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第58話『怪物たちの軍議』
龍哭谷東口。
秦軍十四万が到着したことで。
戦場の空気は一変した。
虹国軍三万。
秦軍十四万。
計十七万。
もはや一方的な包囲戦ではない。
なおきりたちは秦軍本陣へ呼ばれた。
巨大な天幕。
その中央には地図。
そして。
王翦。
桓騎。
なおきり。
じゃぱぱ。
シヴァ。
虹国と秦の首脳が集結していた。
じゃぱぱは王翦を見る。
「助かったわ。」
王翦は静かに答える。
「貸しを返しに来ただけだ。」
合従軍戦。
虹国がいなければ秦は危なかった。
その恩を返しに来た。
一方。
桓騎は椅子に座ったまま笑っている。
「しかし面白ぇな。」
「四天王だか何だか知らねぇが。」
「俺の獲物にしてやるよ。」
なおきりが苦笑する。
相変わらずだった。
その時。
王翦が地図を指差す。
「問題は蒼厳だ。」
全員が真剣になる。
蒼厳。
黒龍四天王第一席。
十五万を完全統率する怪物。
王翦は続ける。
「黒牙。」
「黄雷。」
「この二人は強い。」
「だが蒼厳は別格だ。」
なおきりも頷く。
遠くから見ただけで分かった。
あの男は危険だ。
王翦は静かに言う。
「おそらく。」
「私と同じ種類の人間だ。」
天幕が静まる。
王翦と同じ。
つまり。
戦場全体を見る大将軍。
武力ではなく。
戦略そのもので勝つ男。
桓騎が笑った。
「面倒くせぇな。」
「じゃあ殺せばいい。」
王翦は無視した。
そして地図へ新たな線を引く。
「蒼厳は包囲を維持する。」
「なら我々は逆包囲する。」
なおきりが目を見開く。
逆包囲。
包囲されている側が。
逆に敵を包囲する策。
大胆だった。
しかし。
王翦ならやる。
その頃。
黒龍軍本陣。
蒼厳もまた軍議を開いていた。
黄雷。
黒牙。
そして各将軍たち。
報告が届く。
「秦軍十四万到着。」
「王翦、桓騎を確認。」
黄雷が笑う。
「ようやく大物が来た。」
黒牙も嬉しそうだった。
「退屈じゃなくなった。」
だが。
蒼厳は地図を見ている。
長い沈黙。
そして。
初めて言った。
「撤退する。」
全員が固まった。
黄雷ですら驚く。
「は?」
黒牙も目を見開く。
「撤退?」
蒼厳は頷く。
「ここは勝てる。」
「だが損害が大きい。」
「目的は虹国滅亡だ。」
「ここで消耗する必要はない。」
静寂。
誰も反論できない。
それが正論だからだ。
しかし。
黄雷だけは笑った。
「俺は反対だ。」
空気が変わる。
黄雷は立ち上がる。
「せっかく面白くなった。」
「逃がす気はない。」
蒼厳が初めて黄雷を見る。
二人の怪物が睨み合う。
黒龍軍内部に。
わずかな亀裂が生まれ始めていた…。
そして。
遠く南西では。
まだ姿を見せていない第二席。
炎獄将軍が。
新たな戦火を起こそうとしていた…。
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コメント
1件
おお、第58話、読み終えました。秦軍14万到着で戦況が一気に動きましたね。王翦が「私と同じ種類の人間」と蒼厳を評した場面、ゾッとしました。お互い戦略で勝つタイプ同士の心理戦、これからが本当に楽しみです。そして黒龍軍内部の亀裂——黄雷の反乱心、これは大きな火種になりそうです。まだ見えぬ炎獄将軍の動向も気になる…。続き、待ってます!