テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
腿の間で両手の指を組み、後部座席のシートに深く凭れ掛かる。
タクシーの車窓の外をぼんやりと眺めていた。
色とりどりの看板。照明やネオン。窓明かりの耐えないビル群が絶え間なく夜景として次々と流れてゆく。
特に面白味のない見慣れたいつもの都会の景色。
一見、煌びやかなこの感じがどうにも苦手だ。
まるで自分を見ているかのようで。
──この十年、我武者羅になって藻掻き続けてきた。
正直、折れそうになった事なんて数え切れないほどにある。
だけどそんな時、いつも仲間たちの存在だけが俺を衝き動かす原動力となっていた。
仲間は皆大事だが、特に──俺にとっては大切な存在がひとりだけ居る。
彼のことを思い浮かべ、目を閉じれば、はにかむように微笑む笑顔が瞼の裏に浮かんだ。
──ああ、いつだったっけ。
まだまだ幼さの残るあどけない笑顔。
第二次性徴期特有のふっくらとしたまあるく色白の頬。紅を指したようなその頬に浮かぶえくぼが好きだった。
第一印象はクソガキばっかだな、と有象無象の対象でしかなかった筈なのに。
それでも、ひとりだけ妙に目を引くな、とは思った覚えがある。
それが何故だったのか、今なら嫌という程身に沁みて分かるのだけれど。
まああの頃の彼にとって俺は、単なる遊び相手(※ただし遊び道具として)としか認識されていなかったらしいが。
つらつらと昔の彼の姿を思い浮かべていると、どうしてもくだんの件は避けては通れない。
魔が差した、という言葉の意味を、まだまだ若かった俺は後々嫌という程身を持って経験することとなったからだ。
『この十年ずうっと好きだった訳じゃない』
少なくとも俺はずうっと好きでしたよ。
『俺はあの時、自分の気持ちに蓋をして厳重に梱包して、心の奥底に沈めたんだ』
仁人らしい表現だ。
俺は自分の気持ちを両手でぐちゃぐちゃに丸めて、ぎゅうーっと押し潰し、それをまるごとぱくりと飲み込んだ。
ずっと喉に引っ掛かったままの、それを見て見ぬフリをして。
……馬鹿な仁人。
俺なんかのことを好きだなんて思い込んじまって……。
でもなあ……まさか俺もお前に気付かれてるとは夢にも思って居なかったんだよ。
十年。
たった十年。
されど十年。
完璧に線引き出来ている、と思っていた最中、突然仁人という名の特大の砲弾が、頭上目掛けて降ってきてしまった。
眩いばかりのプリズムを纏った光の中、色とりどりのメタリックコンフェッティとともに。
当然受け止めちまうし、浮かれもする。
一瞬だけ、子供の頃の事を思い出した。
キラキラと輝く宝物を初めて手にした時の、高揚感に多幸感に独占欲。
あの何とも代えがたい心のなかが満たされゆく感じを。
今まで築き上げてきたものを思わず全部かなぐり捨ててしまう位には。
あの日からずーっと心の中では警鐘が鳴り響いている。
けれど、生憎と目を逸らすことには慣れすぎてしまっていたんだよな。
まだ幼さの残る仁人には強烈に残る体験だったんだろう。
──インプリンティング。
所謂、刷り込み、ってやつだ。
見るからに(と言うよりかは恐らく近くでほぼ見てきた)恋愛経験の無かった彼が、俺という存在を刷り込んでしまった。
あんにん
2,206
4,168
その可能性は十二分にあると思う。
そう、ただ、あいつは擬似恋愛しているに過ぎないんじゃないか……?
恋に恋をする……結果的に、一番初めにあいつにブラインドと言う名の目隠しを仕掛けてしまった俺に。
俺は、後悔をしている──
結局──俺たちは遅すぎたのかも知れない。
***
先ほどから柔太朗がおとなしい。
おとなしいと言うよりかは、何かを考える素振りをしていて上の空だ。
柔太朗と久しぶりのサシ呑みと言うよりかはサシ飯をした。
一向に進展しない俺と仁人の関係を相談して、店を出る通路の途中だった。
店員さんが足元を照らして一組ずつアテンドしてくれるタイプの店だ。
通路は完全に間接照明しか機能していないので、必然的に辺りは暗い。
「おい、足元気を付けろよ」
「……あのさ、『付き合ってくれ』とか、『俺たち付き合おう』とかなんとかはちゃんと言った?」
「……は?」
思わずと足を止める。
……言ったか? 俺……?
