テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「おい、長岡、起きろ」
いつの間にか眠っていた努は梶に起こされて集会所を出るとすっかり陽が昇っていた。梶に聞くと時間はもう7時を回っているらしい。
夜に消えた村人の姿が所々に見える。やはり陽が昇っている間だけは村人の姿が見えるようだ。
「不思議ですね」
つぶやく様に梶に言った。
「昨日いくつかの家に傷をつけてきたが、さっき確認したら全部消えていた」
「え? そうなんですか?」
「長岡、お前はその理由を考えろ」
「そんな無茶な……」
「それと……島が死んだ。死体は村人が持っていった」
確かに起きた時には島の死体はなくなっていた。死体をどこに持っていってどうしたのかは気になったけど誰に聞くことも出来なかった。
ちぃこと安田が何やら楽しそうに話しているだけで、梶も沢村も無言でスマホをいじっていた。
しばらく待っていると親分とミサと木村が集会所にやってきた。親分は不機嫌そうだが特に文句は言わずに囲炉裏の側を陣取っている。
それからすぐに少年二人が朝食を持ってやってきた。米をこねた餅のようなものと山菜が中心のおかず。あとはお茶と何か赤黒いものを固めたものだ。
「この赤黒い塊はなに?」
努はセイジに訊いた。好青年の方だ。
「動物の血を固めたものです」
「うへえ」
血まみれの島を思い出して思わず顔を歪める。それでもせっかく出されたので口に含んでみた。血の塊は見た目通り鉄臭くてまずかったが吐きそうになりながらも温いお茶でなんとか流し込んだ。
「ここではほとんど塩が手に入らないですから」
セイジが努の様子を見て言った。外と隔離されて一番困っているのは塩だった。何百年も隔離されたこの場所では塩は貴重品で、森の動物や川の魚から出来るだけ塩分などの栄養素を手に入れている。セイジは10代とは思えないしっかりとした口調でそう説明した。
調理や穫れる食材で工夫しているのか出された朝食は薄味だが無味無臭ではなかった。美味しいとはいえないが血の塊以外はまずくもなかった。
親分はずっと不機嫌そうだったがブツブツ言うだけで大人しいものだった。食事は餅を一つ食べただけで後はタバコを吸っていた。
子分たちは血の塊以外は全部食べていた。驚いたことにミサとちぃこは血の塊もちゃんと食べていた。そして……。
「梶さんも、とうとう食べましたね」
努は小声で話しかけた。ずっと村のものを口にしていなかった梶がちゃんと全部食べていたからだ。
「食事は関係なさそうだからな」
「今日はどうしますか?」
「あの寺の書物を調べるしかないな」
二人は朝食を終えると小高い丘にあるお堂にやってきた。
#怪異
イキリ火の玉
946
コメント
1件
第21話読みました!朝の雰囲気がひたひたと不気味でいいですね。陽が昇ってる間だけ村人が見えるって仕組み、昼と夜で世界が切り替わる感じがぞっとします。島さんの死体を村人が持っていったのも気になるし、血の塊を平気で食べるミサさんとちぃこさんの図が一番怖かったです…。梶さんがやっと食事を口にしたのも意味ありげで、寺の書物で何がわかるのか続きが気になります!