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ふわふわとした頭の中で返事にもならないような声を出すのが精一杯だった庵には、“証明”が何を指すか考える余裕すらなかった。
「……やだ……やめ、て……」
涙目でか細く訴える庵の声とその顔が、司狼の庵に対する気持ちや今まで封じてきた情愛を一気に解き放った。 襟首まで留めたワイシャツのボタンを引きちぎって露わになった、透き通る白い肌に自らの所有物だと言わんばかりに何度も痕をつける。
庵も自分の見えない場所まで少しずつ彼色に染まる感覚に、今まで感じたことの無い幸福感を覚えた。時折こちらに目線を合わせられ、自らの体を隅々まで五感で知られていく恥じらいが“愛されている”実感として脳に刷り込まれる事で、司狼が腕を離したあとも抵抗するどころか、自分の欲しいところに彼の頭を誘導していた。
「ぼ、くばっかり……恥ずかしいよ……」 「俺も脱げってか?……いいぜ、どうせ温まってきたところだ」
シャツを脱ぎながら司狼が唐突にひらめいた。
「なぁ、ビール飲む?」
「ば、馬鹿か……僕はまだ飲めないんだぞ……」
「誕生日ぐらいかてぇこと言うなよ!ま、そういう所がいいんだけどな。」
そう言いながら冷蔵庫からサイダーを出し、飲み始めた。炭酸が苦手な庵は疲れ果てたように息を荒らげていた。
「ぼくにも……みずとってきてよ……」 「え、やだ〜」
司狼はニヤリと笑うと少し多めにサイダーを口に含み、起き上がろうとしていた庵を強引に押し倒しながら口移しで飲ませた。炭酸の刺激と絡みつく舌の激しさで気づけば庵はまた涙目になって噎せていた。
「ゲホッ……はぁ……はぁ……さすがに意地わ……
言い終わる前に唇を塞がれる。息継ぎの度に自分と司狼の間に架かる糸の橋に2人は興奮を隠せなかった。
「ぷはっ……はぁ……どうよ、誕生日……。」
「どうって……わかん、ない……」
「へぇ〜?……まあまだ1時にもなってねぇし、誕生日はこれからだからなぁ?」
この時点で司狼は“最後”までする、という決意を持っていた。この日のために準備してきた数々の品をベッドとマットの隙間から取り出した。
「そろそろ……もういいんじゃねーか……?」
「つ、ぎ……?」
本当はこうなることも予想していないわけではなかったが、経験の無い庵はせいぜいキスで終わると思っていた。しかし実際に用意されたものを見るに、そんな甘いものでは済まないと分かった。
「それって……保健の授業の……」
「そ、ゴム。庵は見んのも初めてか」
遊び慣れていた司狼と違い、そういった事に縁のなかった庵は初めての実物に怯えていた。
「別に今日しようとかじゃねーよ。出しただけ。それにほら、他にも色々あるだろ?」
確かにひとつの物に目が行き過ぎたが、他にも様々な道具がベッドの隙間に隠されていた。
自分の知らない道具ばかりなはずなのに、庵の体は今後起こるであろう数々の行為を想像して迸っていた。「なに興奮してんだよ。……意外と変態なんだな。」
普段なら怒って言い返す所だが、その言い方と耳元で囁く吐息混じりの声があまりに官能的で“雄”らしかったのか、ただ敏感になった耳に当たる吐息に反応して喘ぐことしか出来なかった。
その反応に司狼の加虐心はさらに煽られた。頭の中に“虐めたい”という思いが強まり、気づいた頃にはズボンを脱がし、庵の内股に噛み跡をつけていた。顔を背け、必死に声を押し殺すその姿は今まで抱いたどの女性よりも美しく、また初めての快楽に身も心も溺れて虚ろながらに自分を求めてくる庵に唆られていた。
「足キレイだよな……白くて柔らかくて、そんで感度もいい」
「やめっ……キスマつけながら……んっ、しゃべるな……」
やっぱりダメだ。限界。女性経験豊富な司狼がかつて一度も言ったことの無い言葉が自然と口をついた。
「悪ぃ、俺我慢できねぇ」
「え、嘘……?ほんとに……しちゃう、の……?」
「庵が嫌って言うならやめる。いいならする。」
自分で話していながら本当に余裕が無いことに気づいた。こんなにムキになった事が無かった司狼は、自分にとってどれほど庵の存在が大きく、また愛しい存在であるかを本能が証明しているようで誇らしいとすら思えた。 時計はすでに1時に差し掛かっていた。辺りは静まり返り、2人の部屋には互いの呼吸と心音が響いているのみであった。
「……いいけど、お願いがある」
しばらくの後、ゆっくりと庵が答えた。