あの時は本当に浮かれていたので、記憶に曖昧な部分が多い。
大抵のことは記憶に残るタイプの俺にしては珍しく、だ。
アドレナリンが大量に放出されていたのだろうとは思う。
それもそうだろう。
長年焦がれてきた相手だ。
お互いに気持ちをきちんと確認して、告白し合って……。
……。
……。
……?
「……言ってなくね?」
しばらくその場で記憶を手繰り寄せていたけれど、出た結論に、ぽん、と左掌を右手の拳で叩く。
「この可能性も出てきたね……」
「価値観昭和通り越して明治維新かよ」
「お相手、薩摩隼人だもんね……」
ふぅ、と背後の柔太朗が苦笑の気配とともに小さく溜息を吐いた。
「あともうひとつ。押してダメなら引いてみるのもアリかもね。古いテだけど。あのタイプには有効かも?」
アプリで配車手配したタクシーに、先に柔太朗を乗せた。
彼は後部座席に乗り込む前、去り際にそう声を掛けてきた。
「押してだめなら引いてみなー、ってやつね。おやっすー今日はあんがとね」
「こちらこそごちそうさま。またなんかあったらいつでも言って。お役に立てるかはまた別の話だけど。おやすみ、勇ちゃん」
軽く挨拶を交わして、柔太朗が乗ったタクシーを小さく手を振って見送る。
優しい後輩兼メンバーを持って幸せだ。俺は本当に恵まれている。
押してダメなら引く。
古来(?)より恋愛に於ける駆け引きの手段のひとつとされている。
引く……か。
その時、その単語に何故だが胸の中が意味不明に騒ついた。
俺の中の冷静な部分が告げる。
あれ……? だったら今ならまだ間に合うんじゃねーの? って。
***
「たっだいまー」
誰も居ないと分かってはいつつも、つい玄関で発してしまう。
靴を脱いで顔を上げると、リビングのドア越しに明かりが控えめについているのが見てとれた。
あれ? 俺、今日、出掛けしな消し忘れたっけな……?
思いつつ、ぺたぺたと廊下を進む。
リビングの扉を開けると、真正面に位置するソファの上で仁人が眠っていた。
「っ……!?」
驚きのあまり声を上げそうになり、慌てて掌で己の口を塞ぐ。
ン゛ン゛ン゛ッ……! いやタイミングよ……。
思わず額に手を遣り内心で溜息を吐く。
そろそろとほぼすり足状態でリビングを進む。
ソファの脇まで到着すると、胸の上に文庫本を広げたまま、すやすやと寝息を立てている仁人を見下ろした。
頻繁にお互いの家を行き来するようになってからは、姿というか形というか……こう、あまりまじまじと見ることは無くなっていたな、と思い至る。
相変わらずうつくしい造形をしている。
間接照明の柔らかな光に照らされて、浮かび上がるような白い肌。
俺の大好きな彫りの深い整った顔立ち。
二十代前半までは可愛い、が勝っていたが、最近はなんと言うか……美人だな、と思うことが増えてきたようにも思う。
男相手に使う表現ではないかも知れないのは百も承知の上だ。
それ程までに目の前の男が魅力的で……あと、これは昔からだが妙な色気もあると思う。
そう思うと、中性的、ってやつになんのか?
しっくり来てひとり納得する。
ホント、奇跡的なバランスで成り立ってるな、こいつ。
しかも本人に自覚がないところが一番タチが悪ィ。
何処か聖職者を彷彿とさせる凛とした佇まいと、気品に清廉さも兼ね備えている。
オフの家の中ではほぼマオカラーの長袖シャツに、何かしらのロングボトムを身に付けているのが多いところもコイツらしい。
殆ど肌を露出していない格好をしているのにも関わらず、そこに不思議と色気を纏う。
そこもなんともタチが悪い。
結論:とどのつまり仁人はタチが悪い ← Q.E.D.!
見ているだけのこっちは何も後ろめたい事は無い筈なのに、何故か後ろめたい気持ちにさせてくる。
背徳感? ってーの?
