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「最近、柴崎さんの友達のイケメンくん来ないね」
直前は何を話していただろう。廣瀬さんの一言は、会話の中身さえ一気に流すほどの効果があった。柊のことだと思われる内容だったからだ。
あれから柊はパッタリと来なくなった。
言いつけを守っているのか、それともめんどうと分かって関わるのを止めたのか、どちらが正解かあたしにはわからない。
ただ、エミちゃんのインスタを見ると、柊との投稿は何故か消されていて、更新されるのは友人との楽しそうな投稿ばかりだった。すごく充実しているらしい。
セフレという関係を一度見直したくて、一方的に距離を作ったくせに、結局柊のことが気になって欠片を探し回ってる。
もはや友達と呼んでいいのかも、わからない。
「……柊は、友達じゃないですよ」
「え、じゃあ彼氏?」
「彼氏でもないです」
「彼氏でもないのに、普通二時間とか待つか?」
廣瀬さんは聞き捨てならないことを言うから「え?」と次の言葉を催促すれば、廣瀬さんは瞳をぐるりと宙に漂わせた。
「何時だったかなー……先月?休憩中、一服しようって外の喫煙所行ったら既にあのイケメンくんが居てビビったよ。たまたまかもしれないけど」
「な、なんでその時教えてくれなかったんですか!?」
「……あ。今猛烈に思い出したけど、そういや口止めされてたんだ。ごめん、今の忘れて」
もうしっかり聞いたから、無理に決まっている。
この辺りに用事でもあったのかな、家に戻る時間が面倒で、ずっと待ってたとか、そういうこと?
……だったら、店の中に入って待っていればいいのに、柊の行動の意味がわからない。廣瀬さんから思わぬ柊砲を食らったおかげで、あたしの中にある柊不足のランプがチカチカと灯った。
もうすぐ、会わなくなって1ヶ月くらい。
テストも無事に終わったし、赤点はひとつも無かったし、プールにも心置き無く行っている予定だったのに、それも全部無くなりそうで、切ない。
やっぱり、あやふやなままでも、我慢して続けるべきだったかな。
……柊に会いたい。
「今度はどうしたの?柊くん攻略法が不調なの〜?」
休憩中、テーブルにべったりと項垂れていれば、隣の芽依は賄いのカレードリアを食べながら、挨拶のようなニュアンスで今まさにぶつかっている問題を言ってくる。
こちとら、柊不足が重なって「そうなの〜」と気軽に泣きつきも出来ない。
「もう攻略出来ないかもしんない……」
「え?距離置こう作戦中じゃないの?」
「作戦じゃないよ!あたし、そんな器用なこと出来ないし……連絡のタイミングわかんないし……柊からの連絡もないし、どうしていいか分かんない」
「何があったの?柊くん、なんかやらかした?」
「全然、何も。ただあたしがワガママ言っただけで、柊は何も悪くないの」
「具体的に教えてよ!」
白山小梅
白山小梅
12
「実はあたし……柊と、セフレで……」
詰め寄る芽依に、ごにょごにょと気まずそうに言うと「は!?そうなの!?」と芽依は目を大きく見開いた。綺麗に施されたメイクが伸びて、いつもの芽依らしからぬ顔で、ちょっと元気になる。
のは、束の間で。すぐにドボンと憂鬱の沼に浸かる。
「まえ、芽依が言ってたじゃん?あたしにセフレ向いてないって。……確かにその通りで、寝る度に柊のこと好きになって。一緒にいるのが苦しくて、ちょっと離れたいって言ったの」
今まで、ずーーっと黙っていたことを吐き出すと、芽依はじっくりと頷いてくれる。
他人である自分と、同じように悩んでくれる人がいるって、実はすごくありがたいと、こういう時、芽依の存在の大きさをしみじみ思う。
「セフレとしても恋愛としても上手くいってないってダブルパンチじゃん。……あ、そうだ。今夜バイト終わってひま?」
「うん、おかげさまで、なんもない」
「じゃあさ、こういう時は、ぱーっと飲も!芽依、いーいとこ知ってるんだ」
「いいとこ?」
首を傾げると、ありがたい存在である芽依は「いいとこ」とハートをくっつけるだけだった。