テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ここなの? ナイトが行ってる川って」
ストーンズの5人は、大我の捜索のために川の土手にやってきた。シェアハウスからもほど近い場所にある。
樹の質問に、高地がうなずく。
「うん。だって、前俺がナイトの散歩に付いてったときもここ来たもん。『お気に入りなんだよね』って言ってたし」
「でも…いそうではないよね」
慎太郎は言う。
河原では一般人——魔法を持たない人々が、昼下がりの時間を過ごしている。大我の姿はない。
「じゃ、怪しそうな人は?」
ジェシーが先陣を切って、下のほうへ降りていった。
「たとえば黒ずくめの奴とか……いないな」
「とりあえず警察行こうぜ。そのほうが手っ取り早いだろ」
北斗はくるりと踵を返す。4人も続いた。
近くの警察署に辿り着くと、高地が身分証明書を取り出した。
「あの…実は今、仲間を探してまして」
制服警官は、突然のファンタジアの来訪に驚く。
「仲間、ですか」
「ええ。コードネームはモルガナイト。出動命令は出ていなかったんですが、出先で行方不明になってしまったみたいで。このあたりで見かけませんでしたか」
警察官がまじまじと見つめるその身分証は、ほかのメンバーもみんな持っているものだ。それと、スマホに表示された大我の顔写真を交互に見やる。
「ファンタジアなんて初めて見たな」とつぶやいて、立ち上がった。
「ちょっと署長に確認してきますね」
やがて、スーツを着た男性が5人のもとにやってくる。
「もしかすると、捜査員が探しているファンタジアの方ですか」
樹がすぐにうなずく。「そうです。僕らはメンバーで」
「あの、もしかすると悪の組織か何かに連れ去られたんじゃないかと心配してるんですけど」
ジェシーの切羽詰まった声に、署長の男性は腕を組んで唸る。
「今のところ、目撃情報などは何も入ってきてません。何かあれば、すぐに捜査員へ知らせるようにはなってるんですが…」
そうですよね、と北斗がつぶやく。
「僕らでできることってありませんか?」
そう慎太郎が言った。署長は困ったように眉尻を下げ、5人を見回す。
「捜査に関しては、こちらに一任してください。皆さんの身に万が一のことがあったら、警察としても顔が立ちませんので…」
渋々とうなずいたのは高地だ。
「…わかりました。突然すみませんでした」
5人は一様に暗い顔で、来た道を戻る。
でもこれで納得なんてしていなかった。
取り逃がした獲物は、逃げた先まで追う。徹底的にやっつける。
それが彼らのやり方だった。
だから大我のことも、絶対に見つけ出すと。
「……諦めてなんかいねぇよな?」
樹のいつになく低い声。黙ったまま、4人はそれぞれうなずく。
「何があっても、絶対助ける」
端的にはっきりとジェシーは宣言する。
「俺らがやらなくてどうすんだよ」
慎太郎に続いて、北斗も「もちろん」と応える。
が、そのあと探るように高地がつぶやく。
「…もしかしてジェットが消したとか?」
「んなわけねーだろ! なんでチームメイト消すんだって」
束の間、5人の間に笑い声が響く。
そのとき。
スマートフォンがけたたましいアラームを告げた。敵の襲来の合図だ。
「フィア区○○交差点付近で、フェイラー2体による負傷者1名だって」
ジェシーの声で、瞬間ピリッとした空気が走る。
「ちっ、こんなときに…」
北斗はこそっと舌打ちしながらアラームを解除する。「車に置いてる予備の武器、使っちゃうか」
そして車に飛び乗り、支給されている剣や銃を装備して、樹のアシストに従ってフェイラーが発見された場所へと向かっていった。
初動の役割を担っていた大我の不在。
その穴を埋めなければいけない。全員の表情は、緊張を帯びていた。
続く
コメント
1件
最高ですよ 続き楽しみに待ってます!!!