それに、今は見ることは出来ないが、何よりも仁人は瞳がものを言う。
水気を湛えた黒目がちで大きな瞳。
いつか、「水まんじゅうみてー(美味そう)」って言ったら「なにそれ」ってツンツンしてたっけ。
不意につきり、と胸が傷んだ。
小さな痛みに思わずとそこに手を遣る。
あーあ。
ここで手放してやんのが一番、って思ったのになあ。
いざってなるとこんなにも後ろ髪引かれるもんなんか。
内心で重~い溜息を吐きつつ、俺は寝室へと向かった。
***
「っう゛ー……」
アラームが鳴らん。
今何時だ。
自身の唸り声とともに覚醒は唐突に訪れた。
「てかなんか暑ィ………………い゛っ!?」
目を閉じたまんま、手探りでスマホを探してベッド周りをぽんぽんと軽く叩きまくっていたら、不意に掌になんかふわふわと柔らかい髪の感触が……。
「っ~~……!?」
驚きのあまり目を見開いて、思わずがばっと上体を起こす。辺りはまだ薄暗かった。
まだまだ早朝だな……と何処か安堵を覚えつつ、隣の気配に戸惑う。
どーすんのよ、コレ。
俺の隣で身体を少し丸め、相変わらず(※昨晩から場所ははるかに移動しとるが)すやすやと眠っている仁人。
ちな俺の寝室のベッドはダブルを使っている(身体でかいんでね!)ので、成人男性ふたりだとまあ多少狭いかなー? って位のアレである(アレってなに)。
「仁人~……」
彼の肩に手を掛け、優しく揺り動かす。
「んん……」
そんな寝息(?)を立てながら、仁人はもぞもぞと身動ぎをした。
コイツは昔から神経質属性なので、余裕で起きそうなモンなんだけど。
どうしてだか俺相手だと大丈夫らしい。
そういや昔、しばらくうちに転がり込んでた事もあったっけなあ……。
と、ひたすら忍耐という己を試される日々の記憶の扉が開きかけて、思わず笑っちまった。一体なんの試練なんだか。
……あー、ホンット、おっかしーね!
「仁人、仁人」
ゆさゆさゆさゆさ。
「んんん……」
尚も寝息(?)とともにもぞもぞするだけで起きない。
はあ、とマットレスに向かって大袈裟な溜息を吐き、俺は上体を屈めた。
俺の方へ横向きの体勢で寝ている彼の左耳に、そうっと、俺の口唇と仁人の耳朶が触れるか触れないかの距離で掠めてやる。
「起きねーとちゅーしちゃうぞ♡」
そして、低い声でぽそぽそと呟いてやった。
「うわあああっ!!!」
途端、そんな悲鳴とともにビヨヨーン!!! とでもオノマトペが聞こえて来そうな物凄い勢いで仁人が跳ね起きた。
しかも、マットレスの上に正座で着地するまでほんの数秒の世界だ。
「寝起きでもんっのスッゲーバネだな、おい」
この年で伊達にダンス歴二十年越えの猛者は……違う……のか??(流石に勇ちゃんでも分っかんないよ!)
「なななっ、なっ……!? ぅえっ、ぇっ!? 勇……斗……っ!?」
俺に悪戯された左耳を押さえて、真っ赤な顔でキョロキョロと辺りを見回しながら混乱している様子の仁人。ちょうかわちい。
「はあ゛い゛。勇ぢゃん゛でえ゛ーす。お゛っはよ゛ー」
寝起きガラガラの低い声で仁人に向けて肩の位置で挙手をする。
「っ……! っ……!」
そして、彼は徐々に事態を把握したのか、俺のベッドの上で正座したまま俯いて、なんかプルプルしだした。
「っはぁ眠ィ~~! 今何時だあ?」
欠伸しながら呟き、枕元のスマホを手に取ると三時四十五分。
おおお……なかなかにやんばい時間。
「仁ちゃん、俺、今日、四時半入りなんだよぬ」
ヨユーで一時間切っちまってるわー、とひとりごとを呟くように言う。
「はあ!? 今何時!?」
すっかり覚醒モードの彼は、自身の失態(?)を誤魔化すかのように、俺の手元のスマホのホーム画面にかじりついた。
「行ってらっしゃい」
「んー。行ってきまーす」
昨日、柔太朗と話すまでの俺だったら垂涎モノのシチュエーションだっただろう。
仕事前に好きな子に見送って貰えるだなんて。
しかも仁人だぜ? 朝から贅沢なモンだな、おい。よーし。オニーサン、今日も一日頑張っちゃうぞー。
あれから爆速でシャワーを浴びて爆速で準備を整えた。
俺が準備をしている間に仁人が作ってくれた簡単な朝食(俺んちパンとかねーんだよなぁ。サラダ的なやつ作ってくれてたからそれと納豆ね)を食べて、今は玄関だ。
「……あっ、あの、勇斗」
最近お気に入りのスニーカーを履いていると、控えめな仁人の声。
顔を上げて彼を見ると、何故だかもじもじしている。
なんだなんだ??
