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薄暗いアジト。
ソファに腰掛けたiTrappedは腕を組み、氷の王冠から静かな冷気を漂わせていた。
その隣ではチャンスが退屈そうに銀貨を指で弾いている。
「ねぇチャンス、次は君の大好きな高級ジェラートを賭けて――」
その瞬間だった。
「――捕まえた。」
「……は?」
両手利きの器用な腕が素早く伸びる。
ぐい、と腰を抱き寄せられたiTrappedは、一瞬だけ思考が止まった。
「ちょ、何を――」
「弱点調査。」
「そんな調査は存在しな――」
チャンスの指先が、脇腹へ。
「ひゃっ!」
一撃だった。
「……!」
もう一度。
「や、やめ――っ!」
カタカタカタッ。
まるでピアノを弾くような正確さ。
「ははっ! そこか!」
「違う! 違うから離せ!」
黄色い髪を振り乱しながら必死にもがくiTrapped。
氷の王冠がカタカタと揺れ、冷気が部屋中へ吹き荒れる。
「チャンス!」
「降参?」
「するわけあるか!」
「じゃあ続行。」
「やめろォ!」
その時だった。
ブルルルル……
テーブルの上でスマートフォンが震えた。
画面には一行。
【ドン・ソネリーノ】
「おっと、カジノのオーナーからだ」
「出ろ!早く出ろバカ、離せっ!」
チャンスは笑いながら片手で通話ボタンを押す。
しかも。
スピーカー。
「おい待――」
『……もしもし、チャンス。』
低く重い声。
裏社会を牛耳る男。
ドン・ソネリーノ――マフィオソ。
『聞こえているな。』
「聞こえてるよ。」
『例の件だ。』
マフィオソは淡々と続ける。
『お前が持ち去った”あれ”について話が――』
その瞬間。
「あ、んっ……! や、め……奥は、駄目、だって……っ!」
iTrappedの悲鳴がアジトいっぱいに響く。
どう聴いても完全に、
「最中」にしか聞こえない声だった。
『…………』
沈黙。
「チャンス、その手を、抜け、あ、はぁっ……!」
「無理。」
「無理、 じゃ、な…いっ!」
『…………』
受話器の向こうが静まり返る。
マフィオソは数秒間、本当に何も言わなかった。
やがて。
『……誰だ。』
低い声だった。
「俺の、駒……じゃなくて、同居人……っ、んんっ!っ、あははっ……! だからやめろって……!」
『…………』
また沈黙。
マフィオソの脳内で、何かが盛大に誤変換された。
『……そうか。』
「違う。」
『そういう時間だったか。』
「違う!」
『私にも礼儀というものはある。』
「話を聞け!」
チャンスは笑いを堪えながら答える。
「ドン、悪いね。今ちょっと手が離せなくて。」
「離してないのお前だろ!」
『……若いな。』
「違う!」
『私は八百長は好む。』
一拍。
『だが、人の私生活に割り込む趣味はない。』
「だから違――」
『……出直す。』
「あ、待てソネリーノ! 切るな、本当に誤解だ、俺はただ—」
『以上だ。』
ツー……
ツー……
冷酷なはずのドンは。
紳士的に通話を切った。
「切れたじゃん。じゃ、ゲームの続きね」
「チャンス……っ、お前」
「マジで一回Banlandsに叩き落としてやるからなァァァ!!」
アジトには、ギャンブラーの楽しげな笑い声がいつまでも響いていた。
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ゆ♨️
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