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『灰色王子と、カラフルな少年』
ねこかに様からのリクエストストーリーです!
ねこかに様の案と私の妄想で書いた物語なのでご本人様とは一切関係ありません。
レトルト×キヨ
楽しんで頂けると嬉しいです。
スタートヽ(*^ω^*)ノ
昔々、あるところに自然に囲まれた平和な王国がありました。
その国は豊かで美しく、誰もが穏やかに暮らしていました。
王と王妃は民に深く愛され、
たった一人の王子、レトルトもまた未来を約束された存在でした。
レトルトは両親に深く愛され、
民にも慈しまれながら、大切に育てられました。
日々は穏やかで満ち足りていました。
朝には机に向かい学びを重ね、
昼には城を抜け出して森で風と戯れ、
夜には温かな食事を囲み、手入れの行き届いた柔らかな布団で眠りにつく。
何ひとつ欠けることのない、 幸福な日々を過ごしていました。
レトルトはいつものようにベッドに入り、
左右を両親に挟まれながら、大好きな本を読んでもらっていました。
物語のやさしい声に包まれて、
まぶたが少しずつ重くなり、うとうとと眠りに落ちていきます。
やがて本が閉じられるころ、 両親は決まってレトルトにこう語りかけるのでした。
「あなたは、私たちの宝物よ。 愛しているわ。また明日ね」
そうして、やさしく額に口づけを落とします。
レトルトは眠りに落ちる前の、そのひとときが 一日の中でいちばん好きでした。
それは、”いつもの幸せ”でした。
けれど、その幸せはある日突然崩れてしまいます。
深い夜のこと。
レトルトは、かすかな物音に目を覚ましました。
まだ眠気の残る目をこすりながら、
そっとベッドを抜け出し、廊下へと足を踏み出します。
けれど、そこはいつもと違っていました。
夜でも灯されているはずの城の明かりは消え、 廊下は薄暗く不気味な静けさに包まれていたのです。
レトルトの胸の奥に小さなざわめきが広がります。
そのとき、レトルトは気づきました。
一番奥にある両親の部屋の扉が、
わずかに開いていることに。
レトルトは息をひそめながら、
おそるおそるその扉へと近づいていきました。
⸻
「父さん……? 母さん……?」
レトルトは、そっと扉を押し開けました。
けれど、呼びかけに返事はありません。
部屋の中は暗く、 手探りで一歩ずつ進んでいきます。
そのとき何かに足を取られら レトルトは小さく声をあげて床に倒れ込みました。
「……いたっ」
体を起こした拍子に、手が床に触れ 指先に感じたのは、生暖かく――ぬるつく感触でした。
次の瞬間、雲が切れ月の光が差し込みます。
淡い光に照らされた部屋の中で、
レトルトは自分の手に付いたそれが、血であることに気づきました。
そして――
足を取られたそれが、 床に倒れた両親の体であったことにも。
レトルトは、一瞬何が起きたのか理解できず
その場に固まってしまいました。
けれど、次の瞬間。
胸の奥から、じわじわと何かが込み上げてきます。
それは、恐怖と――悲しみでした。
「父さん……! 母さん……!」
声を張り上げても、返事はありません。
どれだけ呼んでも、 どれだけ揺さぶってもも
両親が動くことはもう二度とありませんでした。
冷たい床の上に、横たわっているだけでした。
ただ、静かに一一
その日を境に、レトルトの顔からは生気が消えてしまいました。
笑うこともなくなり、
大好きだった森へ足を運ぶこともなく、
苦手だと笑いながら向き合っていた勉強にも、手をつけなくなりました。
ただ、空を見上げては 静かに涙をこぼすばかりの日々。
――けれど、王を失った国は不安に包まれていました。
民は国の行く末を案じ、 安泰を願うあまり、
やがて一つの声を上げ始めます。
――レトルト王子を、国王に。
幼いレトルトの意思など、誰も気に留めることはありませんでした。
気がつけばレトルトは、 幼くして王国の王となっていたのです。
国民の歓声に、レトルトは作り笑いを浮かべ、
小さな手を振りました。
懸命に王として振る舞うその姿の裏側を、 誰一人として見ようとはしません。
