テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
震わせては詰まらせて、空気との擦れ合いを繰り返して傷んだ喉から、掠れた吐息しか出なくなった頃ようやく満たされたのか、蓮はスパートをかけるように俺を激しく揺さぶった。
「ぅ“ぁ…っひゅ、ぁ“、ん、ん“ぅ“…」
与えられる律動に抗うこともできずにダラダラと漏れる声は、強い刺激に逆らうことも、痺れるほどの快感をどこかへ逃すことさえも諦めたかのように、体の中で弱々しく響く。
「ッぁ“あ“ッ“!くそ…っ!、これさえ無ければ…っ、く、ぁ…っ」
俺と蓮とを隔てる薄いベールの中が熱く、そして暗く濁ったもので満たされたのを奥の奥で感じた瞬間、錆び切っていた糸はぷつっと切れて、目の前が真っ黒く染まった。
「…阿部ちゃんを奪えるのに……っ…」
遠のく意識の中で聞こえたその声は、耳の奥でいつまでも反響していた。
瞼の裏で何かがチカチカと光るのを感じて目を開けると、眼前には宝石のように煌めく星々がそこかしこで瞬いていた。
苛烈な情事の後に残る、疲労感や重怠さは無い。
幻想的な光景と、浮かぶほど軽やかな体とを思考が認知しては、すぐにここが夢の中であると分かった。
大小様々な数多の星が、各々の輝きを放ち懸命にその命の炎を燃やしていた。
「綺麗…現実でも見てみたいなぁ…」
その場へ寝転び、呟いた。
声に乗って一緒に吐き出された自身のため息は、心なしか寂しそうに聞こえた。
「いつか一緒に見に行こう」
虚空に消えていった願いに、誰かが言葉を返してくれる。
起き上がり、辿っていった音の先には蓮がいた。
今夜は家に帰ってから眠るまでとても濃い時間を二人で過ごしていたから、夢にまで蓮が出てきてしまったのかと思うと、俺も大概染まっているな、なんて自嘲的な笑みがこぼれた。
蓮は俺の隣に座り、ゆっくりとした動きで星を見上げていた。
細められた目とその横顔は、どこか悲しそうに見えた。
「綺麗だね」
「うん」
「今まで見た夢の中で一番好きかも」
キラキラと輝くそれを二人ぼーっと眺めながら、特筆するようなこともないほどのありふれた言葉を交わした。
ゆっくりと、穏やかな時間が流れる。
近頃は、子供のように縋り付いてきては過剰なまでの執着心を一身に受けてばかりで、蓮と過ごしていても、ぐったりとした感覚がいつまでも抜けなかった。
今だけは、気持ちも体も柔らかく温かいものに包まれたようで、自然と心が安らいでゆく。
いつか、どこかに、こんな時間があったような気がする。
もう遠い昔に触れていたもののように思えて、日を経るごとに失いかけているのかもしれない何かを思うと、見上げた星がじわっと滲んだ。
どうしてこうなってしまったんだろう。
どうしたらあの頃みたいな二人に戻れるのかな。
押し寄せる問いかけに答えをくれるものは何もない。
星の生命が激しく火を灯す美しい世界は、今の俺には痛いくらいに静かすぎて、ここが 優しい場所だと分かっているはずなのに、寂しくて、心細くて、俯いてしまいたくなる。
ダメになっちゃったらどうしよう。
落ち込んだ気持ちが、危険と知りつつ更に恐ろしい思考をどこからか連れてくる。
それは大きな不安に変わって増幅し、背中から俺を飲み込んでいく。
暗く重々しい感情に釣られるようにして、一面に広がる煌めきから目を背けようと両手で顔を覆いかけたとき、蓮がそれを掴んで引き寄せた。
「…れん……?」
「大丈夫。俺がそばにいるよ」
「…ぁ…っ…」
「一人で悲しまないで」
その声はとても温かくて、どこか懐かしい。
こぼれてしまわないようにしていたものが、遂に臨界点を超えて一粒ずつ頬を伝った。
