テラーノベル
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土曜日の午後。
『先輩、今日だけど、会場時間にホテルで待ち合わせる?』
リュウジから、ショートメールが来たを見て、久しぶりにリュウジのことを思い出した。
いつものノリで、サッと
『了解!』
とだけ書いて送ると、リュウジから謎の返信が来た。
『……んーーー!!!!』
なんだろう?了解ってことかな?と勝手に思いつつ、一瞬、リュウジは服装が大丈夫かどうか、頭によぎる。
(まあ、でも男性はどうせスーツだし、問題ないよね?)
プレゼンの際も、いつも以上に上質なスーツを着ていたリュウジを思い出して、一人で勝手に安心する。そして、サンゴは昼食を簡単に済ませ、自分で爪を整え、ネイルをしながら、楽しくゆったりと支度をしてお出かけした。
憧れのホテルは、近所の公園を通ったり、中にあるケーキブティックには入ったことがあった。その奥の方まで足を進め、屋上へのボタンを押すだけで、胸が高鳴った。
(きゃー!エレベーターもキラキラで気持ち上がる!)
ワクワクした気分で、会場フロアに到着するとーー。
東京が一望できるラグジュアリーな廊下で、上質な正装に身をつつまれた美しい男性が待っていた。
「せ、先輩。サンゴ先輩、こっち!」
彼は、俯きがちに、首を斜めに構えたまま、右手をふわりと挙げた。すると、周りにキラキラした光が舞っているように見えた。
「リュウ……くん?」
「いこ」
こちらに向き合わずに、そそくさと会場へ向かおうとするリュウジの袖を引いて、サンゴは彼の足を止めた。
「ちょっと待って?どうしたの?すごいかっこいい!!!やばい!!」
思った通りの言葉が、サンゴの口からとめどなく溢れてくる。
「あ、それこんな軽い感じで言っちゃうんだ」
「すっごいすっごいイケメン!やばい!超似合う!」
キラキラひかるリュウジの全身に、思わず見惚れてしまう。色々な方向から眺めているサンゴを呆れた目で見ながらも、リュウジも彼女をじっと見つめていた。
「先輩も、綺麗すぎてびっくりして……なんか、言えなかった……」
「そう?」
「うん。サン先輩が綺麗すぎるとやだ。普段から綺麗なのに。もうそれ以上、上げて来なくていい」
「何それ?」
「もっと首とか胸とか腰とか隠してよっ」
「ええ?何も露出してないでしょ?」
サンゴは自分のワンピースの一体どこが出ているというのかと思って、自分の身体を見回すけれど、思い当たるところがどこにもない。
それなのに、リュウジは拳で顔を隠しながら、ため息まじりにつぶやいた。
「身体のラインとか、むやみに出さないで」
「えええ?どこが?何言って……」
「お尻とかも。みんなに見られるのやだ」
リュウジはサンゴの身体を他から隠すように、右後ろにピタッと張り付いてきた。
「そんな、変なこと言わないでよ!!」
後ろにいるリュウは、さらにサンゴの耳元へ顔を寄せて来て、小さな声で囁いた。
「ああ、ダメだ。隠してる俺の方が気になって、おかしくなりそう……」
「ちょ……もう!!ほんと、こんなとこで何言って……」
馬鹿馬鹿しいと思いながら、サンゴが赤面してリュウジを振り返ると、彼も真っ赤になる顔を一生懸命、両手で隠そうとしていた。
「今世はもう、欲望を隠さないって決めたんだけど……ああ、でも今は抑えないと」
「だからその謎の設定は何?」
サンゴの声に、リュウジはさらに彼女に近づき、腕を掴んで睨んできた。
「ていうか、サン先輩。俺のこと放置しすぎ」
「ええ?」
「あんなことあったのに、二日も俺のこと放置するなんて」
「……!?」
「何?放置プレイだったの?それなら、大成功しちゃってるよ。もう!!久しぶりに二人になって、この距離でこの格好されたら、いかがわしい気分にも……」
いつもの可愛い声じゃなくて、ずっと低めのイケボでそんなことを言われたら、サンゴの方まで変な気分になってしまう。
「もうほんとバカバカバカ!!」
思わず持っている小さなバッグを振りかぶり、空気を叩くようなふりをした。
「へへへ」
するとリュウジはちょっと舌を出して笑った。いつもの、いたずらっ子のようなにっこり笑顔を見て、サンゴもなんだか笑えてきた。
「ははは!!もー!今日は思いっきり美味しいの食べよ!」
「ははは」
「いこ!リュウきゅん」
「はーい!サン先輩!」
招待状を受付で提示すると、アウターを預け、煌びやかな会場に足を踏み入れた。
「わあああ!」
「先輩、こういうの好きなんですね。興味なさそうなのに」
「私、こういうところ来たの初めてなの!!すっごくキラキラしてて夢みたいだよ!!」
「ええ?それってどういう……」
「リュウくん!見て!こっち食べ物並んでる〜!」
「ああ」
「宝石みたい!!もはやなんの料理かわかんない!!」
はしゃいでいるサンゴは、グラスに取り分けられたお料理を次々に手に取っていた。
「ええ?これはテリーヌで、こっちはキャビアで、これはミネストローネのジュレだと思うけど……」
「えっ?!リュウきゅんってお料理にも詳しいの?」
サンゴの両手いっぱいのお料理を見て、リュウジは頭を抱えた。
「って、ちょっと待って。それ一度に全部持ってくの?」
「うん!」
「こういうとこで、ご飯がっつり食べにきた人初めて見た」
「何それ?あと5周はするつもりだけど!」
「本当に夕食だけ食べにきたな?」
「もちろん!」
嬉々としているサンゴの表情を見て、リュウジは頭を抱えながらも、なんだかおかしくてしょうがなかった。
コメント
1件
泉屋乃苺さん、第14話読みました! リュウジくんの「隠してる俺の方が気になっておかしくなりそう」って台詞、ドキッとしました…!普段のいたずらっ子な感じとのギャップがたまりません。サンゴさんの「あと5周する」宣言も彼女らしくて、豪華な舞台で無邪気にはしゃぐ姿が目に浮かびました。二人の距離が縮まっていく感触、すごくいいですね🌷
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