レッドドラゴンは倒された。苦労した相手がまさか簡単に倒されるとは思わなかった。奴は倒した後フードをかぶり直し、急いで俺様のもとに来て回復魔法をかけた。
魔法を使ったから魔法使いと思ったが僧侶の力まで使えるとは…何者だこいつは
「 足動く…」
「…動く!!」
折れたはずの足が今では動くことができる。軽く歩いてみたり曲げてみたが異常はない。僧侶は簡単になれるものではない…できたとしても初級の回復までだ。初級の回復ではかすり傷程度の軽い怪我しか治らない。骨折を治すのは上級ぐらい…
「…目見える」
「…あぁ」
見える。先程まで左目は見えなくなっていた。
「目は思ったより傷が深かった…傷跡は消すことができない」
「傷…」
奴は鞄から鏡を出し見せた。その鏡に写った人は左目に傷跡があった。斬られた後がはっきりと…
「…これはこれでいいんじゃねぇか」
「…!怒らないの…」
奴は驚いたように俺様を見た。
「このくらいの傷が俺様には必要だ」
「…必要」
「舐められねぇようにしねぇとな」
「今までの奴らは…傷跡が残ったことに文句を言ってた」
「それは傷を付けたやつが悪いだろう…お前は何も悪くない」
「そう」
今奴がどんな顔をしているのかはフードで見えない。だけど、驚きと安心さを感じる。こうすると…こいつはその年にあったガキに見える。俺様よりも年下のガキ…ガキらしくていい…
「ありがとな…俺様を助けてくれて」
頭を撫でながら言った。正直、手を払われると思ったがそのまま
「…うん」
と答えた。嫌じゃないならよかった。
「さぁ…行こうか」
「…行こう」
とその前に
「忘れかけていたが…アレどうする」
「…ドラゴンの解体」
俺達は忘れていたが倒したからには解体もしくは燃やしておかないと報酬はでない。何より、死体に魔物が集まる。
「あれの解体俺様も手伝う」
「手伝う?…全部貰うんじゃないの」
意味が分からないって顔をしている。でも、その考えは俺様にとっては当たり前だ。
「あれはお前が倒しただろう…手伝うのは治療の礼だ」
「なぜ…自分自身に不都合な事をするのかわからない」
「これが俺様だからだよ。それくらいの感謝があるんだよ」
「…………」
「…それにこういうのは黙って受け取るもんだぜ」
「…わかった」
「俺様は…もうドラゴン討伐なんて二度としたくないからな」
理解はしていないようだが、納得したようだ。
その後、二人でレッドドラゴンの解体を行った。肉…鱗…爪など一つ一つが高く売れる。少しでも傷があると価値は下がってしまう。丁寧にやるのが重要だ。アイツは、解体作業に慣れているのかスラスラと解体していった。だからといって、ドラゴン種類は巨大な体を持つので解体には結構な時間がかかった。気がつけば、夕方になっていた。後はこの大荷物を運ぶだけだ…
「…そう言えばお前はなんで助けに来てくれたんだ」
「別にお前を助けに来たわけではない」
そうなのか…注意した上で心配でついてきたのだとばかり思ってしまった。
「忠告した上でお前が行ったのはお前自身が決めたことだ」
「じゃあ、何しに来たんだ」
「ドラゴンは昔から宝を集める習性がある…その一つが欲しくて来たまで」
「そうか…」
宝…
「宝!!」
「何度も言わせるな」
宝があるなら今回の出費なんとかなるんじゃねぇか。ドラゴン自体が高く売れることを知っているが宝を集める習慣は知らねぇ
「その宝ってどこにあるんだ」
「…ドラゴンの巣」
巣!!卵とかならピンとくるが…宝とは
「…じゃあ」
「おい待て…俺様も行く」
「…勝手にしろ」
面倒くさそうな顔をして答えた。それでも俺様にとっては大事だ。売れば資金にもなる宝…金の為なら何だってする
先ほどの戦いで巣はどこかへ飛ばされてしまった。アイツの後を追って行くと戦った場所から少し離れた場所に巣はあった。巣は見たところ壊れてはなさそうだ。これなら中身も期待できる。
それでは、ハロー
「…なんだコレ」
中にあったのは魔導書…まぁこれは価値はあると思う。…が古い魔導具に骨董品などほとんどが壊れている。もしかしたら…コレクターに売れば小遣い程度にはなるかもしれないが…タカラか…
「…何」
「価値あるか…これ」
「ムッ…大いにある。私にとっては宝箱よ」
フードをかぶっていて顔が見えなくても声で不満そうに言っているのがわかる。俺様にとってはガラクタだがこいつにとっての宝か…いいなその考え…
「全部持っていくのか」
「いる分だけ持っていく」
そう言いながら、手当たり次第かき集めている。
「…この魔導書もらっていいか」
「…勝手にすれば」
俺様自身、魔導書に興味はないが一応魔法を覚えておこうと思う。今回の戦いでは、魔法での戦いが有利だとわかった。これから先、魔法を使う事があるかもしれない。一応、魔力は一般人並みにはある。簡単な初級魔法なら覚えれるかもしれない。
「…目標が増えたな」
魔法を覚える。できるかわからんがまぁなんとかなるだろうな
「…終わったか 」
「うん」
「帰ろう」
俺様達はその後山を下り村へと帰った。村長達も無事に帰ったことを喜んでいた。レッドドラゴンの首を見せ無事に終わったことを知らせた。村長も本当に倒せるとは思ってもいなかったらしい。望み通りの報酬を払うことを言った。俺様はその金を
「報酬の金だ」
アイツに渡した。村長達はそれを見て驚いていた。
「このレッドドラゴンを倒したのはコイツだ。俺様は手も足も出なかったぜ」
俺様ははっきりと言った。村長達は驚いたようにアイツを見た。まさか、こんなガキが自分の何倍も大きなレッドドラゴンを倒せるとは夢にも思わなかっただろう。
「ありがとう」
「ありがとうね」
「助かったよ」
皆がアイツを囲み礼を言った。アイツを困ったように恥ずかしそうにしていた。不器用なやつなんだとわかった。
「…多すぎる」
「これは正当な対価だ」
アイツは嫌がるように困るが俺様は報酬を押し付けるように渡した。
「…半分はお前にやる」
「何バカなこと言ってやがるこれはお前のだ」
「お前…今回の出費もあるはず。私はこんなにいらない」
中から数枚取り出し俺様の頭に落としてきた。
「お前は欲がないな…」
「…私が望むのは金じゃない」
金以外に望むものがあるのか。金があれば解決すると俺様は思うが…
「これは私にしか解決できない欲…」
「ふぅん…」
レッドドラゴンを倒したことで村ではその日宴が行われた。俺様も飯を食いまくった。アイツは…その時間見当たらなかった。どうやら宿に戻ったらしい…
「ロア本当にありがとね」
「無事でよかった」
いろんな奴にそう言われた。俺様も無事に帰れてよかった。やっぱり…冒険者より商人として生きたい。なら…すべき事は一つ…
俺様は…すぐに宿の人や村長に話し家に戻った。
その日の部屋は広々としていた。その部屋に一人考えて過ごした。長いようで短いような時間を。