「っ、俺、蓮とずっと一緒にいたいよ…」
「うん、ありがとう」
「でも、毎日怖いの、蓮が毎日変になってく、それに疲れたって思う俺がいる、、そんなこと考えちゃ…ッ駄目って思うけど、、、っ」
「ゆっくりでいいよ」
「っひ、…止められない、ずっと追いかけられてるみたいな、っ、感じが消えなくて、怖い…逃げたい、って気持ちが取れないの、ッ、ごめんなさい…っ、」
「ううん、謝らないで?」
「ごめんね、っごめんね、…っ」
口に出したくても出せなかった言葉が、堰を切ったように次々と溢れ出す。
得体の知れない恐怖、自分自身の弱さ、罪悪感が、この身を突き破り、その姿を色濃く露わにしていく。
蓮の掌が背を何度も何度も撫でては、整わない息を宥めてくれる。
赦されているような心地になって、目の奥がまた焼けるように熱くなる。
「泣かないで?ほら、笑って?」
「ふ…、っく、ぅん…っ」
「ごめんね、苦しいよね。ごめん、ごめんね」
「ううん、、俺がいけないの…っ」
「そんなことないよ。いつも大切に想ってくれてありがとう。でも、一つだけ、俺のお願い聞いてくれる…?」
なにも悪くなど無いというのに、何度も謝る蓮に先を促した。
寂しそうに歪む笑顔を浮かべ、蓮はただ俺を見つめていた。
「見捨てないであげて」
「…?なにを……?」と聞き返したが、蓮は何も答えなかった。
「そろそろお別れの時間みたい」
「えっ、待って、、れんっ…!」
「また逢えるから、ね?」
「…うん、、」
「ふは、寂しいって顔におっきく書いてある」
図星を突かれては気恥ずかしくて、火照った頬を隠すように俯くと、蓮は慰めるように額に口付けてくれた。
「今はこれが精一杯みたい、ごめんね、亮平」
首を傾げてもう一度謝る蓮の表情は、今にも泣いてしまいそうに見えた。
何かが体にきつく纏わり付く苦しさに目を覚ますと、蓮が俺の胸に顔を埋めて眠っていた。
「…もう朝か…、ふふ、かわいい」
眠っている時は、こんなにも大人しい。
愛おしさは自然と込み上げて、心の赴くままにその頬を撫でていると、蓮の瞼がピクッと動いた。
「ぁ、ごめん、起こしちゃった…?」
「…ぁ、、ん…ぁべちゃ…」
「なぁに?」
「…こっちみて…」
「う、うん…」
「かわぃ…すき…だいすき……」
カサついた小さな声で拙く愛情を紡いでくれる。
でも、その瞳に輝きはない。
「おれだけみてて」
聞こえた言葉の後に落とされた唇の温度を額に感じた瞬間、昨日見た夢が不意に思い出された。
優しくて、切なくて、綺麗だったあの幻が、たまらなく恋しかった。
少人数でのYoutube撮影は、久しぶりだ。
今日のメンバーは、照、ふっか、そして舘様。
オリジナルのクイズに挑戦しよう!という企画で、スタッフさんからもらったお題に、みんなで和気藹々と答えていった。
撮影は順調に進み、まずまずのところで締めると、照が録画の停止ボタンを押した。
照とふっかが、今撮っていたものを小型のモニターで確認していた。
次は違うメンバーでもやってみて欲しいね、などと楽しそうに話し合っている二人を、舘様は保護者のような眼差しで見守っていた。
ただ、舘様のその視線は、照たちから少しズレたところにあるように見えた。
ふと「何を見ているんだろう」と気になって、少し離れた場所から舘様を観察していると、舘様は突然、虚空に向かって話し始めた。
「…それはよかったね」
「……君もやっぱりそういうのが得意なの?」
「…ふふっ、君のそういう明るいところ、とても好きだよ」
「……知ってる。そのくらいの強い気持ちがなきゃ、とっくに祓ってたよ」
「…ぁははっ、冗談だよ」
