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【生命維持活動】
「はぁ、これからどうすればいいんだ」
男はため息をついた。
彼は仕事をクビにされ、職を失ってしまったのだ。
「俺は何をやってもダメダメだ、次の仕事に就く事すらも難しい、いっそのこと、」
男が冗談でも無いことを考えていた時。
「すみません、何かお困りの様ですか?」
スーツ姿の男が話しかけて来た。
「いえ、私事なので、話す事はありません」
「そんなこと仰らずに、何か力になれるかも知れません」
確かに、このスーツ姿の男が会社を企業している人かもしれない、相談する事で次の道が開けるかもしれない。
「わかりました、実は今日会社をクビになってしまったんです、今後どうすればいいのか、不安で」
スーツ姿の男は頷いた。
「なるほど、それは大変でしたね、もし良かったら私の元で働いてみませんか?」
「ほんとですか!?ありがたいですけど、一体どんな作業何ですか?」
「1つの部屋に入ってもらって1人で部屋にある大きいハンドルを回す作業です」
「ハンドルを回すだけ?」
「はい、かなりきついと思うので回したぶんお金を支払います」
「なるほど、それは回してどんな意味があるのですか?」
「そうですね、回す事で対象者の人の命を維持する事ができるのです、言わば人助けです」
「ん、となるともし僕がハンドルを回すのを止めてしまったらその人は助からないという事ですか?」
「そう言うことです、1周ハンドルを回せばその人は1時間生きれるので直ぐに命が尽きることは無いですが」
「何か、変わった仕事ですね」
「はい、人は生きてるだけで素晴らしいと思っているので」
「どうされますか?やりますか?」
「お願いします」
「わかりました、契約ということで早速働けますか?」
「もちろんです!」
スーツ姿の男に案内され、辿り着いた先は誰も通らないような薄暗い通路。
通路の先には怪しげな扉が1つあった。
扉を開け、中に入るとそこには1つの通路で左右にはびっしりとドアが沢山あった。
「こちらです」
案内された部屋にはクビになった彼の名前が書いてあった。
部屋の中は狭く暗い、真ん中に大きなハンドルが着いている。
「それでは回し続けて下さい、自分の中で満足いくまで回せたと思ったら部屋から出ていってもらっても構いません、その分の報酬を与えます」
「わかりました」
「あと最後に、このハンドルを回せば結構な報酬を与えますので後悔のないようにされて下さい、1度部屋を出たらまた入ることは出来ませんので」
「わかりました」
スーツ姿の男が出ていき、彼はハンドルを回し出した。
「おっっも、これを回し続けるのか、かなり大変だ」
彼は元々根気がない上に体力がある訳でもない、ただせっかく貰ったチャンス、人助けと思い頑張ることにした。
「はぁ、はぁ、結構回したんじゃないか、もう良いだろ」
彼は部屋から出た。
「お待ちしてました、報酬はこのくらいです」
額を見てびっくりした、これだけでこんなに貰えるのかと。
「ほんとにいいんですか!?こんなに」
「もちろんです、そのお金で今後の人生も再スタート出来ますね」
「ほんとに、有難いことに」
お金が大量に入ったアタッシュケースを彼は受け取った。
「ちなみにですが、あなたがハンドルを回した数は30周です」
「となると、30時間は人の命を延長したということですね」
「そうですね、その人にとって30時間は長いのか短いのか」
「それでは、これで失礼します」
「はい、楽しい人生を送って下さい」
怪しげな扉を出た。
視界は光で眩しかった。
「先生!患者さんの意識が戻りました!」
「あれ、ここは?」
「病院です、あなたが家で意識不明の重体だった所を家族の方が病院に通報して運ばれてきました」
「そうか、俺は会社をクビになり、途方に暮れじさつを謀ったんだ」
さっきの仕事も夢なのか。
ふと、ベットの足元を見てみるとアタッシュケースが置いてあった。
アタッシュケースを開けると大量のお金と手紙が入っていた。
「ハンドル回しの報酬です、どうか残りの余生を楽しまれて下さい」
彼は大いに喜んだ。
「あれは夢じゃなかったんだ!また人生をやり直せる!」
彼はすぐに回復し、その日のうちに退院した。
「このお金は貯金と生活費に回そう、次に働ける場所を探して」
彼は今後の事を考え、ワクワクしていた。
終わったと思った人生から一変し、大金も手に入れた。
「よし、今度はもっと頑張ろう!」
希望に満ち溢れた彼はスキップをしながら帰宅した。
そんな彼は目が覚めて30時間後に家で遺体となって発見されたのだった。
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