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うえーんと泣き声が聞こえる。志保が泣いているのだ。

「うぅ……なんで、なんでこんなに酷いことするの……」

志保の目線は今日のいじめで被害にあった教科書を見ていた。その教科書はビリビリに破られ汚され落書きをされ、見るも無惨な状態になっている。

そう、志保はこうやって泣いていたのだ。家に帰って。今まで何があっても耐えて我慢して来た志保は毎日、家に帰って初めて弱みを見せるのだ。

もちろん親にはその事、いじめられているとは話さなかった。相談しなかった。ただでさえ仕事や家事やらで忙しい親に余計な心配、負担をかけたくなかったからだ。本当は話した方がいいに決まってる。志保の本音はそう思っていた。だが、自分が耐えれば良いと思っていた。自分が我慢すれば、親にも心配や負担をかけないから。でもそうやって行くとどんどん心が追い詰められていくのを感じていた。毎日のように涙が出る。毎朝普通に起きると憂鬱になる。もしも今日目覚めなかったら、どれだけ楽だろうか。そんな事を志保は毎朝考えていた。

また変わらぬ今日が来る、この十一文字が志保にとってどれだけ苦痛で地獄かは、計り知れなかった。


はっとして志保が目覚める。どうやらうなされていたようで、荒い息を吐き、汗が信じられないほど出て、心臓がバクバクと鳴っている。だが、それが夢でうなされているのか今日にうなされているのか、それは志保も分からなかった。

とりあえず、学校に行くことにした。本当は行きたく無いが、親に心配をかけないためにも学校には普通に行かなければばならない。

親に心配かけないためにも、絶対に行かなければならなかった。

ピンポーンとインターホンが鳴る。まさか反志保グループ達が家を突き止めて来たかと思いながらインターホンカメラの画面を見るとそこには、陸斗がいた。

玄関のドアを開け志保がどうしたのと言うと陸斗は左派の手をぎゅうっと掴んで、

「ねぇ、志保ちゃん。なんで君は色々と酷いことされても言い返さないの」

と言う。

なんでって言われてもなぁ、そう志保は思った。

もし、言い返したり仕返しなどで手を出したとなればもっと酷いことをされるだろうし、反志保グループが先生に言いつけて志保が悪者になるという構造が出来上がってしまうかもしれないのだ。それこそ親に多大な迷惑をかける事になるだろう。そう思った。

「言わないよ。そんなの。お前になんて」

そう志保が言うと陸斗がガッカリした顔をして

「なんで……」

と言う。

「で、なんでわざわざウチに来たの?」

そう言うと陸斗が

「そうそう、志保ちゃん。一緒に学校行こうよ」

そう言った。『陸斗と一緒に登校するなんて絶対にあいつらになんか言われるよ』そう志保は思ったが、実際の所、陸斗と一緒にいるとなんだか張り詰めた心が穏やかになるのだ。志保にとっての心安らげる時というのは陸斗と一緒にいる時だった。

「こうやって誰かと一緒に学校行くのも悪く無いでしょ」

陸斗が歩きながらそう言う。

それに対して志保はこくりと頷くだけだった。

いくらか歩いていると志保がぐぅーと背伸びをして

「あー、やっぱりお前と一緒にいると落ち着く」

と言った。

陸斗はニコッと笑みを浮かべた。

そしてその瞬間、志保と陸斗は苦虫を噛み潰したような気分になった。

反志保グループの奴らが待ち構えているのだ。

「おー、志保、陸斗。おはよー。」

この言葉だけでも何かしらの圧を感じた。

「おはよ……なに、私になんか用?」

そう言うとグループの奴らがどっと志保達を囲む。

そこから今日のいじめが始まった。

まずはいつもの挨拶と言わんばかりに暴力から始まった。そしてその内に鞄を漁られ、教科書を奪われ、鉛筆をバキバキに折られた。

志保と陸斗はグループの奴らに捕らえられ、ただ見ることしか出来なかった。

「じゃあな、志保。続きは学校で。教科書は今日の帰りに返してやるよ」

そう言ってバタバタとグループが学校に行く道を走って行く。

「志保ちゃん……ごめん。何も出来なかった」

陸斗がそう言って頭を下げる。

「いいよ、別に。私が助けてくれって言った訳でもないし……」

そう志保が言って陸斗の顔を見ると、陸斗の顔には大粒の涙が浮かんでいた。

「ええっ!何アンタ、泣いてんの」

そう志保が言うと陸斗は『だって……だって』と言いながらわんわん泣いてしまった。

「ちょっと。何泣いてんのよ。泣きたいのはこっちだよ」

そう志保が言った。

なんとか陸斗を宥めて学校に向かっている途中。

志保はこんな事に気付いた。

「そう言えばさ、陸斗。なんで私の家の場所分かったの?」

そう言うと陸斗が

「ん、それはねー。俺のお母さんから聞いたの」

陸斗の母親から聞いた。この言葉を聞いて何故陸斗が志保の事をこんなにも気遣え守ってくれるか少しわかった気がした。

実を言うと志保の母親と陸斗の母親はとても仲が良いのだ。

たぶんそういうことなんだろうな、と志保は思った。


「てな事があったよねー」

そう志保が言うと

「あったあった。俺が志保の事守れなくてギャン泣きした事」

と陸斗が言った。

「いやー、マジで。この時の事思い出すと絶対に私のお母さんと陸斗のお母さんが仲よくてよかったわーって思う」

そう言いながら志保がお腹をさすっていると内側からとんという感触があった。

「あっ、蹴った」

そう志保が言うと陸斗が

「俺らの子は元気だね」

と言った。

そう、今志保の体の中には新しい生命が芽生えているのだ。そしてその子は新しい世界に早く出たいのか良く動く子だった。


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