舘様にしか見えない何かが、そこにあるのだろうか。
照とふっかは完全に二人の世界に入っていて、見えない誰かと確実に会話している舘様には気が付いていないようだった。
照とふっかは、今年の秋頃から突然距離が近くなった。
昔から二人でいる場面はよく見かけていたので、今も大きな差は無いように思えるが、どことなく彼らの心の距離のようなものがぐっと縮まったような気がするのだ。
二人でこめかみを突き合わせながら、小さなビデオカメラに映った映像を繰り返し見ては楽しそうに笑うその姿に、ほんの少しだけ羨ましくなった。
次の仕事が始まるまでには少し時間に余裕があったので、そのまま事務所の中で本を読むことにした。
メンバーそれぞれの事情に踏み込んでみたくもあったが、それはまたの機会に取っておこうと思う。
首を振って野次馬心に見切りをつけ、栞が挟んであるところまで繰ったページの最初の一行目に目を落とそうとした時、じっとこちらを見つめる視線を感じ取った。
その方をチラッと伺ってみると、舘様と目が合った。
「だ、てさま…?どうかした?」
「首、痛そう」
「へ?」
「そこ」
「?…ぃっ!?」
舘様が指をさす首の後ろあたりを摩ると、ピリッとした痛みがうなじに走った。
すぐに昨日の記憶がフラッシュバックして、自分の顔が赤くなるのを感じた。
「…ごめん…ばんそこ貼るの忘れてた…」
「謝ることないよ。それに動画にも映ってないと思うから大丈夫だと思うよ」
「ありがと…」
恥ずかしすぎて居た堪れないが、うなじの痛みのおかげで、舘様に聞きたいことがあったのを思い出すことができた。
どう聞こうかと言葉を頭の中で構築していると、俺よりも先に舘様が声を発した。
「昨日はいい夢を見られた?」
「へ、、なんでわかるの…?」
「ふふ、当てずっぽうだよ」
「えぇ…?ほんとに…?…あ、でもほんとにそうで、昨日すごく幸せな夢を見たの。舘様、前にも教えてくれたよね、夢は運命を変えることがあるって」
「夢は現実の裏側にある世界。生き物の強い思いが、欲望とか願望になって映し出されるただの夢もあれば、望む望まないに関わらず、後々の自分の運命に左右するような、ある意味厄介な夢もある」
こんなによく喋る舘様は珍しかった。
だが、これはとても興味深い話だ。
昔から知識欲が人より多かったのか、自分がまだ知らないことを見聞きしては気の済むまで調べることがとても好きだった。
気付けば俺は、片手に持っていた文庫本をそばのテーブルに置いて舘様の話に聞き入っていた。
「へぇ、面白いね。昨日のはどっちの夢だったんだろ?後者の方だったらいいなぁって思うくらい、いい夢だったの」
「……ねぇ阿部」
「うん?」
「明日の夜の天気は?」
「えっ、、どうしたの急に」
「いいから教えて?」
「えーっと…曇りだと思うけど…、ちゃんと計算していろんなデータ見ないとはっきりしたことは言えないよ…」
「…そう」
「明日の夜どこか行くの?なら、雨は降らないと思うからだいじょう…」
「阿部」
「ぇ、はいっ…!」
不思議な話に一つの望みが見えた気がして甘い記憶に思いを馳せたが、話題は突如思いがけない方向へと軌道を変えた。
明日の天気を尋ねられたあたりから舘様の表情は曇り初め、最後にはピシャリとした声音で俺の言葉を遮った。
これから叱られるのかと思ってしまうくらいのその真剣さに思わず身を固くして、その先を待った。
「次の満月の夜、気を付けて」
その警告めいた言葉の意味は全く捉えられていないというのに、ぬかるんだ沼のようなものに絡め取られているような感覚が、いつまでも足元に残っていた。
