テラーノベル
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5人が目的地の交差点に着いたとき、そこには救急車が停まっていた。
しかしフェイラーが徘徊しているため、まだ救急隊員は待機している状態だ。
現場に漂う、密度の高い緊張感。それを振り払うように高地が真っ先に運転席を下り、敵へ突進していく。
「行くぞ!」
大我がいれば、フェイラーの戦意を喪失させて力を弱められる。チームのほうの人数も2、3人で足りるくらいだ。しかし今の相手はノーダメージ。油断大敵だ、とそれぞれ気を引き締める。
最初の高地の感電にも屈せず、2体はまた起き上がる。そこに慎太郎が操る剣が振り下ろされ、1体が倒れた。
メンバーがフェイラーのおとりになっている隙に、怪我人は病院に搬送されていく。
それを見届けて安心したのも束の間、ジェシーの炎が残りのフェイラーを包んだ。激しく燃え上がる火柱を樹が一気に鎮め、最後に北斗がとどめの弾丸を撃ち込んだ。
「よっしゃ」
仕事を完了し、5人は軽くハイタッチを交わす。そして処理班とバトンタッチだ。
「ちょっといつもより敵に体力あったね、やっぱナイトの魔力がないから」
軽く息を切らしながらジェシーは言う。
「確かに。あいつは不可欠だよ」
慎太郎が笑って車に乗ろうとした、その刹那。
「うっ」
突然後ろにいたジェシーがうめき声を上げてうずくまった。振り返ると、どこからかやってきたのかフェイラーが眼前で牙を剥いている。
「うわぁっ——」
ほとんど悲鳴のような声を上げながら、樹が手をとっさにかざす。視界が水色の光で埋め尽くされた次の瞬間、フェイラーが崩れ落ちた。
「はあ、はぁ、心臓、当たった…?」
呼吸を荒げる樹に、もう一度とどめを刺した北斗が「うん。心臓凍ってるっぽい」
そしてジェシーを振り向く。高地が悲痛な声で叫んだ。
「左肩噛まれてる、どうしよう!」
「くそっ、なんでこんなときにナイトいねぇんだよ」
樹の吐き捨てるような言葉は、4人が同時に思っていること。
しかしどうにもならないことも、全員がわかっている。
「……応急処置してから、病院だ」
北斗が言って、車に乗り込む。置いてあったタオルをジェシーの肩にあて、止血した。
「どう? 痛い?」
「…ズキズキする…」
4人の顔が、一様に暗くなった。高地が車を発進させて最寄りの病院へ向かう。
「頑張れよ、ルビー」
慎太郎の声で、苦悶に満ちていたジェシーの顔が心持ち和らいだ。
「ナイト、やっぱり繋がらない?」
病院の待合室。処置室にいるジェシーを待つ間、樹が訊いた。
「んー…無理だ。サファイアも繋がんないなら俺もダメだろうな」
高地が答え、スマホをしまう。相変わらず、大我とは音信不通の状況が続いている。
「トパーズでも出ないなんて」
北斗がうなだれる。
「そんな顔すんなよ、ジェット」
「ラルド…」
そんな中でメンバーの負傷もあり、ストーンズの士気は最低に近かった。いら立ち、不安、恐怖、そしてやるせなさ。その全てが4人の間に漂って渦を巻いている。
するとそこへ、目の前の廊下を親子が通りかかった。母親は小さな女の子の手を引き歩いている。
が、女の子は通り過ぎることなく4人の前で立ち止まる。母親も振り返った。何事かと、顔を伏せていた北斗と慎太郎は首をもたげる。
「お兄ちゃんたちの目、宝石みたい!」
女の子の口から放たれた言葉は、その場と矛盾して無邪気さに満ちていた。彼女の瞳は好奇心に輝いている。そして、4人4色の彩りを持つ彼らの瞳へと視線は注がれていた。
「え…」
呆然とするメンバー。母親が慌てて頭を下げる。
「すいません、勝手なことを。こらユミ、指をささない」
そして連れて行こうとするが、よほど興味をそそられているのかユミと呼ばれた女の子は頑として動かなかった。
「ねぇ、お兄ちゃんたちってもしかして魔法使い?」
続く
コメント
1件
最高ですねー!!!