テラーノベル
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——再構築、完了。
「…………ッ……!」
硬い床の上で、カナデは目を覚ました。
体は冷たく、喉が痛い。息が、ちゃんとできない。
目が覚めてすぐ、「今、どこ?」よりも前に来た感情は——
「怖い」だった。
息を吸って、吐こうとして、うまくできない。
口をパクパクさせながら、彼は壁にもたれてしゃがみこんだ。
「っ、う、あ、あっ……!」
胸が締めつけられる。視界が滲む。指先が冷たい。
それは“彼にとっての日常”だった。
——パニック発作、来てる。
どうしよう。わかってるのに、止められない。動悸がして、喉が塞がる。
頭の中が真っ白になる。
「落ち着け……落ち着け、俺……いつも通り……吸って……数えて……」
だが、数えようとした瞬間——ドアが爆音を立てて、吹き飛んだ。
「うわぁぁぁぁ!!???」
飛び込んできたのは煙と火花と、銃声。
——バンッ!!
「しゃがめ!!」
聞こえたのは、少女の声。
蕾だった。
彼女は一瞬も迷わず、入ってきた“何か”に向かって、躊躇なくトリガーを引いた。
その背後から、もう一人のスーツ姿の男——
「お、おい待て!! ちょっ、おい、これやばい奴だろ!? 俺、職員じゃ無理だって!!」
城崎トオルが、目を剥いて部屋に駆け込んでくる。
「なんで俺、戦闘員ポジションみたいになってんの!? 絶対違うでしょ俺の立場!!」
——その瞬間、壁の穴から黒く蠢く何かが飛び出した。
生き物とも機械ともつかない“ノイズの塊”。
動きは異様に速く、歪んでいて、目があるのかもわからない。
「無理無理無理無理無理!!」
トオルは机の裏に飛び込んで伏せる。
蕾は冷静に、二発目を撃った。が、弾がそれた。
そして、“ノイズの塊”がカナデに向かって、動いた。
「やだ……っ来ないで……来ないで……!」
カナデの手は震えて、何も掴めない。
体は硬直し、涙が止まらない。
「誰か……助けて……!」
——そのとき。
「ッ、くっそおおおおおお!!」
トオルが叫びながら、ノート(手帳)をノイズに投げつけた。
パァン!という紙の音だけが響いた。
「俺の書類をなめんなよ!!!!」
意味があるのかは不明だったが、ノイズは一瞬、動きを止めた。
その隙に、蕾が銃を再装填、至近距離から一発撃ち込む。
命中。
“ノイズ”は、金属音を立てて弾け飛び、黒い煙となって消えていった。
……静寂。
カナデはその場に崩れ落ち、びくびくと震えながら、涙をこぼしていた。
トオルは深いため息をついて、膝をついた。
「……無理。俺、戦いとか無理。マジで書類係だし。ていうか、手帳……大破……俺の……」
蕾は、一瞬カナデを見たが、何も言わずに銃の弾を確認するだけだった。
カナデは、泣きながら震え声でつぶやく。
「……ごめん……ごめんなさい……俺、邪魔……だったら、いなくなるから……」
その言葉に、トオルは苦笑して言った。
「いや……邪魔じゃないよ。俺もたぶん、ここじゃ一番の“いらない人材”だと思ってたし……」
「……?」
「でも、生きてるってだけで……もう、けっこう頑張ってるじゃん、俺たち」
カナデは、少しだけ顔を上げた。
トオルは、破れた手帳を拾い上げながら、言った。
「とりあえず、名前とか……教えてもらってもいい?」
カナデは、しばらく黙っていたが、小さく答えた。
「……カナデ、です」
「カナデくんね。OK。じゃあ、俺はトオルで、そっちは……まあ、なんか怖い人」
「撃つよ」
「はいすみません!!」
3人が、ようやく同じ部屋で立っていた。
コメント
1件
今回も神ってましたぁぁぁぁぁあ!!!!! うはぁぁぁぁうちの子だ!!かちいいいいいぃ((( 最高すぎるべ...ウヘヘヘヘヘヘ( ◜ω◝ ) てかてか、"ノイズ"とは一体何なんだろうな??気になる(っ ॑꒳ ॑c) 次回もめっっっっっさ楽しみいいぃ!!!!!!