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いつからだろう、人を信じるのが怖くなったのは。
優しい人はきっと周りにも沢山いる筈なのに、
独りで活動していたせいで裏切られるのが怖い。
だから、期待するのをやめていた。
そうすれば傷付かずに済むと思ったから。
でも、“お前”に出会ってから俺は変われた。
嘘くさい笑い方ばっかしてた俺に、
お前そんなんじゃないだろ、って言ってくれた。
お前のおかげで、シクフォニのみんなのことも、
ちゃんと信じてみようと思えた。
だから俺は今、毎日が楽しいよ。
ありがとう。
なぁ、俺さ__
_お前とずっと馬鹿なことして、
そうやってこれからも生きていきてぇなぁ_
ガチャ。パタン。
「ただいま〜」
「すちくん、おまたせ!」
すちに言葉を返そうと思った瞬間、
いるまとみことが帰ってきた。
「あ…おぅ、おかえり。」
「ほい。」
「ありがと。」
俺の分まで買ってきてくれたいるまに、
代金払うよ、と俺が言う前に、
「今度なんか奢って。」
とさり気なく先を越されてしまった。
「…ん。」
こういうさり気ない気遣いを、
自然に出来るのがいるまってやつなんだよな。
親しき仲にも礼儀あり、なんて言葉があるけど、
いるまは適当にしているように見えて意外と、
これを守りながら生きている気がする。
「…あ、こさめからLINE来てる。」
ふとLINEを開いてみると、
こさめがシクフォニのグループLINEに、
『LANくんのお見舞いちゃんとできたよ!』
と送ってきていた。
「おー良かった。」
俺のスマホを覗き込むいるまの首に腕を回して、
久し振りに“あれ”の数を聞いてみる。
「お前今、未読の数いくつ?w」
「え…んーと、6500…ちょっとくらい…?w」
無言で後ろから頭を押し付けてやった。
「おい馬鹿、痛ぇわw」
「…お前やっぱ病気だろ!」
反省した様子もなく笑っているいるまの笑顔は、
なかなかに可愛いらしいのに、
言っていることは何一つ可愛らしくない。
「俺のLINEも未読スルーばっかじゃねぇか!」
「まじ?ごめんごめんw」
笑いごとじゃないと思うのに、
悪意を少しも感じないからこそたちが悪い。
「…お前、」
たまには反省しろと言ってやろうとした時、
こいつは優しい目をしてこう言うのだ。
「ま、もうなつも慣れただろ。
どうせ毎日会うんだし、それでいいじゃん。」
こいつと初めて話した時の俺は、
当たり前のように毎日一緒に過ごして、
急に会いに来るのさえも許してしまうような、
そんなダチが出来るのを予想していただろうか。
「…ばか。」
多分、そんなことはない。
でも今の俺は、こんな毎日が幸せだと思える。
多分、それで良いんだと思う。
『ひまちゃんはさぁ…いるまちゃんのこと、
もしかして結構本気で好きだったり、する?』
すちの言葉に、何も言えなかった俺。
でも今こうしているまと過ごす毎日を、
心から幸せだと思える俺。
迷ってばかりでも…今の俺は、嫌いじゃない。
「なつ?」
顔を上げると、そこには見慣れた顔があって、
俺の些細な変化にも気付いて心配してくれる。
ほんっと、お人良しだ。
面倒臭い俺のことも、見捨てない優しいやつ。
これからもこいつは、
変わらずに俺の傍にいてくれるだろうか。
俺に、笑いかけてくれるだろうか。
「…なぁいるま…」
まるで俺の本心を全部見通すかのように、
真っ直ぐに見つめてくる瞳を、
俺もまた、真っ直ぐに見つめ返す。
お前はもう聞き飽きたかもしれないけど_
「俺、お前のこと好きだよ。」
ほんの一瞬の間をおいて、
花が開くように笑顔が咲いていく。
「お前さぁ…
よく恥ずかしげもなくそんな事言えるよなぁ…」
その顔が若干の照れを含んでいるのを、
俺は見逃したりしないけど。
俺がそれを指摘する前に、優しい反撃が来た。
「俺も、なつのこと好きだよ。」
真っ直ぐな瞳は、あまりにも綺麗で。
笑顔も声も優しくて、心があったかくなる。
「…柄でもないことするもんじゃねぇな…w」
照れ隠しに言ったその言葉に隠れた本心に、
いるまはきっと、気付いている。
だからほら、こんなにも優しく笑うんだ。
「ははっw…可愛い。」
「…るせぇ…!」
俺のささやかな反撃にも動じず笑い続ける、
目の前のこの男にもし、出会っていなければ。
俺はきっと、こんなに優しい気持ちを、
知らないまま生きていた。
別ににそれが、悪いことだとは思わない。
ただ、独りで生きていく人生は、
俺にはどうしても合わなかっただけだ。
「…んじゃ、仕事に戻るかー。」
何事もなかったかのように画面に向き合い、
数字に頭を悩ませる俺の相棒。
俺がお前にどれだけ救われたか、
その全部を伝えることは難しいけど。
こうしてお前を笑わせるくらいなら、
こんな俺にも出来るかな。
俺に降りかかる言葉の雨から、
お前が俺を守ってくれたあの日。
俺はこの胸に、誓ったんだ。
いつかお前が傷付いた時、
今度は俺がお前を守ってみせるって。
傲慢な考えかもしれない。
俺のエゴでしないのかもしれない。
でも自分の想いがエゴだとしても良いって、
それでも自分の想いを貫くよって、
お前がそう言ってたのを俺は知ってるから。
だから、誰よりも近くにいさせて欲しい。
ずっとずっと、出来れば死ぬまで_
_俺の相棒は、お前だけだよ。