テラーノベル
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夜が明けたあとの静かな街。
〇〇は、小さな部屋の窓辺に佇み、昨夜を思い出していた。
━━━ はじまったばかりのおわり。
ふたりの時間は幸せだったはずなのに、今はもう戻れない夢にしか見えない。
まだ漂っている香り、あの人の仕草、小さなぬくもり。全てが夢だったのかもしれない。
目が熱くなって、固まったような涙がこぼれそうになる。
〇〇はナルニアを想いながら、ただ尽くしてきた日々を思い出す。
「….わかんないでしょ、わかりたくもないんでしょ」
どれだけ愛して、どれだけ伝えようとしたか。もうその声は届かない。
部屋に置き忘れたふたりの約束が、頭を巡る。
「いつだって傍にいてあげる」
「”会いたい”っていえば会いに行く」
そんな約束だけを置いて、
「どこに出掛けたの、」
その言葉だけが、形にならないまま残されていた。
なのに、今となってはいつでも会えるはずのあの人が、もういない
君以外の誰かを好きになるとか、ない
そう叫びたくなるくらい、〇〇の想いはナルニアだけを追っていて。
あの日のぬくもりを、どうしても忘れられなくて。
「….治してよ、君の”好き”の後遺症」
そう壊れそうな声で呟いてしまう。
傷を癒せるのはあの人の手だけなんじゃないかと、それだけが胸の中で正しく響いた。
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