今日の仕事を全て終えてからスマホを確認すると、ロック画面が大量の通知で溢れていた。
こんなにたくさんの連絡が一度に来るのは、仕事絡みでおめでたいことがあった時か、自分の誕生日くらいかでしか目にかからないので、かなり驚いた。
急用だったのかもしれないと、半ば焦るような気持ちで開いたアプリの中には、蓮からのメッセージだけがあった。
トークが一覧できる画面の一番上にはザリガニマークの蓮のアイコンがあって、その行の右端には306個分のカウントがあった。
ぞく…、と背筋が冷える。
開きたくない、と瞬間的に思う。
そんなことしたらいけない、と思える自分もまだちゃんとここにいる。
無意識に嚥下した生ぬるい唾が喉をゆっくりと通り抜けていくのを確かめてから、意を決してそれをタップした。
右から左へとスライドしていった画面に目を落とすと、その直後、俺の喉が勝手にヒュッ…と鳴った。
:
:
:
「会いたい」
「声聴きたい」
「抱き締めたい」
「キスしたい」
「今どこにいるの」
「仕事まだ終わらないの」
「今何の仕事なの」
「遅くなるの」
「何時に終わるの」
「さみしい」
「辛い」
「苦しい」
「阿部ちゃんがいないとだめになる」
「怖い」
「いなくならないで」
「お願いだから返事して」
「早く帰ってきて」
「なんで返事くれないの」
「今何してるの」
「ずっと離れないでって俺言ったよね」
「どこにも行かないって言ってくれたよね」
「なのに」
「なんで」
「どうして」
「俺のこともう好きじゃないの」
「そんなことないよね」
「阿部ちゃんは俺が好きでしょ」
「俺も好き」
「すごく好き」
「すごくすごく好き」
「大好き」
「愛してる」
「答えて」
「言って」
「好きって」
「言ってよ」
「ねぇ」
「好きって言ってよ」
:
:
:
そんなメッセージが怒涛のように送られてきていた。
一方的なそれに、もはや嫌悪感すら抱いてしまいそうになるのをぐっと堪え、蓮の家へと駆け出した。
急がなきゃいけない。
早く帰らなくちゃいけない。
いつでもそばにいないといけない。
そんな気持ちが自然と浮かんでは、苦しくなる。
蓮と会うことを義務のように感じてしまっている自分に嫌気がさす。
誰よりも好きなはずなのに。
何よりも大切な人なはずなのに。
「ぅ”、ぁ”…っはぁ”、ッ、ぁあ”…っ…」
信号を待つ間に整えた息と一緒に、生理的なのか感情的なのかも曖昧になった涙がボロボロと落下して、アスファルトを濡らした。
しばらく前に交換し合った合鍵を使って中に入ると、その瞬間視界が大きな肩に覆い尽くされた。
「やっと帰ってきてくれた、嬉しい、会いたかった、好き、好き、好き」
「……遅くなってごめんね」
絞り出した言葉は、なんとも苦しそうで、どこか冷たくも聞こえた。
蓮はまだ俺の声の裏にある気持ちには気付いていなさそうで、その様子にほっとしてしまった自分に悲しくなった。
そのあとはお風呂に入る間もなく寝室へと連れ去られ、手酷く抱かれた。
「阿部ちゃんの気持ちがどこにも行かないように、阿部ちゃんにもっと好きになってもらえるように、たくさん愛してあげる」
蓮はそれだけ言うと、窒息してしまいそうなキスをくれた。
息継ぎの暇さえも与えてはもらえないような獰猛な交わりは、頭の中をふわふわとさせた。
正常な判断が出来なくなってきた頃にはもう、俺の身を守ってくれそうな衣服の 全てが蓮に剥ぎ取られていた。
好きだと言われるたびに心が冷えていく。
抱かれるたびに蓮が遠くなっていく。
俺が離れたいと思っているからなのか、蓮がどんどん知らない人のようになっていくからなのか、それはどちらであろうと、虚しくて苦しかった。