胸の奥であげている悲鳴に、 耳を傾ける者もいませんでした。
――レトルトは、ひとりぼっちでした。
そして、そんなレトルトに追い打ちをかけるように ひとりの人物が現れました。
それは、叔母の存在でした。
王妃の姉であることを理由に、
「幼い王には、母の代わりが必要だ」として、
レトルトの世話係を任されることになったのです。
けれど――
そこに、愛情などありませんでした。
叔母は、かつて自分よりも幸せを手に入れた妹を ずっと心の奥で憎んでいたのです。
そして今。
その憎しみは、 幼いレトルトへと向けられていました。
すべては、 この国を自分のものにするために。
叔母はそのためだけに レトルトへと近づいたのでした。
国民の前での叔母は、 優しく朗らかな女性でした。
孤独な王であるレトルトを支え、守る存在として 誰の目にも理想的に映っていたのです。
――けれど。
ひとたび人の目がなくなれば、 その態度は一変しました。
「おい、レトルト。お前なんか、誰からも必要とされないんだよ」
「お前のせいで、両親は死んだんだ」
「あんたの親は最低だな。死んで当然だ」
「あんたのことなんか、これっぽっちも愛していなかったんだよ」
冷たい言葉はレトルトへ容赦なく降り注ぎます。
繰り返し、繰り返し。
否定され続けるたびに幼い レトルトの心は、少しずつ 静かに壊れていったのです。
今日もまた、叔母からの罵声と否定を浴びせられ、 レトルトはふらふらと自室へと戻っていきます。
この頃のレトルトは、 もう以前のように涙を流すことはありませんでした。
叔母の言葉に抗うこともなく、 ただ虚ろな目で静かに頷くだけ。
まるで、糸で操られる人形のように。
その反応の薄ささえ気に入らないのか、
叔母はさらに声を荒げ、 レトルトに言葉を浴びせ続けるのでした。
そんな時でした。
民の間で ある“呪い”の噂が静かに囁かれるようになりました。
その呪いにかかると、その人間の 心は静かに失われていくのだといいます。
喜びも、悲しみも、怒りも。
すべての感情が薄れていき、 やがて何も感じなくなってしまう――。
そして、その証のように。
腕にはじまる不気味な模様が、 少しずつ体を侵していくのだと。
その模様は、ゆっくりと広がり続け、
やがて全身に刻まれたとき――
その者は、命を落とす。
そんな、恐ろしい噂でした。
レトルトは、夜空を見上げながら優しかった父と母の事を思い出していました。
あたたかく、穏やかな日々。
胸の奥に、かすかな記憶がよみがえり――
レトルトの頬をひとすじの涙が伝いました。
それは、ずいぶん久しぶりのことでした。
――そのとき。
不意に、激しいめまいに襲われます。
視界がぐらりと揺れ、 立っていることすらままならない。
込み上げる吐き気。
頭を強く打ちつけられたかのような鋭い痛み。
レトルトは耐えきれず、 その場に崩れ落ちました。
レトルトは床にうずくまり、 必死にその苦しさに耐えていました。
きつく握りしめた拳は小さく震え、 額からはじわりと汗がにじみ落ちていきます。
荒い呼吸の中で、
ふと――自分の腕に視線を落としました。
そこには見覚えのない模様が、 うっすらと浮かび上がっていたのです。
不気味にレトルトの腕に巻き付く模様。
「……なに、これ……?」
感情が消え声を発する事のなかったレトルトが久しぶりに発した言葉はやさしいものでも、あたたかいものでもなく不気味な模様への不安の声でした。
続く
コメント
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1回叫ばせてもらいます。 ア"ア"ア"ア"ア"(¯□¯ )ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ ...ふぅ、失礼しました。 え!まじですか!?ほんとですか?! すごく凄く凄いです(?) ほんとに私が想像してた物語で、すごく構成が自分では考えられなかったのに、すっ...と自分の中に入ってきてすごく嬉しです( ߹꒳߹ ) ああああ、これの為に今日は生きようと思います...ありがとうございますっ