「俺、今日、オフなんだけど、ここで待ってても良い?」
一瞬、時が止まった気がした。
俺はいまここに仁人が居なかったら盛大に舌打ちしていただろう。
ッ……チッ!!!
心の中でやっといたるわ!!!
し・か・も☆
頬を少し赤らめてのあのキュルキュル攻撃だぜ??
国の一個や二個(単位合ってる?)くれー簡単に傾くだろ、それ!!!
ンン~~……! 仁チャンたまんない傾国さだネェ~~☆彡 ってキモおぢムーブしちまいそうだわ!!! クソがッッッ!!!
「んんー……別に良いけど俺、今日はテッペン越えるかも?」
まろび出そうになる勇斗おぢを抑え込み、何とか平静……保てて……? んのか? 分っかんねえ!
「夕飯は?」
「たぶんロケ弁」
即答すると、目に見えてしょんもりする仁人……こっ、ころされる……。
「ごめんなぁー売れっ子で」
「……本当の事だろ。家事一通りやっとくね」
おおお? 今日はえらく素直だなー。いつもなら何らかの切(斬?)り返ししてくんのによう。
「……二万で良いか? それともクロムの新作リングにする?」
いつぞやのホームキーパー仁ちゃん日当の件を振る。
「なんの話だよ!」
あはは~……なんて乾いた笑いを漏らしつつ、俺は自分の部屋を後にした。
***
🤍
「おかしい……」
「はひは?(何が?)」
「舜太、口にもの入ったまんま喋ったら行儀悪いで」
「……えっ、俺、いま何か口走ってた……!?」
「「口走ってた(ふひはひっへは)」」
ちなみに俺 → 舜太(お口いっぱいに本日のロケ弁カレーをもぐもぐしつつ)→ 太ちゃん → 俺 → ふたり、の発言順ね。
本日はグループ内年下三人組だけのロケで、都内某所に来ていた。
ちなみに今はお昼休憩中だ。
舜太はカレー、俺と太ちゃんは海苔弁を選んである。
「どないしたん? 何か最近、よう考えごとしとるみたいやけど」
太ちゃんがお弁当を食べていた手元を止めて顔を上げた。
「えっ? いや、別に……」
太ちゃんのじー……っとこちらを完全にロックオンして見つめてくるくりくり眼から視線を逸らす。
「……どうせあのふたりの事やろ」
ん?? なんの事?
とすっとぼけた表情を作って小首を傾げたら軽く睨まれた……だいてぃん怖んい。
「ほんっっっまに最近うっとおしいんやけど、お前どうにかしてくれへん?」
太ちゃんのイライラが伝わってきて、何故だか俺が悪いことをしているみたいないたたまれない気持ちになる。
そこまで解ってるんだったら太ちゃんがどうにかしてよ、とは思わないでもない(怖くて言えない)。
太ちゃんは良い意味でも悪い意味でもマイペースで、他人にあまり興味がない。
持ち前の頭の回転の速さだったり、他人の機微に敏感でもあったりするから、ある意味本能……ってやつなんだろうな。この辺りは。
珍しくこんなことを言ってくるのは、一応これでもあのふたりを心配しているのだろう。
俺と同じに(※舜太はカレーに夢中で聞いてない)。
「はぁ~~……」
① だいてぃん → 無理。
② 舜太 → 違う意味でもっと無理。
③(迷)探偵山中(時々ありさ)→ワンチャンいけそう???
……③ 一択じゃん。
口からこぼれ落ちる重い溜め息は、食べ掛けの海苔弁の磯辺揚げの上へと消えて行った。
俺が勇ちゃんからのお呼び出しというサシ飯? に行ってから約三ヶ月程になる。
あの後辺りから、どうもふたりの関係がおかしな事になっているみたいで……。
毎日キラキラと目に見えていた勇ちゃんの態度が急激に落ち着きを取り戻した。
それだけならまだしも、俺に向けての一切の匂わせが無くなったのである。
最初は、え? って思った。
だけど、ふたりも出会ってからもう十年以上経つし、今更お付き合いを初めても……何て言うのかな。
……熟年夫婦? 倦怠期?? みたいなやつなのかなー? って勝手に思っていたんだ。
約三ヶ月前。収録終わりにふたりくっついてぽそぽそとお家デートの相談をしていた時の、あのほわほわした雰囲気。
あの感じが一切無くなっちゃったのである。
同じ楽屋に居れば幸せそうに目配せして微笑み合っていたふたりの雰囲気が、いわゆるお付き合いを始める前に戻った……? って言うのかなあ?