強すぎる快感に身を捩らせることもせず、ただされるがままでいれば、もっと乱暴な刺激に揺り起こされる。
俺だけに集中しろ、と言われているみたいだった。
身体中が痛い。
昨日の今日で、うなじも背中も肩も、どこもかしこも噛み痕だらけだった。
でも、何の意味があるのかも分からない痣よりも何よりも、心が痛かった。
心がどこにあるかなんて誰も知らない。俺ももちろん「どこ」なんて指し示せない。
それでも痛くて痛くてたまらなかった。
俺を宝物のように扱ってくれる蓮はもうどこにもいないのかな、なんて寂しい考えが頭をよぎると、眉がぐちゃっと歪んだ。
苦しいと悶える嗚咽と、虚しさでおかしくなりそうな喘ぎの繰り返しに疲れた体が、頭が、たった一つ願った。
早く眠りたい。
と。
早く、“蓮”に会いたかった。
「今日ね、舘様と不思議な話をしたの」
「どんな話?」
「夢の話。夢って、願望を写すようなただの夢もあれば、現実の運命を変えちゃうような大きなものもあるんだって!」
「へぇー、舘さんってそういうの詳しいんだね」
「すごく面白くて勉強になる話だったよ」
「相変わらずだね、いつでもなにか勉強してる」
「とっても楽しいよ。…ねぇ、蓮」
「ん?」
「今のこの夢はどっちなのかな、やっぱりただの願望なのかな…」
「亮平はどっちだと思う?」
「うーん…分かんないけど、運命が変わったらいいなって思ってる。今みたいに、蓮とまたこうやって過ごしたいから…」
「ごめんね」
「?どうして謝るの?」
「ううん、なんでもないよ。…そろそろおしまいみたい」
「もう終わり?」
「うん、またね」
「蓮、最後にお願い聞いてくれる?」
「なぁに?」
「目が覚めちゃうまで抱き締めてて…」
「もちろん。おいで?」
「蓮、蓮…っ、れん……ッ」
「もう、また泣いちゃった、大丈夫。いつでもそばにいるよ」
「蓮…っ、すき……ッ…」
「俺も、大好きだよ」
煌々と輝く星空の下で、蓮から伝ってくる腕の温度を感じながら目を閉じると、意識は次第に浮上していった。
ここにいると、心の底から安心して息ができる。
地球を追われ、居心地の良さをそこに見出せなくなった時、俺たちはどこで生きていったら良いのだろう。
でも、この宇宙のどこかに必ずあるはずなんだ。
俺にとってのそれはきっと、星が煌めき続ける世界の中で、優しい蓮がそばにいてくれるこの場所だけ。
この淡い幻想の中に生きる蓮が、今の俺の中にただ一つだけ残っている、最後の希望。
ここは俺の、ーーハビタブルゾーン。
甘い夢が真っ白に染まっていく。
体が忙しく動いているような気がして、意識は急速に現実へと引き戻される。
起き抜けの喉から出るこの音は、やけに甘ったるい。
諦め悪く、まだあの夢にしがみつこうとしている瞼を無理に引き剥がすと、目の前には俺の顔中にキスを落とす蓮の鼻先があった。
「おはよう、阿部ちゃん…」
「…ぉはよ…ぅぁッ!?まっ…ひぁ“ッ」
「やだ、待てない」
あぁ…息ができない。
蓮の瞳と同じくらい、俺の目も濁り始めていた。
力無くその首に両腕を回して、形だけでも求めているかのように振る舞えば、その唇は満足したように真っ赤な弧を描く。
今欲しいのは愛じゃない。
気絶するほどの凶暴な刺激、ただそれだけが欲しい。
疲れたい。
眠りたい。
だから好きなようにして。
早く俺を壊して。
昨夜の余韻が残る柔いこの中が、既に蓮でいっぱいになっていると気付けば、俺の喉は悲しげな奏を添えて小さく震えた。
「…っぁ、ん……ふ、ぁ“ッ“…!」
「だぁいすき……」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!