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いつもの距離感だったはずなのに
ふみくんはすごい。
振り付けを考え、グループをまとめ、どこまでも完璧なリーダー。
最年長としての責任感がありながら、誰よりも努力家で、パフォーマンスへのこだわりも強い。
ダンスの細かい動き、フォーメーションの配置、ステージでの立ち位置まで、すべてに気を配っている。
FUMIYAはずっと彼を尊敬していたし、その姿勢を心からかっこいいと思っていた。
だけど――最近、FUMINORIがどこかよそよそしい気がする。
***
「おはようございます!」
楽屋に入ると、すでに何人かのメンバーが支度をしていた。
KEVINがソファに座って歌詞の確認をし、MORRIEは鏡の前で軽く髪を整えている。
奥にはFUMINORIの姿もあった。
「おはよ、FUMIYA!」
KEVINが顔を上げて、にこやかに手を振る。
「おはよう、FUMIYA」
MORRIEも短く挨拶を返しながら、ヘアセットを続けていた。
「おはようございまーす!」
FUMIYAはにっこりと笑いながら、いつも通りのテンションで楽屋に入る。
そして、FUMINORIの方へと視線を向けた。
「ふみくん、おはようございます!」
ほんの少し、期待するような気持ちがあった。
でも――
「……おはよう」
FUMINORIは振り向きもせず、手元の携帯に視線を落としたまま、少し遅れてそう返した。
――なんか、冷たくない?
FUMINORIはもともとクールなタイプだし、リーダーとしてやることも多い。
考えごとをしているときは、周りが見えなくなることだってある。
それはFUMIYAもよくわかっている。
でも、それでも。
他のメンバーと話しているときのFUMINORIは、もう少し自然だった。
「ねえ、リーダー、The Oneのセリフさ、もうちょっとアレンジしてもいい?」
KEVINが携帯を片手にFUMINORIに話しかける。
「うん、そこは多少ニュアンスを変えてもいいと思う。でも、演出の意図は崩さないようにしないとな」
FUMINORIはすぐに顔を上げ、KEVINの質問に的確に答える。
「なるほどね、ありがとう!」
KEVINが笑うと、FUMINORIもわずかに口元を緩めた。
(……あれ?)
さっきの自分とのやり取りとは違う。
KEVINとは普通に会話が続いている。
「FUMINORI、これ髪型どう思う?」
今度はMORRIEが話しかける。
「うん、いいんじゃないか? 衣装とのバランスも考えると、あまり派手にしすぎない方がいいかもしれないけど」
「そうだよねー。じゃあ、このままいこうかな」
MORRIEの問いにも、FUMINORIは当たり前のように応じていた。
なのに、FUMIYAが話しかけるときだけ、なんとなく素っ気ない気がする。
(気のせい……なのかな)
気にならないふりをしながら、自分の席に荷物を置く。
でも、心の奥では小さな違和感がくすぶり続けていた。
「前はもっと俺に話してくれたのに」
ふと、そんなことを考えてしまう。
俺だけがそう感じてる? 考えすぎ?
KEVINとMORRIEが何気なくFUMINORIと会話をしているのを横目で見ながら、心の中でもやもやが広がっていく。