔は、本当に嬉しそうだった。
だから俺も自然と笑ってしまう。
🤍「子供みたい」
🩷「いいじゃん。夏祭りだぞ?」
🤍「高校生なのに」
🩷「高校生だからだよ」
勇斗は笑った。
その笑顔を見ると、不思議と安心する。
昔からそうだった。
勇斗が楽しそうなら、それだけで俺も嬉しかった。
放課後。
俺たちはいつものように一緒に帰る。
でも今日は、少しだけ勇斗の様子がおかしかった。
歩く速度がいつもより早かったり、急に黙ったり。
🤍「はやちゃん」
🩷「ん?」
🤍「何かあった?」
勇斗は目を丸くする。
🩷「え?」
🤍「さっきから落ち着かないから」
🩷「……分かるの?」
🤍「分かるよ」
長い付き合いだから。
勇斗が無理して笑う時も。
何か考えている時も。
なんとなく分かる。
勇斗は少しだけ困ったように笑った。
🩷「柔太朗って、そういうところすごいよな」
🤍「何が」
🩷「俺が言わなくても気付くところ」
🤍「……別に」
そう言うと、勇斗は優しく笑った。
🩷「明日さ」
🤍「うん」
🩷「ちゃんと楽しもうな」
🤍「もちろん」
すぐに答えた。
当たり前だったから。
勇斗といる時間を楽しめなかったことなんて、一度もない。
🩷「最近、忙しかったじゃん」
勇斗が続ける。
🩷「だから明日は、何も考えずに遊びたい」
🤍「分かった」
俺がそう返すと、勇斗は嬉しそうに笑った。
その顔を見て、胸の奥が少しだけ温かくなった。
帰り道。
川沿いに差し掛かったところで、勇斗が突然立ち止まった。
🤍「どうした?」
🩷「いや……」
勇斗は少し迷ったように口を開く。
🩷「柔太朗ってさ」
🤍「ん?」
🩷「俺と一緒にいて楽しい?」
一瞬、意味が分からなかった。
🤍「……何それ」
🩷「いや、なんとなく聞きたくなった」
勇斗は笑っていた。
でも、少しだけ不安そうにも見えた。
だから、俺は迷わず答える。
🤍「楽しいよ」
🩷「……」
🤍「はやちゃんといる時間、好きだよ」
言ってから、少しだけ恥ずかしくなる。
でも嘘じゃない。
勇斗といる時間は、俺にとって大切なものだった。
勇斗は目を細めて笑った。
🩷「そっか」
🤍「うん」
🩷「よかった」
その笑顔を見て、俺は思った。
この時間がずっと続けばいいのに。
夜。
ベッドに横になりながら、明日のことを考える。
夏祭り。
花火。
勇斗と行く。
それだけなのに、少し特別に感じた。
スマホを見ると、勇斗からメッセージが来ていた。
🩷『明日寝坊すんなよ』
思わず笑う。
🤍『はやちゃんこそ』
すぐに返信が来る。
🩷『俺は大丈夫!』
🤍『絶対嘘』
🩷『ひどい』
くだらないやり取り。
いつも通りの会話。
なのに。
今日はなぜか、この時間を大切にしたいと思った。
スマホを置いて、目を閉じる。
7月31日。
明日は夏祭り。
一番大きな花火が上がる瞬間に、好きな人へ想いを伝えると恋が叶う。
そんな噂。
俺には関係ないと思っていた。
好きな人なんていない。
そう思っていた。
でも。
明日の花火を、勇斗と見られることが嬉しかった。
それだけだった。
その時の俺は、まだ気付いていなかった。
自分が本当に欲しかったものが何なのか。
そして。
明日という日が、何度も俺の前に戻ってくることになるなんて。
#M!LK
はる☻
1,021
ゆゆ

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コメント
1件
うわ、第2話も良かった……!夏祭り前の浮かれた空気と、勇斗のちょっとした不安がすごく伝わってきた。「柔太朗といる時間好きだよ」って言うシーン、なんかグッときたな。最後の「何度も戻ってくる」って伏線っぽいのも気になる!続きが待ち遠しいわ🔥