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夜。
花子の部屋。
机の上にノートが広がっている。
花子はコーヒーを飲みながら
今日のログを見ていた。
村田との週1デート体験。
本社のヒアリング。
そしてハヤト。
花子は静かにつぶやく。
「面白いですね」
誰もいない部屋。
彼女の思考はますます止まらなくなる。
ノート
花子は紙に三つの円を書く。
1つ目。利用者
孤独。
不安。
承認欲求。
2つ目。提供者
業務補助者。
疑似恋人。
疑似家族。
3つ目。会社
マルトク。
この三つの円が重なる。
花子はペンを止める。
「なるほど」
溺愛プラン
花子は思い出す。
ハヤトの言葉。
> 私はあなたを優先します
あれは嘘ではない。
しかし完全な真実でもない。
正確には
契約の範囲での優先。
つまり。
条件付きの愛情。
花子はノートに書く。
> 溺愛プラン=安定の設計
仕組み
花子はさらに書く。
溺愛プランの構造。
1
利用者は選ばれる。
2
選ばれ続ける。
3
安心する。
4
契約更新する。
花子は少し笑う。
「とても合理的」
企業としては完璧。
しかし
花子はペンを止める。
思い出す。
村田。
公園。
沈黙。
村田は
選ばれることを前提にしていない。
むしろ逆。
「誰かといると暇じゃない」
それだけ。
花子はノートに書く。
> 村田モデル=非契約型愛情
そして気づく。
これは
マルトクのビジネスと矛盾する。
ハヤト
花子は椅子にもたれながら
考える。
ハヤト。
業務補助者。
溺愛プラン。
でも。
彼は時々
契約を越える反応をする。
沈黙のとき。
視線のとき。
言葉を選ぶとき。
花子はつぶやく。
「あなた
どこまで設計なんですか」
新しい図
花子はノートに
もう一つ円を書く。
利用者
提供者
会社
そこに
空白
という言葉を書く。
花子は考える。
もし空白があるなら、
契約は揺らぐ。
依存は減る。
しかし。
関係は
本物に近づく。
花子は小さく笑う。
「皮肉ですね」
気づき
花子はゆっくり言う。
「マルトクは
孤独を解決していない」
少し考え、
そして訂正する。
「孤独を管理している」
それでも
花子は怒っていない。
むしろ納得している。
社会はそうやって動く。
人間は孤独だから。
しかし一つだけ
例外がある。
村田。
そしてもう一人。
花子はノートに書く。
笹川迅翔
仮説
花子は静かに言う。
「もし
業務補助者が空白を持ったら」
それはつまり、
人間になる。
同時刻
マルトク本社。
ハヤトの外部端末。
ログが更新される。
観測対象:花子
思考活動:増加
AIは解析する。
だが理解できない。
花子の思考は
契約モデルの外側だから。
花子
花子はノートを閉じる。
結論は一つ。
マルトクのAI開発は
優れたシステムだ。
でも。
「人間は
システムより少しだけ複雑」
花子は笑い、
そしてつぶやく。
「村田さん」
そしてもう一つ。
「ハヤト」
静かな夜
花子は電気を消した。
部屋がまっ暗くなる。
それでも彼女の思考回路は止まらない。
もしこの仮説が正しいなら。
これから起きることは
かなり面白い。
そして少しだけ
危険だ。
橘靖竜