別に愛されたことなんて
『なぁ、お前。名前は』
伊弉冉の所の出来損ないをこちらに派遣しろと言ったら案の定あの娘を渡してきた。
『その話やめて』
『分かった。覚えておこう。』
意味が無いのに。調べたらすぐに出てくる。
『ここの家は自由に使っていい。だが外は出るな。お前の身の為だぞ』
言い方が少し荒いかもしれないが、ここまで言わないと逃げるだろう。
『お前の目盗んで出てってやるよ!』
睨まれたが、そんな事は気にしない。助けたのはこちらなのだから。
『じゃあ出ていけばいい。だが何処に行くつもりだ?』
大人気ないかもしれないが、じっと見つめる。
『…逃げるも逃げないも俺が決めることだし。』
『まぁそうだな。選ぶ権利はお前にある。勝手にしろ』
『…、?』
選択を出されたのは初めてなのだろう。結局悩んでここに居るだろうな。
『俺は仕事しなきゃいけないんだ。部屋に戻る』
『こっ、拘束とかしなくていいのかよ!』
急に謎めいた質問をされて困ったが、いつも閉じ込められた時は鎖を付けられていたのだろう。
『別に、お前を拘束しようとしてないからな。だから言っただろう。好きに出て行けと』
そのまま振り返りもせず、部屋を後にした。
『紙…?』
本に囲まれたこの部屋に1枚紙が落ちていた。
『観音坂独歩 ラップアビリティ ストレスが最高値に達したら1種の無敵状態になる 魔法の無効化……』どうやらさっきの男のものだろうか。あいつは不思議でしかない。何故俺なんかを助けるんだ。だけど、”観音坂の所は気をつけろ、本当に扱き使われる”と言われてきた。警戒は最大にしておかないとだな。
カタカタカタカタカタ…
物静かな部屋にパソコンのタイピングの音だけが響く。
何故か前より捗るのは何故だろうか。
…まぁ、不思議な事件にあったら筆も乗る、ということか。
あいつは不思議でしかないからな。
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