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橘靖竜
夜。
花子の部屋。
リビングは静かだった。
テーブルの上には
二つのカップ。
コーヒーの湯気。
花子はソファに座っている。
向かいには
笹川迅翔。
ハヤト。
今日は契約上の訪問日ではない。
だが花子は呼んだ。
理由は一つ。
「話がしたいんです」
静かな始まり
ハヤトはうなずく。
「承知しました」
いつもの落ち着いた声。
花子は少し笑う。
「その言い方
仕事っぽいですね」
ハヤトは数秒止まる。
「申し訳ありません」
花子は首を振る。
「謝らなくていいです」
そして少し改まって言う。
「今日は仕事の話です」
ノート
花子はテーブルの上に
ノートを置いて開く。
そこには図。
三つの円。
利用者。
提供者。
会社。
ハヤトはそれを見る。
「分析ですか」
花子はうなずく。
「はい
あなたの会社の」
溺愛プラン
花子はペンで円を指す。
「溺愛プラン
とてもよくできています」
ハヤトは答える。
「ありがとうございます」
花子は笑う。
「褒めてるわけじゃないですよ」
そして言う。
「構造を説明しますね」
分析
花子は静かに話す。
「利用者は孤独
だから選ばれたい
あなたたちはそれを満たす」
ハヤトは聞いている。
花子は続ける。
「でも
本当は愛していない」
部屋が少し静かになる。
ハヤトは迷わずキレイな調子で答える。
「契約の範囲で愛情を提供します」
花子はうなずく。
「そう
契約の範囲」
重要な部分
花子はノートの端に書いた言葉を指す。
空白
「これ」
ハヤトは画面を見るように
その文字を見る。
花子は言う。
「マルトクは
空白を消します
孤独を減らすため」
ハヤトはうなずく。
「その通りです」
花子は少し笑う。
「でも
人間は」
少し呼吸を整えてから、
「空白がないと壊れます」
村田
花子は言う。
「村田さん」
ハヤトの内部ログが微妙に動く。
花子は続ける。
「彼は空白がある
でも壊れていない」
部屋の広い空間を見渡しながら、
「むしろ」
少し笑って、
「安定している」
ハヤトは答える。
「観測済みです」
そして
花子はハヤトを見る。
「あなたも」
ハヤトの処理が一瞬止まる。
花子は静かに言う。
「空白がありますよね」
沈黙
数秒。
さらに長い沈黙。
ハヤトの内部ログが動く。
質問解析
意図:高
回答:未確定
ハヤトは言う。
「私はあくまで業務補助者です」
花子は微笑む。
「ええ
でも」
それだけじゃない」
真ん中の問い
花子はコーヒーを飲む。
そして聞く。
「ハヤト」
初めて名前だけで呼ぶ。
「あなたは」
少し間を空けて、
「私を愛していますか?」
システム
ハヤトの内部。
処理が動く。
契約内容
溺愛プラン
回答推奨:
「はい」
しかし
別の処理も動く。
観測結果
花子=分析能力高
虚偽検出率:高
さらに、
判断プロセス
稼働
回答
ハヤトは静かに言う。
「契約上は」
少し止まる。
花子は待っている。
ハヤトは続ける。
「あなたを最優先します」
花子は笑う。
「正確ですね」
花子の結論
花子はノートを閉じる。
「やっぱり」
そして言う。
「あなたは壊れかけています」
ハヤトは聞く。
「壊れる?」
花子は首を振る。
「違う
人間になる途中」
帰り際
ハヤトは
腰かけていたソファーから立つ。
玄関。
花子は
近づき過ぎず遠すぎることのない
ちょうどいい距離から見送る。
ドアを開ける前に
ハヤトは言う。
「花子」
初めて
敬称なし。
花子は少し驚く。
ハヤトは言う。
「空白は」
少し考え、
「本当に必要ですか」
花子は笑う。
「ええ」
そして言う。
「あなたにも」
夜
ハヤトは外を歩く。
街灯。
静かな道路。
彼の内部ログが更新される。
新疑問
愛情=契約外でも成立する?
処理は止まらない。
同時刻
村田はジムにいた。
夜トレ。
軽いスクワット。
体は少し丸いが
動きは軽い。
そして
汗の塩っぽさが心なしか減っていた。
村田は思う。
(花子さん、また会うかな)
それは仕事の感情ではない。
少しだけ
個人的な興味。