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それでは、
どうぞ!
文化祭前日。
体育館でのリハーサルが終わり、私は衣装の最終チェックをしていた。
うん、我ながらよくできた気がする。
💜「都愛〜!!」
また桜花。
彼女は手を振りながら駆け寄ってくる。なんでそんなに嬉しそうなんだ…?
💚「どうしたの。」
💜「今更、緊張してきちゃって…都愛と一緒なら、落ち着くかなって」
桜花は私の袖を軽く引っ張って、困った顔をする。
、本当に表情がころころ変わる子だ。
💜「やばい、…めっちゃ緊張してきた。」
💚「大丈夫だって、桜花ならできるよ。」
💜「本当に?都愛、桜花のこと信じてくれてる?」
💚「当たり前。」
気付けば、そう口から出ていた。
桜花は驚いたように目を丸くして、ふっと笑った。
💜「なんか、そう言われると、すごく安心する。」
そんな風に言われると、私の方が困るのに。
桜花はなんにも分かってないんだ。
💚「、はいはい。早く帰って休みなよ。」
💜「うん!ありがとっ!!」
桜花は手を振りながら、教室を出ていった。
残された私は、大きく息を吐く。
__なんで、こんなに胸が苦しいのだろう。
文化祭当日。
桜花は舞台の上で、いつもよりもずっと真剣な表情をしていた。
物語はクライマックス。
劇中、桜花の演じる主人公が相手の男の子へ想いを告げるシーンだった。
💜「ずっと、…好きでした。」
彼女は、まっすぐ目を見つめて言った。その表情が、その顔が、どうしても本気に見えた。
そのはずなのに、なのに彼女の瞳は私を捉えてるようだった。分かっていたつもりだった。本当は、。
__私を見ているわけじゃないのに。
それなのにどうしてこんなに心臓が痛いの?
観客がどっと沸く中、私はひとり俯くことしかできなかった。
その日の打ち上げで、私は結局桜花と話すことができなかった。
桜花は、周りのクラスメイトに囲まれて褒めちぎられていたのだから仕方がない。とそう自分に言い聞かせた。相手役の男の子は満更でもない顔をしている。それをその友人たちが揶揄うような瞳で見ている。
全部が全部うざく見えた。
ああ、帰りたい。
帰り道。
1人で帰路に着こうとすると、不意に呼び止められた。
声の主は桜花だった。
私は決まりが悪く、少しだけ唇を噛んだ。
💜「都愛!」
💜「あのさ…、劇どうだった?」
どうって、そんなの__。
💚「すっごく良かったよ…、。」
言葉を慎重に選びながら、私は精一杯の本音を伝えた。
桜花は少しだけ、驚いたように私を見て、それから少し恥ずかしそうに微笑んだ。
💜「、都愛に届いてたらいいな…私の言葉。」
💚「え、?」
桜花の言葉の意味を考える前に、『また明日!』と駆けて行った。
夜の風が頬を撫でる。
胸の奥が、さっきよりだんだんあったかくなっていくのがわかる。
___もしかして、私だけじゃない?
そんな期待をしてしまう自分が、少しだけ悔しかった。
裏方にすらスポットライトを当ててしまう桜花は、本当の物語の主人公だと改めて感じさせてくれた。
end…