例えば、お付き合いを始める前が→ver.1、お付き合いが始まった後を→ver.2とする。
表面上は、ver.1くらいの雰囲気を保ってるんだけど、楽屋とかじゃver.0.5くらいになってない?? みたいな。
そうこうしてたら今度は仁ちゃんに変化が訪れた。
元々そんなにテンションの高いキャラでも無いし、落ち着いたタイプではあるんだけど……。
仁ちゃんは仁ちゃんで何か影を落とした感じでしょんぼりしていることが多くなった気がするし………………あああっ!!! もうっ!!!
俺もだいてぃんみたいにキレ散らかせたら楽……ではないかな……ウン。
で・も。
も~~っ! 勇ちゃん、何があったらどうしてそうなるの!?
全然キャラじゃないけど、勇ちゃんの胸倉掴み上げてゆさゆさしたいよ(※願望)。
もう幾度目になるのか分からない重~~い溜息を吐いて、手元のスマホのロック画面を解除した。
***
🤍
「……で?」
この前は勇ちゃんに呼び出されてお高級イタリアンレストランでサシ飯だったけど、今日は俺が事務所のミーティングルームを押さえていた。
マネさんに相談して、相変わらず超多忙な勇ちゃんの身柄も一時間だけだけどなんとか確保する事に成功した。
「……で? とは?」
すっぴんの勇ちゃんは目の下に濃いクマを作っていた。
パイプ椅子に大きな身体を預けて、気怠げに座っている。
「っ~~! 仁ちゃんとのことだよッ!」
勇ちゃんの以前とは全然違うツーンとした態度に戸惑いつつ、単刀直入に聞く。
「……」
「……」
「……」
「……」
しばらくお互い無言で見つめ合う。
……一体全体、何の時間なの。これは。
って言うか。
「一時間しかないんだけど」
「それはお前の都合だろ」
「はあ!? 俺の身は空いてるよ! 勇ちゃんのスケジュール押さえるのどんだけ大変だと……っ!」
謎の喧嘩しに来た訳じゃないんだけどなあ……。
って言うか(二回目)。
以前の陽キャ全開、『皆っ、俺に着いて来いッ! テッペンの景色、見っせてやるぜ~~!!!』(※イメージの一例です)的な太陽のような勇ちゃんは何処へ行っちゃったの!? !? !?
多忙の所為か頬は痩けてるし、目の下のクマと今日着ているストリート系ファッションも相まって、全力で治安の悪い雰囲気醸し出しちゃってるし……。
え……? 双子のお兄さんでも居てたっけ??(存在しない記憶)
たった三ヶ月で何があったの!?(本当に)
あのキラッキラと輝いていたヤンチャ系王子様が、今やダウナー俺様系王様(※決して王子ではない)の雰囲気になっちゃってるんですけど……!?
「……話、ってそれだけかあ?」
俺、忙しいんだよなー帰っても良い?
そうつづけて眼光鋭く射抜かれ、俺は二の句が告げなくなってしまった。
目の前の知っている筈の人間が、突然別人になってしまったみたいだ。
……駄目だ。
今ここでこんな状態の勇ちゃんを帰すのは絶対に良くない。
怯むな。立ち向かえ、山中柔太朗。
「っ……俺、またなんかあったらいつでも言って、って言ったじゃん? なんでこんなことになっちゃってんの? 太ちゃんも心配してるんだよ……?」
ここで太ちゃんの名前を出すのは少し躊躇われたけど、手段は選んでいられない。
グループのみならずメンバー愛の強い彼は、こういった言葉に弱いのを知ってて。
「……俺も分かってんだよッ!」
少しの沈黙の後、勇ちゃんが急に声を荒げた。
驚いて勇ちゃんの顔をまじまじと見つめる。
曇っていた瞳の中に、少しだけ以前の勇ちゃんの光が見て取れた。
「……距離を置こうと思ったんだ」
そして、ぼそぼそと勇ちゃんが話し始めた。
書いてる本人もびっくりの展開←
我が家のsnさんが全然言う事を聞いてくれない件
どなたかうちのJ様に胃薬を……!
ねえ待って。私snjn書き始めてから一週間経ってないのに三万字行ってる😂
目標は五万字以内に収めたいデース……
コメント
1件
わー何があったんだろう!柔さま頑張ってー!!snjnがうまくいくのか、続き楽しみです!!